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96 閑話 性奴隷アミナの末路

 アミナ13歳。


 アミナは村で一番の美少女と呼ばれている、女の子だった。


「すまない……アミナ……」


「アミナ、許しておくれ」


「「「お姉ちゃん、行かないで!」」」


 お父さんとお母さんが、泣いてアミナに謝る。妹達は、泣いてアミナにすがった。


 アミナは、増えすぎた税金を払うことが出来ず重ねた借金の形に、奴隷として売られることになった。


 酷薄な奴隷商人の後ろで、でっぷりと太った領主がニヤニヤと(いや)らしく笑っている。


「アミナは、俺が冒険者になって、必ず買い戻す!」


 仲の良かった幼なじみのエリックが誓う。


 少年の決意を、領主は鼻で笑った。


「この女は、ワシの性奴隷になる。お前は、ワシによって汚されるこの女を、買い戻すというのか?」


「それでも、構わない! それでも、俺はアミナが好きだ!」


 少年の更なる決意を、領主は大笑いした。


 そして、アミナを連れ去った。



 アミナは、奴隷商人の店に連れて来られ、まず、不妊の呪具を子宮に埋め込まれた。


 こうしてアミナは、一生、子供の産めない体になった。


 そして、城の後宮に連れられ、辛い性奴隷としての生活が始まった。


 まるで、暴行のような性交渉を連日求められ、身も心もボロボロになっていった。


 唯一の希望があるとすれば、幼なじみのエリックだった。


 アミナは、それを希望に、歯を食い縛って生きた。


 だが、ある日のこと……。


 アミナ14歳。


「……えっ!? なんて言われました……?」


 こらえきれないように愉快に笑う、主人である領主から、信じられないことを聞いて、思わず聞き返していた。


「お前のエリックは、冒険に失敗して死んだそうだぞ」


 悲しみの涙が溢れた。涙が止まらなかった。


「泣くな、鬱陶しい!」


 領主は、いつまでも泣き止まないアミナを、動かなくなるまで殴った。


 失意の中……それでもアミナは、生きていた。


 辛い性奴隷の生活を続けていた。


 そして、ある日のこと……。


 アミナ15歳。


「……えっ!? なんて言われました……?」


 尊大に笑う、主人である領主から、信じられないことを聞いて、思わず聞き返していた。


「お前の故郷の村が、オークの群れに襲われて全滅したそうだぞ。良かったな、お前はワシの性奴隷になったから、生き残れたんだ、ワシに感謝するのだぞ」


 良かった……って、なにが……?


 死んだのよ?


 お父さんも、お母さんも……妹達も、村のみんなも、死んだのよ?!


 それの、どこが良かったなの!?


 アミナは、失意に崩れ落ち、悔しさと悲しさで、泣き崩れた。


「泣くな、鬱陶しい!」


 領主は、いつまでも泣き止まないアミナを、動かなくなるまで殴った。


 度重なる暴行に、村一番美しかったアミナは、傷とアザで、まるで化け物のように醜くなった。


 そして、とうとう、ある日……。


 アミナ16歳。


「喜べ、アミナ。お前を奴隷から解放してやろう」


 さすがにやり過ぎたと思ったのか、優しげに領主が言った。


 アミナに反応はない。


 もう、心が壊れていたのだ。


 それに領主は、優しさからアミナを解放したのではない。


 ただ、養う義務を放棄して、犬猫のように捨てたのだ。


 着の身着のままで、城を追い出されるアミナ。


 着ている服も、貧民が着るような粗末な服だ。


 持っているものは、なにもない。


 そう、無一文である。


 頼れる者もなく、パンを買う金もない。当然、宿に泊まることも出来ず、薄汚いアミナは、やがて貧民街に追いやられ、路地裏にうずくまった。


 働こうにも、傷ついた体では満足に働けず、醜い容姿は、子供達にすら罵声を浴びせられた。


 残飯を乞うて歩き、食糧難で、それすら叶わず野垂れ死ぬ寸前だった。


 死を意識した時、アミナは望んだ。


 生まれ育った村で死にたいと……。


 アミナは、城塞都市を出て、村に向けて歩いた。


 食料も水も持たずに。


 村までは、幾日もかかる。


 途中で、野垂れ死にするだろう。


 でも、アミナは、それでも良かった。


 少しでも、村の近くで死にたかった。


 だが、運命は、非情だった。


 オークの群れが、アミナに襲いかかったのだ。


 アミナは、力の限り逃げた。


 オークは、人間の女性を犯して生殖する。


 それだけは、絶対にイヤだった。


 これ以上、体が(けが)れたら、あの世でエリックに、嫌われる。エリックに拒絶される。


 それが死ぬよりイヤだったのだ。


 女の子には、命よりも大切なものがある。生きている間だけの、この世だけで収まらない、大切なものがあるのだ。


 後生……。


 しかし、必死の努力も空しく、アミナはオークに捕まり、地面に引き倒される。


 股間を隆起させたオークが、のしかかって来る。


「イヤっ、イヤー! エリックー!」


 アミナは、今は亡き愛しい恋人の名を呼んで、必死でオークを拒絶した。


 しかし、それは空しい拒絶だった。


 無情にも、オークが迫る。その時!


