92 閑話 シスターズ&ブラザーズ
○ 91 元スラムの住人アンナの後日談。
アンナ達が成長し、炊き出しを手伝うようになった頃……。
「熱いから、気をつけて食べるのよ?」
アンナは、スラムの子供に、ラプアスのお粥を手渡す。
「お姉ちゃん、ありがとー!」
やっと、返事をしてくれるようになった。
アンナの口元が綻ぶ。
「良かったじゃない、アンナ」
そう、世話好きのマリーお姉さんが言う。
「良かったわね、アンナ」
ご近所のセリーナも言ってくれる。
アンナは、はにかんだ。
そこに、粗野な声が響いた。
「おうおう、景気がいいじゃないか」
見ると、数十人の武器を持った男達が、こっちに向かってくる。
「ここら辺を根城にしている盗賊だ……」
スラムの住人が説明してくれた。
「……なんの用ですか?」
エリスお姉さんの名代であるマリーお姉さんが、警戒して言う。
「乱暴されたくなかったら、食糧を全て差し出せ、お前ら女共は俺達の性奴隷だ」
ピキッ!
マリーお姉さんの額に青筋が出来た。
マリーお姉さんが、黄金のメイスを手に持って、問答無用で盗賊の頭に殴りかかる。
マリーお姉さんは、ウィルお兄ちゃんに操を立てているから、この手の話に過敏である。
もちろん、アンナも。アラン以外の男の子は、論外だ。
アンナもセリーナと一緒に、黄金のメイスを持って、盗賊達に殴りかかった。
マリーお姉さんも、アンナもセリーナも、エリスお姉さんの特訓で、棍術を極めている。もちろん、神聖魔法も。
瞬間的に相手との距離をゼロに出来る『瞬間移動』……瞬動もマスターしており、たった3人で、盗賊達を一方的に蹂躙した。
すでにアンナ達は、達人の域に達しているのである。
死屍累々と転がる盗賊達を見て、付き添いに来ていたアランが呟いた。
「エリスお姉さんの姉妹達……『シスターズ』に歯向かうなんてバカな奴らだ……」
心底呆れた声だった。
アランは、同じく付き添いで来ていた、スラム出身の男の子達のヴィクターとロミオを連れて、盗賊達を縛り上げ、兵士の詰所に連行して行った。
炊き出しの直接の仕事ではないが、様々な政治的商売的な手続きを一手に引き受けてくれるから、アラン達は、炊き出しのスタッフ達に、深く感謝されていた。
○
兵士の詰所で、盗賊を引き渡したアラン達は、報酬を直接領主に受け取りに行くように言われた。
アラン達は、訝しんだが、素直に領主の城に出頭した。
通された城の中庭で、アラン達は、城の兵士達に囲まれた。
抜き身の剣や槍を構えた、完全武装の兵士達に……。
「どういうことですか?」
アランが、正面に立つ領主に問いただす。
「なに、炊き出しの食糧を全て差し出せという話だ、簡単な話だろう?」
厭らしくニヤニヤしながら領主が言う。
アラン達は「やれやれ」と肩を竦めてため息をついた。
そして、呟く。
「精霊さん?」
アラン達の呼び掛けに応じて、地面が盛り上がり、完全武装した土の精霊が無数、現れる。
それだけではない。
炎を身に纏ったトカゲも、水の乙女も、風の乙女も、兵士達の数百倍も数千倍も現れて、兵士達を包囲した。
アラン達は、アベルお父さんに交渉や折衝や商売……それに加えて精霊魔法の手解きを受けた、アベルお父さんの息子達……『ブラザーズ』と呼ばれていた。
領主と兵士達は、震え上がって、武器を捨てて全面降伏した。
アラン達は、ニッコリと笑って言った。
「それで、賠償の話ですが、これくらいでいかがですか?」
アラン達は、領主から、たんまりと、金を搾り取ったのだった。
○
「「「カンパーイ!」」」
炊き出しを終えて帰ってきて、ラプアシアの領地の都アゼリアの酒場を貸しきって、シスターズとブラザーズが乾杯をする。
望外の臨時収入に、シスターズとブラザーズは、満面の笑顔で、大いに祝杯を掲げるのだった。




