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46 閑話 ある難民の話、後日談

○ ジョージの娘アイニス視点です。


 まだ日も昇りきっていない、薄暗い早朝。


 わたしアイニス13歳は、フカフカのベッドから身を起こす。


 伸びをして、今日も元気。


「おはよう、おかあさん、おばあちゃん、シズラさん」


「「「おはよう、アイニス」」」


 キッチンに降りて、おかあさんとおばあちゃん、そして、お手伝いの聖霊シズラさんに、おはようの挨拶をする。


 おとうさんは、すでに畑仕事に行っている。


「おとうさん、なにか食べて行った?」


 おかあさんに聞くと、


「蜜入りの金色パン、食べて行ったわよ」


 おかあさんの張りのある声。今日も元気いっぱいだね。


「おとうさん、金色パン、好きだよね」


 ちょっと可笑しくって、笑いながら言う。


「思い出の味がするらしいよ」


 と、言ったのは、おばあちゃん。うん、今日も声が元気だ。


 おとうさんは家族の命を救ってくれたラプアスを愛しているから、精製されたラプアスで作った白パンより、雑味の強い金色パンを好んで食べる。



 (家庭菜園)は、課税対象外になるので、そこで取れた農作物は自分達の食卓に自由に乗せることが出来る。


 おとうさんの育てた野菜って、どこか甘くて美味しいんだよね……。


 今日の朝食も楽しみだ。


 言っている内に、おとうさんが収穫したての野菜を、籠いっぱいに乗せて帰ってくる。


 さて、ここからが腕の見せ所。


 女衆で新鮮な肉も野菜もいっぱい使った極上の朝食を作って、テーブルに乗せる。


 ここ、ラプアシアは、肉も野菜も安い。そのくせ、品質は極上。なんか、生産量が豊富な上、保存方法がいいらしいよ。魔法でなんとかしてるんだって。


 なにより、ラプアスが豊富。


 精製する前は、栄養豊富。精製すると、極上の甘味と旨味が出る万能の穀物。作り方は秘密だけど、砂糖のような蜜も作れるらしいよ?


 なんでも、領主様が天界まで行って手にいれたらしいよ。


 領主様って、神様かなにかかしら。


 でも、この天界と言っても通用するように豊かなラプアシアを見てると納得しちゃう。それくらい領主様って、凄い人。優しいし頼りになるし、なんでも知ってる賢い人。


 でも、冒険者達には、あまり評判が良くないらしいよ? 本当のことを知らない冒険者達って可哀想。


 天界に行ったって嘘をついた?


 本当に行ったに決まってるじゃない。ラプアスが、その証拠よ。


 世界樹の葉でクレア様のご病気を治したって嘘をついた?


 治したに決まってるじゃない。あれだけお優しい方が、病気で苦しんでいるクレア様(女の子)を放っておくハズがないわ。


 クレア様を手篭めにして洗脳し、奴隷のように働かせている?


 呆れてものも言えないわ。脳ミソ、腐ってんじゃない?


 そんなのクレア様が心の底から領主様を、お慕いしているからに決まってるじゃない。あれだけの男に惚れない女の子なんて居ないわ!


 ……おっと、いけない。食事は楽しく食べなきゃ。冒険者達のことなんか、どうでもいいよね。



 極楽のような朝食の後は、おとうさんはラプアスの農場に、わたし達、女衆は織物の工房に。


 あ、シズラさんは家に残って、掃除洗濯など家事をしてくれるの。


 だから、ベッドが、いつも清潔でフワフワ。もう、シズラさん、大好き。


 あっ、帰ったらお風呂も、すぐ入れるんだよ。トイレなんか水洗だし、実はうちは貴族様より、いい生活してるんじゃないかしら?



 織物工房では、おばあちゃんから、ご指導を賜る。


 まだまだ、おばあちゃんどころか、おかあさんにさえ足元にも及ばない。


 でも、未来を支える希望だから、焦らずじっくり上手くなっていけばいいって言ってくれるの。嬉しくて涙が出ちゃう。


 ラプアシアでは人材を育てることの出来る人が重用されるらしく、特別な手当てが出たり、色々、優遇される。


 わたしも、人を育てることが出来るような大人になろう。



 織物は、わたし達の生活を格段に良くしてくれた。


 なんだか、高値で取り引きされてるらしいよ?


 でも、領主様が支給して下さる糸が反則だと思うの。なにこの絹のような手触りと黄金のような光沢!


 この糸の製法も、秘密なんだって。でも、チラッとラプアスの葉っぱから繊維を取り出すとかなんとか……。


 ラプアス、ほんと、万能だな、おい!



 今日は、織物の納品でラプアシアの都アゼリアに来た。


 無事、納品も終わって家族で、今、流行りのカフェに。


 ここ、平民の店だけど、裏メニューで貴族様が食べる美術品のようなケーキも頼めるの。


 眼を剥くほど高くて、店の奥の個室限定だけど。


 わたし達は織物で儲かっているから、余裕で買える。贅沢だけど、いいのかな? いいよね?


 おとぎ話に出てくる雪を被った白亜のお城のようなケーキを頬張りながら、幸せを噛み締めるように食べる。


 おとうさんも、おかあさんも、おばあちゃんも、美味しそうに食べている。


 これ以上の幸せなんかないと思う。


 でも、そろそろ結婚も考えないと。


 どこかに領主様みたいな人、居ないかしら。

2021年1月6日 読点を整理しました。

2021年12月14日 一部修正。(アベリア→アゼリア)

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