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【9/25、2巻発売記念】歴史の舞台に愛と恋 ***ルーチェ

 ひいお祖父様は、三年前に亡くなられた。私が八歳の頃よ。皺だらけの手を覚えているわ。優しく撫でて、いつも穏やかに笑っていた。ロッキングチェアがお気に入りで、馬が見える場所に専用の椅子が置いてあったの。


 今、同じ場所に円卓と椅子がある。パラソルも立っているけれど、ロッキングチェアもあるのよ。誰も座らず、ひいお祖父様専用のまま。今度、座ってもいいか聞いてみよう。


「ルーチェの曽祖父は、軍事大国ロベルディの征服王と呼ばれていたの。とても強くて、大きな人だったわ……身長ではなくて、ね?」


 お母様の言い方にくすっと笑ってしまう。小柄で灰色に近い白髪、穏やかな人だと思っていた。お母様の知るひいお祖父様は違うみたい。そこから語られたのは、お母様が辿った恐ろしい状況だった。ある程度、ぼかしている。それなのに、殺されかけた話で恐ろしさに震えた。


 夢に見て寝られなくなりそう。そうなったら、お母様のベッドに潜り込もうと決めた。


「フェリノス王国が滅びたのは、この事件が発端で……フロレンティーノ領ができた。だから私達が領主なのよ」


 いつも優しい大伯母様も、すごく強烈な人だったんだわ。だとすると、私のがさつな性格はロベルディの血筋なのかも。お母様が物静かな人だから、隔世遺伝? とかいうやつね。ほっとしながら、学んだ歴史と聞いた話を突き合わせていく。


「ここは歴史の舞台だったのね」


「ええ、ロザーリオが騎士だった話はしたかしら?」


「何度も聞いているわ」


 お父様は騎士で、お母様を護衛していた。きっと命がけで守るカッコいい場面があって、一目惚れかも! 劇的な何かがあったんじゃない? どきどきしながら聞いたら、そうでもなかった。ハンカチのエピソードは素敵だけれど、思ったほど情熱的ではないみたい。


「ルーチェにはまだ早いけれど、恋をすると人は変わるの。私もロザーリオも……カリスト兄様も」


 伯父様? なぜここに名前が出たのかしら? 紳士的で優しくて、なぜか奥様がいない。私を可愛いルーチェと呼んで、我が儘をすべて許してくれる人よ。恋とか愛とか、私には違いがわからない。でも伯父様みたいな方と結婚したいわ。


 夢を語るように口にしたら、お母様は驚いたように目を見開いた。すぐに閉じてしまったけれど。大きく深呼吸して首を横に振る。伯父様とは血が近いから、結婚できないのは知っているわ。そう伝えたら、困ったような顔をされた。


 これ以上聞いてはいけないのかも。でもほかに聞ける人……お祖父様なら教えてくださるかしら? 少し離れた辺境で開拓に夢中の、大柄な祖父の姿を思い浮かべた。久しぶりだし、会いに行きたいわ。

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