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はぁ?とりあえず寝てていい?  作者: 夕凪
第1章 終わりと始まり 
13/370

1-12 兄弟

「-兄!ルー兄!ルー兄ってば!」

「う、うーん?」




 目を開けるとシゼがいた。は?何で?窓の外を見ると、もう既に日は高く登り切り、心なしか若干傾いているような気もする。だいぶ眠り続けていたようだ。




「ルー兄ってば、僕が帰って来て直ぐここに来たのに寝ているなんて!」

「ごめんって!」




 この1年ほどの間で、シゼははっきりとした発音が出来るようになっていた。したっ足らずなシゼが見れないのは少し悲しいが、シゼが可愛いのは変わらない。





「お帰り、シゼ。どうだった?」

「光属性だったよ。」

「おお!希少属性を持っているなんて流石シゼだね!」

「そんなことないよー。あ、お腹空いているでしょう?お土産買ってきたよ。一緒に食べよう。」





 夜中にシゼの属性は知っていたが、あの部屋でのことは、何も聞いていなかったことにしなければならない。それに、こういうことは自分の口で言いたいだろう。今だって否定してるが、とても嬉しそうだ。

 シゼからお土産を受け取る。サンドイッチに近いだろうか。パンの間にレタス的なものと、何かの肉が挟まっている。食べてみると、鶏肉の香草焼きのような味した。久しぶりの美味しい食べ物に涙が出そうだ。出てこないけど。




「シゼ。シゼに言っておかないといけないことがあるんだ。」

「何?」




 お腹いっぱい食べ終え、いつも通り誰も部屋にいないことを確認して、シゼに声をかける。

 私の真剣な雰囲気に、シゼも居座りをただす。”聞いたこと”は言ってはいけないけど、私が”言ったこと”であれば何も言われてないし、いいよね。





「実はね。父様に、シゼの頭脳の高さについて言ってしまったんだ。だから近いうちに、呼び出される可能性がある。約束したのに。本当にごめん!」

「そっか。わかった。」

「何で責めないの?シゼ、誰にも知られたくないって言ってたじゃん。」

「だってルー兄のことだよ?ルー兄が理由もなしに、そんなことするわけないでしょう?僕の為だってことぐらい分かるよ。」





 責められると思っていた。だから嫌われたとしても、正直に言っておこうと思ったのに。本当に、シゼは優しい。








 その数時間後、シゼは父様に呼び出された。夜話を聞くと、どうやら知能テストを行っていたらしい。内容は、王立学園の高等部の入試問題だったようだ。手を抜くことなく全て答え、全問正解だったようだ。全問正解なのは当たり前だろう。現代地球の知識を理解出来ているシゼが、それよりレベルの低い、高等部の問題さえ解けるのだ。入試問題ぐらい余裕だ。

 ただ、この結果に父様がとても気分を良くし、王家の教師に授業を依頼したようだ。その教師がエルフで、父様の補佐官と旧知の間柄のようで、その繋がりで、王族と一緒に授業を受けることが決まったようだった。





 王城での授業決定から1週間後、シゼは毎日王城に行くことになった。授業を受けるためと、契約者としての役目のためだ。シゼは父様と一緒に登城することになり、会えるのは1日に朝と夜だけになっていた。














 シゼと会う時間が少なくなってからは、いかに省エネに生きていくかを極めていた。と、言えば聞こえはいいかもしれないが、実際はひたすら寝ていただけだったりする。

 もし、昼頃に起きて、母様がお茶会などで出かけていなければ、母様のところに行くようになった。そこでは、一緒にお茶をしながらおいしい軽食を食べられた。

 学園が休みで、お茶会に呼ばれたりしていなければ、姉様のところに行っていた。そのころには、姉様の妹願望はなくなっており、心安らかに姉様との時間を楽しめていた。そして気付けば、毎日2人のどちらかのところで過ごすようになっていた。














 学園が休みのある日。いつものように母様と姉様とお茶を飲んで、会話を楽しんでいた。そこに、コンコンという音が来客の存在を告げる。母様が許可を出すと、扉が開いたそこにいたのは、ロベルト兄様とカイザス兄様だった。




「お茶を楽しんでいるところ失礼します。ルーデリオに用があり来ました。」

「あら、カイザス。ルーちゃんに何の用かしら?」

「お姉様には関係のないことです。」




 カイザス兄様と姉様が睨み合う。この2人が私に用だなんてどうしたんだ。今までそんなこと一切なかったのに。特に、ロベルト兄様は興味ないと言っていたのに、今更なんだというんだ。