 一陣の風が巻き起こって、オークの首が千切れて飛んだ。


 鋭く輝くダガーを持った斥候風の冒険者の少女が、風となって駆け抜ける。


 少女が駆け抜けた後に、次々とオークの首が千切れて飛んだ。


 助けに来たのは少女だけではない。


 精悍な顔つきの剣士風の冒険者が次々とオークを、剣で真っ二つにしていく。


 屈強なドワーフの戦士が、斧でオークを叩き潰す。


 魔法使いの女性が、炎の渦でオークの群れを蹂躙する。


 アミナは、寸でのところで助かった。


 アミナは、助けてくれた冒険者達に礼を言うと、逆にリーダーである剣士ジーンに聞かれた。


「アンタ……今、エリックって言ってなかったか?」


 アミナを助け起こしていた斥候のリラも聞いた。


「エリックの知り合い?……ひょっとしてアミナ?」


 アミナは、目を見張った。ジーン達は、エリックの知り合いだったのだ。


 アミナは、事情を話して、村に行って死にたいと望んだ。


 ジーン達は、悲しみの色に顔を深く沈めて、優しくアミナに言った。


「俺達と一緒にラプアシアに行かないか? 連れてってやるよ」


「そうよ! 一緒に行こう!」


「エリックには、ずいぶん助けられたからのう」


「エリックの代わりに、私達の恩返しを受け取ってよ」


 アミナは……嬉しさに泣いた。


 エリックは、死んでも私を守ってくれたのだ。


 アミナは、ラプアシアに行くことを承諾した。



 ラプアシアの領都アゼリアに到着し、体格のいい文官にお目通りが叶った。


 ちょっと事情を話すと、今度はラプアシアの領主アゼルさまと、聖女さま……執政官に、神と見間違うほどの美しい魔法使いがやってきた。


 みんなは、真剣にアミナの話を聞いて、固い決意の見える表情で頷く。


「こちらに来て下さい」


 聖女さまがそう言って、荘厳な教会の最奥の祭壇……さらに奥の神秘の部屋にアミナは通された。


 そこは光輝く魔方陣が描かれた、宇宙の胎内のような部屋……。


 アミナは、魔方陣の中央に立たされ、それをアゼルさまと聖女さま……執政官、魔法使いが囲んだ。


 荘厳な讃美歌のような呪文が朗々と奏でられる。


 アミナを中心に、幾重にも光の渦が巻き起こる。


 魔力、神聖力、精霊力が、限界まで高まった時、唱和した。


「「「取り戻せ、時の精霊よ!」」」


 ……無が訪れた。


 そこに居たハズの、性奴隷だった(・・・・・・)アミナは、その存在ごと無になり、ユーフォリアから消え去った。



 アミナ13歳。


 アミナは村で一番の美少女と呼ばれている、女の子だった。


「すまない……アミナ……」


「アミナ、許しておくれ」


「「「お姉ちゃん、行かないで!」」」


 お父さんとお母さんが、泣いてアミナに謝る。妹達は、泣いてアミナにすがった。


 アミナは、増えすぎた税金を払うことが出来ず重ねた借金の形に、奴隷として売られることになった。


 酷薄な奴隷商人の後ろで、でっぷりと太った領主がニヤニヤと厭らしく笑っている。


「アミナは、俺が冒険者になって、必ず買い戻す!」


 仲の良かった幼なじみのエリックが誓う。


 少年の決意を、領主は鼻で笑った。


「この女は、ワシの性奴隷になる。お前は、ワシによって汚されるこの女を、買い戻すというのか?」


「それでも、構わない! それでも、俺はアミナが好きだ!」


 少年の更なる決意を、領主は大笑いした。


 そして、アミナを連れ去ろうとして、何者かの手によって、止められた。


「……! これはこれは、アゼル男爵。このような場所で、いかがなされた?」


 豚領主ローンベルト子爵の顔がひきつる。


 子爵の腕を掴むアゼル男爵の目に、隠しきれない憤怒を感じたのだ。


 薄く笑っているところが、なお怖い。


 アゼル男爵は、第2婦人クレアを随伴していた。


 クレアが、如才なく子爵の腕からアミナを奪い取り、その背に隠す。


「いえね? 我が領地の民が、奴隷にされると聞きまして……」


 子爵の顔が、一気に真っ青を通り越して真っ白になる。


 クレアが、アミナの胸に手をかざし、魔力を流した。


 すると、アミナの胸に、ラプアシア領民の証である竜の紋章が浮かび上がった。


 子爵は、地面に全身を投げ出して、アゼル男爵に平伏した。


「こっ……これはなにかの間違いですっ! どうか……ご寛恕(かんじょ)くださいぃ」


 アゼルは、憤怒の表情と声で、とんでもないことを言った。


「おいブタ。謝罪も賠償もいらん。一発殴らせろ……」


 悲鳴を上げて嫌がる子爵を無理矢理立たせて、アゼルは、子爵の顔に、強烈なパンチを叩き込んだ。


 子爵が吹き飛んで、何度も地面をバウンドして、壁にぶつかって気絶する。


 アゼルは、ようやく怒りを静めて、クレアに振り返って謝罪した。


「すまん……大人として……貴族として、領主として、やってはいけないことをした……」


 クレアは、晴れやかに微笑んで言った。


「アゼル様は、お優しいですね」


 アゼルとクレアが、アミナに振り返って言った。


「開拓民としてだが……ラプアシアに来るか?」


 アミナは、まるで過去に充分話し合って合意していた約束であるかのように、真っ直ぐ首肯した。


「俺も行く! アミナは、俺が守るんだ!」


 エリックが宣言した。


「あのぉ……私達もいいでしょうか?」


 控えめに、アミナの両親がアゼルに言った。


 みんな、開拓民の苦しみなど、この領地で生きることに比べれば天国だと思っていた。


 もう、家族の誰も、奴隷にしたくない!


 アミナの両親は、村中に伝言に走り、結局、村人全員がラプアシアに行くことを決めた。

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