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64 閑話 アベルの不実

○ 56 ピクニックの直後の話です。アベル視点。


 夫婦の幸せな夜が明けた朝……キサラとクレアが、顔を突き合わせて、二人で、こそこそと話をしていた。


 ちょうど場所的に、それがボクに聞こえた。


「アリス、イリス、エミリーは、アゼル様に、これで、何回、抱かれたことになりますか?」


「1034回よ……思ったよりペースが遅いわ……」


「もっと、積極的にさせませんと……ですね?」


「そうよ……もっと発破をかけましょう」


 抱かれた回数を数えていたのか……ん?


 どうして自分達でなく、アリス達の回数なんだ?


 ……人のこと言えないか。


 1034じゃなく、1072だよ。


 そう、ボクもアリス達を抱いた回数を数えていた。その理由は、セインに対する嫉妬だ。


 アリスとイリスとエミリーは、ボクのものだ。


 完全な独占欲だが、それがボクには強くある。


 だから、セインがアリス達を抱いた回数の何倍も、アリス達を抱きたかったのだ。


 ……嫉妬。


 そう、嫉妬である。ボクは嫉妬に狂っている。


 カレラ、オードリー、ウェンディの為に、本当は、ボクは、アリス達を抱いてはいけない。


 子供が出来ちゃったら、きっと、ボクは、カレラ、オードリー、ウェンディを、放っておいて、自分の子供ばかりになる。


 そんな不実は、自分で自分が許せなくなる。


 カレラ、オードリー、ウェンディを大切にすることは、カレラ達の、生まれてきた命に対する礼儀だ。


 キサラとクレアに勧められた、信頼度の高い避妊の魔法道具を使っているが、100%完全な避妊なんか存在する訳がない。


 ボクに、本気で、カレラ、オードリー、ウェンディを大切に想う気持ちがあるなら、アリス達を抱いていないハズだ。


 それをボクは、嫉妬に狂って、避妊の魔法道具が壊れそうな程、アリス達を抱いている……。


 カレラ、オードリー、ウェンディに、申し訳ない。


 ……その内、アリス達に、ボクの赤ちゃんが出来るだろう。


 本当は……アリス達に、ボクの赤ちゃんを産んで欲しい……。


 これが、ボク(アベル)の不実……不誠実だ。


 ボクなんて、ろくなもんじゃない。


 でも、嫉妬で狂って、どうしようもないんだ。


 ボクは、ろくでなしの、どうしようもない奴なんだ。



 その日……ふと、カレラ、オードリー、ウェンディに訊いた。


「カレラ……オードリー……ウェンディ……パパは、お前達を、大切にしているか……? 辛く(みじ)めな思いをさせていないか……?」


 カレラ、オードリー、ウェンディは、どうしてそんなことを訊くんだろうと、不思議そうな顔をして、子供の正直さで、答えた。


「「「パパは、あたし達を、とっても大切にしてくれているよ。辛くて惨めな思いなんて、生まれてから一度だって、したことがないよ!」」」


 そう言って、屈託なく笑った。


「……ビーナやタニアと比べて、大切にされていない……とか、感じたことはないか……?」


 カレラ、オードリー、ウェンディは、顔を見合せ、大笑いした。


「「「どうしたの、パパ? 赤ちゃんが大切なのは当たり前じゃない! でも、パパって、ビーナとタニアをかまった後は、必ず、あたし達に、戻って来てくれるじゃん! かまってもらえなくてさみしいなんて、感じたことなんかないよ!」」」


 そう言って、一斉に、ボクに抱きついて声を合わせた。


「「「パパ、大好き!」」」


 ボクは、泣き出した。


 嬉しかった。ボクの不実が、許された気がした。


 カレラ、オードリー、ウェンディは、驚いて……頭ヨシヨシして、(なぐさ)めてくれた。


 これからも……子供達に、分け隔てなく、愛情を注いでいこう。


 それが、ボクの不実に対する(あがな)い……贖罪(しょくざい)だ。


 具体的には、何事も平等に……だな!


○ キサラとクレアサイド。


「この……アベルが使ってる避妊の魔法道具……アベルにバレるといけないから、アリス達にも黙ってるけど、実は、これ、2500回に1回、必ず、誤作動を起こすのよね」


「誤作動を起こすと……100%、赤ちゃんが出来ます……100%確実に避妊できる道具なんてないんです。ヤれば出来るのです。これ、常識です」


「それに、アリス達に、アベルの赤ちゃんが出来たって、アベルが問題にしてる「カレラ達を愛せないから」なんて、絶対に、そんなことするわけないでしょう? だって、アベルよ?」


「実際、私達にビーナとタニアが出来たって、分け隔てなく、平等に、惜しみなく愛を注いでいます。実績があります」


「頑張ってね……アリス、イリス、エミリー。アベルの赤ちゃんを産まないなんて、絶対、我慢出来るわけがないんだから。……バレるといけないから、言わないけど……」

 アゼルが、悪いことをして、子供達に、許してもらったという話。

 アゼルは、天使ほど善くないが、悪魔ほど悪くない。つまり、アゼルは、人間である。

 誠実な人が一番好きだけど、作者は、誠実でありたいと願いながら、誠実になれず、まるで、悪事の罪を償うようにして生きている人間のことが、たまらなく、(いと)おしい。

 いい人よりも、いい男や、いい女が好きなんですよね。

 キサラとクレアの悪巧みは……自分達だけが、アゼルの子供を産んで、なにか後ろめたい、申し訳ない気持ちになっているんですよね。アゼルの妻は、平等であるべきだ、と、考えた上の行動です。

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