71 閑話 奴隷になったバーグ、後日談
すみませんっ、短いです。
「庭に畑を作りたいって?」
バーグは、歳上の妻であるマリアの相談を復唱した。
「いいえ、庭に畑をではなく、庭を畑にしたいのです」
バーグは、戸惑った。
マリアは四女とはいえ、イクサ伯爵家のご令嬢である。そのご令嬢の発言とは思えなかったのだ。
バーグは、行儀見習いを終えて、文官見習いとして、バースリーの元で修行している。
その時に、文官の邸宅を、家の管理をする召使いごと与えられ、そこでマリアと一緒に住んでいた。
「どうしてそんな……」
なおも疑問を言い募るバーグ……幼い夫に、マリアは決然と言い放った。
「芋を育てるのです!」
「……芋?」
若干、引き気味のバーグに、マリアは続ける。
「イクサ伯爵領の城の庭は、全て、芋畑でしたわよ?」
なおも引くバーグを置き去りにして、マリアは力説する。
「芋こそがイクサ伯爵家の幸せ! 領民を従える信頼の証! イクサ伯爵家の家族は、みんな、芋が大好きです!」
バーグは、無言で、蒸籠でジャガイモを蒸して、切り込みを入れて、バターを乗せて、マリアに差し出した。
マリアは、驚愕の表情を浮かべて言った。
「バターが、惜しげもなく乗っている……今日は、お祭りですか!?」
「いや……なんでもない日だけど?」
「……えっ? 普通の日ですか? じゃあ、これは1個を4人で分けるのですね? ……えっ? 1人に1個ですか?! そんな贅沢をしては、領民に顔向け出来ません!」
聞くと、贅沢をするのは、貴族の見栄を張る時だけで、普段は、清貧を極めていたらしい。
その身に染み付いた苦労性は、バーグの憐憫の涙を誘った。
マリアは、結局、1個丸ごと食べることが出来ず、バーグと半分こして食べた。
マリアは「あーんして下さい」と言えず、涙目で、バーグを見ていた。
バーグは「……ひょっとして」と思い、試しに、じゃがバターをフォークに刺して、差し出した。
マリアは、涙目をして、喜んで「あーん」した。




