序章 一期一会
人生とはまさに突然である。
たまたま普段使わない道を歩き、曲がり角でぶつかった女性と恋仲になり結婚することがあれば、朝仕事に出かけた主人が帰らぬ人となったりと人生は予想できない事が起きることがある。
突然降りかかる幸、不幸は前触れなくやってくる。だからこそ人生は刺激的で楽しい。故に代わり映えのない日々を大切にしろ。日常は突然姿形を変えるのだから。
これは亡き母の口癖。
そしてその言葉の意味を今日、痛感させられる。
いつものように薬草採取のクエストを受け、ギルドに報告と報酬を受け取りに来ただけのE級冒険者のユグラシド。
彼は隣に立つ一人の女性のこの一言によって騒動の渦へと巻き込まれることとなる。
「もう我慢の限界。辞めさせてもらいます。」
聖女アリシアの一言に騒がしいギルドハウスは一瞬にして静寂。野次馬達は事の成り行きを見守る。
「や、辞めるとはど、どういう事ですかアリシア嬢。」
アリシアの衝撃的な発言に動揺のあまり言葉を噛む賢者サイ。
「冗談ですよね。私達のチーム<栄光の光>から抜けるなんて・・・そんなこと。」
「本気です。」
普段では見られないアリシアの厳しい口調に一瞬怯むも思い留まるよう説得を試みる。
「なんてことを言いだすのですかアリシア嬢!名誉ある私達のチームを抜けるなどあり得ません。貴女は聖女なのです。」
「だから聖女も辞めさせてもらいます。そして・・・。」
隣で無表情ながらも内心ではかなり驚いているユグラシドの腕を取り、こう宣言した。
「私は彼と―――ユグラシドとパーティを組みます!」
この宣言にギルドハウス内は騒然。パニック状態になる中、アリシアは満面の笑みをユグラシドだけに見せる。
「これでまた一緒に居られるね、ユーグ。」