「リルシーア、カイザス、2人ともやめなさい。カイザス、急にそんなことを言われたら驚くわ。理由を聞いてもいいかしら?」

「僕ら兄弟はもう少し、お互いに歩み寄る必要があると思ったんです。ですからまず、男同士で話し合いの場を設けたいと思いました。」





 母様の一声で、2人が睨み合いを終える。そして、カイザス兄様の言葉はとても驚くものだった。急に仲良くしたいと言ってきたのだ。どんな心境の変化だろう。




「なるほど。そういうことなのね。ならいいんじゃないかしら。」

「お母様!何を仰ってらっしゃるのですか!」




 母様の言葉に姉様が反応する。そんな姉様を宥めながら母様は、今のうちに行きなさい、とばかりに男兄弟達の方を見る。その視線の意を汲み取った兄様たちが、私を連れて部屋の外に連れていく。というか1つ言いたい。





 私の意志は?

















 兄様たちに連れてこられたのは、何故か邸宅の側の森だった。因みにこの森、英雄の森と呼ばれている。別に、英雄に関する伝説があるわけでもない。ただ英雄が、幼少期をここでよく遊んでいたと言われているだけだ。この森の名前を付けた人は、きっと重度の英雄ファンだったのだろう。

 それで、この森で何の用だろうか。まさか僕たちも、英雄にあやかって遊ぼうとしているわけじゃないよね?というかこの世界での遊びって何があるんだ?玩具の類ならあるけど、他の遊びは知らないぞ。貴族だから、か?





「あのー。ここで何をするんですか?」

「狩だ。」





 誰にとも無く聞いてみると、今まで黙っていたロベルト兄様が答える。しかも、やる事は狩らしい。





「何を狩るのですか?」

「決めてない。」

「えっ?」






 狩をやるが、狩るものを決めてないとは、だいぶ勢いで決めたのではないだろうか?ロベルト兄様は、それ以上は答える気はなさそうたったので、カイザス兄様に目を向ける。すると、いるやつを狩ればいいだろうとのことだった。やっぱりテキトーである。





 喋ることもなく、森の中を歩き続ける。なんだかんだで、この森に入るのは始めてだ。魔物はほとんどいないが、多少野生動物の気配がするので、狩るとしたら小動物辺りだろう。だけど、私はどうやって狩に参加すればいいんだ?

 

 私は現状手ぶらだった。お茶を楽しんでいるところ、直接森に連れてこられた。狩に使う道具は渡されていない。兄様達も手ぶらだが、魔法があるのでいいのだろう。石でも使って狩ればいいのか?当たるだろうか?当たらないだろうな。





 そうやって暫く歩き続けるも、一向に狩れそうな相手が見つからない。そもそも森の中だから、火魔法は使えなかった。準備不足過ぎる。そんな時、ふと顔に冷たい何かが当たった。何だろうと上を見上げると、少しずつだけど、どんどん強烈な雨が降ってきた。




 私達はすぐに家に戻ろうと駆け出した。だが、歩き慣れない森の中で、雨に濡れて泥濘んだ地面は、走り辛い。私は場所なんて分からないので、兄様達に付いていくのに必死だった。

 そんな時に、足元が剥き出しの木の根に引っかかり、転けそうになった。反対の足で何とかふん張ろうと踏みしめた地面は、何故か"変形した"ような気がした。そのまま滑り転げる勢いを、止めようとするが止まらない。

 すると、急にフワッとした浮遊感に襲われる。回転する景色から見えたのは、崖から飛び出していた自分と、僅かに口角が上がった様に見えるカイザス兄様だった。













そして重力に従い、多くの魔物が跋扈する英雄の森、その内心部へと落ちていった。






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― 新着の感想 ―
[一言] 自分で道を切り開こうと言う気持ちが、これ程ない人も珍しいね。気概を全く感じないね。誰かに縋り付く術だけ磨いているようですね。
[気になる点] 冷遇されてるけど、前世の記憶あるんやし本読んで学ぶなりして状況を少しでも自分で改善しない主人公にイライラする。 なんか自分の事やのに母親 姉 弟頼りで・・・それかと思えば傷ついてます~…
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