99 閑話 アミナの村の村人達
○ 96 性奴隷アミナの末路の村人サイドの話です。
村の集会所は、悲しみに沈んでいた。
「オヤジ……どうしても行くのか?」
壮年の村長が、年老いた前村長である父親に聞いた。
前村長は、村の老人全員を連れて来ていた。
全員、前村長と同じ、悟りきった顔をしていた。
「ああ……わしら老人が居なくなったら、少しは、税金が減り、食い扶持も減る……アミナのような奴隷商人に売られる子を、少しでも減らせるだろう……」
領主であるローンベルト子爵が、奴隷を使い潰して捨てることなど、有名な話だった。……いや、子爵だけではない……貴族が奴隷になにをするのか……そんなこと、百も分かりきった常識だったのだ。
朝日のように明るく素直な可愛いみんなの孫であるアミナが、周知である大好きなエリックと結ばれることもなく、ブタの……ローンベルト子爵の性奴隷にされるのである。
怒りに腸が捻れ、切れそうだった。
たとえ、アミナを奴隷商人に売っても、すぐに使い潰し、次にアミナの妹達が餌食になる。しかも、それはアミナの妹達だけの問題ではない。村人全員が、早かれ遅かれ、奴隷商人に売られるだろう……。
そんな事態を、出来るだけ避けるため、前村長は、村の老人全員を連れて、村を出る覚悟を決めた。
行く当てなどない。村の外は、復活した魔王の影響で、魔物が活性化し、安全な場所などどこにもない。
それでも、老人達は、村のために、死ぬ覚悟で、村を出ると言うのだ。
村長は……そして、集会所に居た全ての村人が、悔しくて泣いた。
全員、大切な家族である。
自分たちを愛で包んで育ててくれた、大きな恩がある大好きな親達である。
すすり泣く声が聞こえる中……前村長と、老人達は立ち上がった。
そして、村を去ろうと、集会所を出ようとした時、アミナの父親が駆け込んで来た。そして、大声で言った。
「ラプアシアのアゼル男爵が来ている。開拓民として移住に誘って下さった! みんな、ラプアシアに行こう!」
集会所に居る村人全員が渋った。
「だって、アゼル男爵も貴族だろう?」
この国の貴族の腐敗など、周知の事実だった。
「……殴った」
アミナの父親であるコリンが、小さな声で言った。そして、顔を上げ、大声で言った。
「アゼル男爵が、アミナを守って、ローンベルト子爵を殴った!」
集会所が、静まり返った。
やがて、そこに居る全員の気持ちが高ぶり、絶叫が響いた。
「「「やったー!」」」
「すげぇ……アゼル男爵、イカすじゃねぇか!」
「素敵! 痺れる!」
「あのブタを、わしの代わりに殴って下さったのか……ありがたやありがたや……」
村人は、肩を抱き合って、口々にアゼル男爵を、褒め称えた。
「でもよ? ローンベルトとラプアシアが戦争にならないか?」
「じゃあ、なおさら、ラプアシアに行こうぜ!」
「そうじゃ! あわよくば、戦争のどさくさに紛れて、わしらの手で、あのブタ野郎を殺ることが出来るやもしれん」
「「「最高だ! アゼル男爵バンザーイ!」」」
こうして、アミナの村のみんなは、全員で、ラプアシアに行くことを決めたのだった。




