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59 閑話 イーストエンド村のアベルくん

○ レモニー視点です。


 わたし、イーストエンド村の弱気で愚かな女レモニー。


 セインに騙されて、妊娠させられ、捨てられた女。


 昔から、わたしは、気が弱かった。


 よくイジメられて、ゴンゾとアベルくんとチニーくんに、助けられてたっけ。


 セインのことも、そう。


 はっきり「イヤ」と言えないまま流されて、関係を持つようになり、気がつけば妊娠していた。


 セインの子供を妊娠したのに認知すらされなくて、親にも見捨てられたわたしのことを、助けてくれたのはゴンゾだった。


 そして、後で知ったことだけど、そのゴンゾを助けてくれていたのが、アベルくんだった。


 そして、村に大量の食糧を支援してくれていたのもアベルくんだ。


 国からの支援だなんて信じてる村人なんて、いないんじゃないかな? だって、うちの村以外の村の話を聞くけど、国から支援を受けてる村なんてないもの。


 アベルくんが国からの支援っていう名目で、アゼルさんから食糧支援を受けてるって、誰もが知ってること。



 アベルくんは、一言で言って「地味」


 まったく目立たないの。


 でも、村から不毛の荒れ地に、お兄さんのアゼルさんが、村長に追放刑にされてからは悪い意味で目立ってた。


 誰にも、お嫁に来てもらえないくらい、悪い評判が立ってしまって、未だに独身。


 この世界(ユーフォリア)では、女の子が子供を産める体になると、自然とカップルが出来て、子供が出来て結婚するのが自然だけど、どの女の子もアベルくんだけは避けた。


 村長に睨まれたら、この村で、生きて行けないもの。


 アゼル・ラプアシア男爵の第3婦人であるアリスとの不倫疑惑もあるしね。


 アベルくんは、いい人なのに、可哀想。


 でも、本人は、至って、平気そう。


 そうそう、追放刑にされたアゼルさん、生きていて不毛の荒れ地を開拓しちゃって、それが認められて男爵にまでなっちゃった。


 アベルくんはイーステリア辺境伯爵様とも懇意になってるみたいで、今は、村で一番、村長よりも裕福になってしまった。


 相変わらず女の子達には敬遠されてるけど、狙ってる()、結構、居るんじゃないかな?


 村長に睨まれてる内は、誰も手が出せないでしょうけど。


 村長もアベルくんのお兄さんのアゼルさんを、追放刑にしたのがネックになって、アベルくんとは打ち解けられないみたい。



 アベルくんの魅力は外に向かって放たれるものじゃなく、内側に向かって、どこまでも奥深く惹き込んでいくものだと思う。


 パッと見分からないけど、知れば知るほど、好きになっていく。


 はまっちゃったら、抜け出せない感じ。


 そうそう、村長と言えば。


 関係ない話に聞こえるかも知れないけど、人界の西の果てにある、このイーストエンド村が、なぜ、イーストエンド(東の果て)って名前だって不思議に思わなかった?


 実は、イーストエンド村は、人界の西の果てって意味ではなくって、天界の東の果てって意味なんだって。


 はるか遠い昔、イーストエンド村は、天界の一部だったんだって。


 そこで、村長の話しに繋がるのだけど、その遠い昔に、村長のご先祖さまが、神々の主神のゼンさまと結婚してたんだって。


 証拠なんか、なにもないけど、村長は、お酒飲むたびに自慢してるよ?


 閑話休題。


 男爵様と伯爵様に、強力なパイプのあるアベルくん。


 その裕福なアベルくんが、ゴンゾを支援して、そのゴンゾが、わたしを……わたしと、わたしの娘のピーチを助けてくれていた。


 アベルくんには、感謝の言葉もないよ。


 もちろん、直接助けてくれたゴンゾにも。


 セインには、捨てられたわたしだけど、その縁でゴンゾと結婚が出来た。


 元々、好きだったのもあるけど、ピーチを本当に大切にしてくれているのが決め手だった。


 ピーチもゴンゾを本当の父親のように慕っている。生みの親より育ての親よね。


 でも、問題がないわけじゃなかったの。


 ピーチが成人しても、男の子が誰も寄り付かなかった。


 ピーチはセインに似て、天界で通用しそうなくらい器量がいいのに……。


 ピーチとゴンゾが血が繋がっていないことが村では有名な話で、ピーチが、すでにゴンゾのお手付きだって、噂が立っちゃったみたいなの。


 ゴンゾは本当にピーチを大切にしてくれていたから、当然、手をつけていない。


 でも、口さがない村人は、まるで、それが真実であるように噂した。


 血の繋がらない男女が、同じ屋根の下で暮らしているのだから、なにもないわけがないって。


 ゴンゾは、落ち込んだわ。


 自分のせいで、ピーチの幸せ(結婚)を奪ってしまったって。


 でも、そこで結論を出したのは、ピーチ自身だった。


 ピーチがゴンゾに……自分の父親に「責任とって、ピーチと結婚して下さい」って言ったの。


 ずっと、ピーチとレモニー(わたし)を守り養ってくれた、ゴンゾの侠気(おとこぎ)に、ずっと()れてたって。


 ピーチにとって、村の口さがない噂は、まんざらじゃなかったんだって。


 ゴンゾは、ピーチの熱意に押しきられて結婚することになった。


 今じゃ、わたしの娘ピーチがゴンゾの第2婦人よ。二人でゴンゾを支える約束をしちゃった。


 結婚の祝福に来たアベルくんが、腹の底から声を(しぼ)り出して言った……。


「ゴンゾは、他人とは、思えない……!」

2020年8月13日 誤字修正

2021年1月7日 読点を整理しました。

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