PCが治った
第1話で出てきたパソコンの修理回です。
うっは、たのしー。
俺は再インストールを終わらせた後のパソコンに、更新プログラムを適用しているときが一番「生きてる」って実感するんだ。
一回「更新」が終わったら「更新の更新」がかかる。例えるのであれば、時代遅れになってしまった「ロートル」が「現役」に近づいていく。最高の気分だ。
「先輩、いつもに増して顔がキモいっす」
麻婆豆腐を作りながら無礼なことをいう鏡花にチョップをかけようと思ったがやめた。流石に料理中は危ない。
ちなみに今日の夕飯は鏡花いわく、「中国3000年だか4000年だかの歴史と、食品メーカーの努力の結晶っす」という「麻婆豆腐のもと」を使った麻婆丼を作ってくれるらしい。「よほどのことがない限り失敗することがないっす。家庭料理のレベルなら素に頼るのはありだと思うっす」というのは鏡花の弁。
俺はジャンク品いじってると食事をすっぽかしてしまうことがよくある。鏡花によると「先輩が大学に3日来なかったから心配して家に行ったら、恍惚の笑みを浮かべたまま分解されたノートパソコンを抱いて寝てて流石に引いた」って言ってた。いつもの「っす」口調が取れるくらいにドン引きしたらしい。
……そのくらい普通のことだろ?
「ほら、先輩今手離せるっすか?出来あがったんで早く食べちゃってくださいっす」
5回目の再起動をかけ終わって、新しい更新プログラムがないことを確認してシャットダウン。食事が終わったらバッテリーのチェックをしよう。多分バッテリーはへたってるんだろうなぁ……。
必要経費とはいえ、出費が……。
とりあえず鏡花は風呂に入れさせておいて、俺はパソコンのバッテリー劣化具合をチェックしようか。
今回はツールとかを使わない超簡単な方法でチェックを行う。
何のことはない。フル充電状態からACプラグを引っこ抜いてバッテリー駆動に切り替えるだけだ。雑かもしれないが、簡易チェックならこれで十分。
「残時間6時間か。……6時間!?」
この機種はアンリミブックの初期型なので、スペック表的には6.5時間のバッテリー動作が可能となっている。
ま、まぁ、もしかすると最初だけかもしれないし、5分くらい放置してみよう。
「……残時間5時間50分」
全然へたってねぇ!!!!!!!!!!
「……修理完了ってことで良いのか?」
液晶のドット抜けとか、タッチパットの感度とかも正常。もはや、HDDが抜かれていたこと以外にジャンクであった理由がわからない。というより、中古屋的にはHDDが抜かれているから正常に起動してこない。そのためジャンクと認定したんだろう。
中古屋さんも短い時間で判断しないといけないから、こういう判断をするのは仕方ないけどもったいない。まだまだ使えるものは世の中にたくさんあるんだ。
ちなみにノートパソコンは家電リサイクル法の対象品なので、燃えないゴミに出すわけにはいかない。大手の電気屋に回収を依頼するか、郵便局を通じて専門業者に引き取ってもらうかって形になる。
もちろん手数料はそれなりにかかってくる。「ゴミを出すだけでも面倒なのに、金までかかる」という考えになれば、中古屋に売ってしまうのは理解できる。スズメの涙ほどのお金は貰えるし。
「せんぱい、お風呂ありがとうございましたっす」
鏡花が風呂からあがって、長い髪の毛を丁寧にふいている。結構色っぽい。アホの子なのに。
「あ、そういえばせんぱい明後日って暇ですか?同じゼミの娘がちょっとプリンター見てほしいって言ってたっす」
そういう大事なことは早く言え。電気屋ももうすぐ閉まる時間だ。プリンター修理のほとんどはインク詰まり。つまり、直すためにインクが必要になってくる。買えない。
「ちなみに機種は何だって言ってた?」
最低限メーカーと機種名がないと直し方も調べられないから、鏡花には常にそれを確認するように言ってある。
「EVASONのRX-1700Fだって言ってたっす」
……業務用じゃねえか!!!!
いやー、今回のは非常に楽な修理でした。
ちなみに今わたくしの自家用車に積んであります。