表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はぁ?とりあえず寝てていい?  作者: 夕凪
第1章 終わりと始まり 
9/370

1-8 帰宅

 外に出ると、バルネリア家の馬車は1台しかなく、先に出たはずの父様達の姿は何処にもなかった。




「あら?何故、お父様達がいないのかしら?まさか、子を置いて行った、なんてことはないわよね?」





 姉様が再起動したようだ。私達全員が思ったであろうことを、代わりに代弁してくれる。





「残念ながら、そのまさかでございます。おかえりなさいませ。リルシーア様、ルーデリオ様、シゼルス様。」





 姉様の声に、馬車の陰から現れたリーナが答える。それを聞いた姉様が憤慨しだし、リーナも含めた他の使用人達に、何故止めなかったのかと詰め寄る。みんな困惑してしまっている。一介の使用人に、公爵家当主を止めることが出来ないことは、姉様もわかっているだろうに。それでも、言わずにはいられなかったのかもしれない。



 言いたいことを言い切ってスッキリしたのか、姉様が落ち着く。





「はあ、ここで何を言っても変わらないわね。もう帰りましょう。」





 姉様が馬車に向かって歩き出したので、私とシゼもついて行く。先程からチラホラと、教会から出て来た貴族達の姿が増えて来ていたので助かった。遠くから、ヒソヒソと話しながら視線を向けられるのは、貴族に転生した今でも慣れることはない。




 シゼを馬車に乗せ、奥側の席の姉様の対面に座らせ、その隣に座る。少しして、リーナが乗り込んで姉様の隣に座り、外側から扉が閉められる。そして馬車が動き出した。


 


 走り出してから、1時間程たっただろうか。その間誰も喋ることがなく、車内は沈黙に包まれた状態だった。ふと気付くと、窓から夕日が差し込んでいた。もうそんな時間なのか。夜までに戻れるのだろうか?





「姉様。もう夕方ですが、今日はどこかの街に泊まるのでしょうか。」

「いいえ、宿はとらないわ。日は落ちてしまうでしょうが、遅くならないうちに戻れるわよ。」

「そうなのですか。わかりました。」





 何かを考え込んでいた姉様だったが、顔を上げ答えてくれる。そこでタイミングが良いと思ったのか、リーナが、教会で何があったのかと聞いてきた。




「・・・・・。」

「黙っていても直ぐに分かると思うけど、ルーちゃん、属性なしだったのよ。」

「えっ!?それは・・・。」




 姉様が、私からは話さないと悟ったのか、姉様が答えた。そして、予想通りのリアクションをしてくれる。あっ、ケモミミがピンと立っている。

 だが何を思ったのか、次の瞬間には先程の姉様の様に、深く考え込んでしまう。



 やっぱり異常なんだね。前世に魔力事態が無い世界で生きていたからか、魔法が使えないだけで、と思ってしまう。

 

 科学技術が発展してない代わりに、魔法文化が発展していて、庶民の生活にも魔法が浸透している。日常生活で使う、様々なことに魔法が使われている為、魔法が使えないのは死活問題とも言えるだろう。

 しかし、貴族は自らの富を示すために、魔道具を利用することが多い。そしてこれらの魔道具は、魔石で動くため、魔力を流さないと使えない。魔力だけは大量にあるので、現状で生活が成り立たなくなる、という訳ではない。



 だが、父様は家族に対していつも優しかった。もしかしたら、馬車の上限である4人が乗って、後は帰るだけだからと、先に出発したのかもしれない。それか、速く帰り、邸宅の使用人達に事情を話し、この件に触れないようお触れを出して、私を気遣っているのかもしれないし・・・。


 


「りゅーにぃ。」




 シゼに呼ばれ振り向くと、とても辛そうな、今にも泣いてしまいそうな顔をしていた。





「どうしたの?そんな顔しないで。可愛い顔が台無しだよ?シゼには笑っててほしいな。シゼの笑顔を見ると、僕まで笑顔になれるんだよ?」





 そっと顔に手を当て、親指で優しく顔を解す。ゆっくりと笑顔が形づくられていく。うん、そうだよ。シゼが悲しむ必要なんてないんだ。




「それにね、もしこれから何かあったとしても、シゼは側にいてくれるでしょ?」

「っ!?あたりまえだよ!!ずっと、りゅーにぃのそばにいるっ!!」




 シゼの頭を撫でながら尋ねると、跳ねるように答え、飛びついて来たので抱きしめる。その温もりが何よりも安心した。座席の背もたれの方に顔を向け、静かに頬を濡らす。その間、シゼは文句1つなく、抱き締めさせてくれたのだった。

















 日が落ちて夜に入り、少しした頃、馬車が到着した。馬車を降り、玄関を抜けると、姉様が母様に会ってくると言うので、分かれる。




 使用人達が、こちらをチラっと見た後目を逸らすので、もう既に知っているのだろう。真っ直ぐに自室へと向かう。

 シゼと共に部屋に入り、ソファに座り込んだところで、ぐぅぅ、と可愛らしい音が隣から聞こえた。そういうば、休憩も挟まずに急いで帰って来たため、夕ご飯を食べていない。今の時間は、普段の夕食時間を過ぎている。食堂に行っても意味はないだろう。

 侍女に2人分の軽食を持って来るように言い、冷めてしまった紅茶を飲み干す。苦い。新しく注がれた紅茶に、角砂糖をトポンッ、トポンッ、トポンッと入れる。あっつい!が、美味い。





 2杯目の残り僅かな紅茶が冷めてしまった頃、頼んでいた軽食が届く。サンドイッチだ。レタスではないレタスに、ハムではないハムとキノコを焼いたパンで挟んで、酸味のある濃い目の味のソースが間にかけられていた。異世界食材なため、名前は違うのだが、見た目も味もほとんど変わらないので、地球の時の名称のままで認識している。覚える気が無いとも言うが。




 食事が終わると、今日の疲れもあり、早々とベッドに横たわるのだった。















~~リルシーア視点~~








「ーーーと、考えておりますの。如何でしょう。」




 私は先程帰って来てから、直ぐにお母様の部屋まで向かいました。そして、馬車の中で考えていたことを伝えたのです。お母様は聞き終わると、私の考えに賛同して下さいました。








「あら、それはいい考えね。私も混ざっていいかしら?」


「はい。もちろんです。」







 その後、お母様から更にいい方法があると聞きました。そのような面白い方法があるとは知りませんでしたので、是非ともその案で通させていただくことにしました。







 顔を見合わせて微笑み合う。これからは、慎重に動かないといけませんね。








「では、これからはルーデリオの味方として、側にいて支えてあげましょう。」


「はい。特に、カイザスが以前から、#ルーデリオ__・__#にいい感情を抱いてなかったようです。今回のことで、#ルーデリオ__・__#に手を出す様になっても、お父様に何か言われることはないと思われます。注意していた方がいいですね。」










 今後の動きが決まり、長期に渡るこの計画の先にある未来を、そこに見える高みを想像して、薄く笑みを浮かべ、扉の外に待機させていたリーナと共に、自室へと戻って行ったのでした。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