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40 閑話 アベルの反省

○ 事後の後の話です。


 カレラ達と恋人の契りを果たした後、アゼル(アベル)は、カレラ達に、婚約指輪と結婚指輪。そして、もうひとつ、指輪を渡した。


「これは……?」


 ダイヤの指輪は、婚約指輪。金の指輪は、ラプアシアでは結婚指輪である。では、もうひとつの、プラチナの指輪は、なんだろう?


 アゼルは、少し照れながら、言った。


「こじつけになるけれど、恋人指輪。右手の薬指につける、恋人の証だよ」


 そう言って、優しく右手を取って、恋人指輪を、3人にはめた。


 3人は、大輪の花が咲き誇るように、笑顔を輝かせた。そして、涙が一雫、頬を流れて、


「「「嬉しい……」」」


 と、一言。嬉しさに震える声で、呟いた。



 その日、アベルは、アリス達3人……アリス、イリス、エミリーを、カフェに誘った。


 珍しいことに、いつものテラス席ではなく、奥の個室に入った。


 不思議に思った3人は、アベルが、話し出してくれるのを、旨味と甘味の深い紅茶を飲みながら待った。


 やがて、アベルが、ポツポツと話し始めた。


「今日は、アリス達に、謝りたいんだ。なにも言わずに、最後まで聞いて欲しい」


 アリス達は、驚いた。アベルが、アリス達に、謝ることなど、なにひとつないと思っていたからだ。


 3人は、アベルの言葉を待った。


「俺は……ああ、これだから、ボクは……」


 アベルは、自分を責めるように、悔しそうな顔をした。


「ボクは、ある時から、ある意味、アリス達に、嘘をついてたんだ」


 3人が驚く。


「ちょっと、体が大きくなってきた子供の頃の話だよ」


「あの頃、ボクは、アリス達に「子供っぽい」とか「泣き虫」とか言われるのが、本当にイヤで、自分の本心を偽って、無理に男っぽく、泣き虫に見られないように、振る舞うようになったんだ」


「確かに、子供っぽくもなく、泣き虫では、ないように、見てもらえた。けど、ボクは、そのことによって、自分の本当の気持ちに気づけなくなってしまっていたんだ」


「アリス達のことが、本当に好きだって、気持ちに気づけなくなっていたんだ」


 3人は真剣に、アベルの言葉に、耳を傾けた。


「ボクが、もっと早く、自分の気持ちに気づいて、素直になって、アリス達と話し合っていれば、アリス達が、セインに騙されて傷つくこともなかったかもしれない……」


 その言葉は、アベルの深い後悔だった。


「アリス…イリス…エミリー。ごめんなさい」


 そう言って、深く頭を下げた。


「ちょっ……アベルせいじゃないよ!」


「そうよ! アベルは、なにも悪くないじゃない!」


「そんなに、思い込まないで! ……辛いよ」


 アリス達が、口々にそう言った。


「ううん、あの悲劇の原因の全てを、アリス達のせいにしてしまいたくないんだ」


 アリス達は、黙ってしまった。確かに理に叶う話に聞こえるけど、全てをその通りだと、納得できるものでもない。


 なにも考える必要はない。悪いのは、全部、セインだ。


 でも、アベルは、悪を背負いたがる。


 女は誰も悪くない。女が悪いとすれば、それは全部、側にいる男せいだ。


 女が泣いていれば、それは男が悪い。


 そして、アリスとイリスとエミリーの男は、アベルなのだ。


 男には、責任がある。


 アベルに言わせれば「悪を女に背負わせるのか? 冗談じゃない。恋愛で勝つとか負けるとかじゃない、立場が良くなるとか悪くなるでもない。男が悪を背負って立つことが大切だ。女や子供を悪者にしてしまわないために、男がちゃんと、悪を背負っているかが問題なのだ」


 まあ、要するに、女と子供が馬鹿をしないように、しっかり指導教育しとけって話し。


 アベルがきちんと、アリス達を教育してれば、防げた悲劇だったのだ。


 ……子供には、酷な話だったと思うが。


 助け合わなくては成り立たない社会の構造的に、誰か一方が100%悪いという事態は存在出来ない。



「ボク達は、家族だろ? 家族って、一蓮托生だと思う。連帯責任だよ」


「でも、今日は、そんな家族だけの関係を、ちょっとだけ変えたいんだ。もう少しだけ、話を聞いてもらえないかな」


 そう、アベルは、言って、テーブルに小さな箱を、みっつ、置いた。


 3人に開けるように、うながす。3人が、おずおずと、開けると、そこにはプラチナの指輪が輝いていた。


「すぐには無理だけど、もう子供っぽいとか、泣き虫とか言われても、素直なボクを出そうと思う。ボクは変わってしまう……ううん、戻ってしまう」


「いまさらって、笑われるかもしれない。でも、ボクは、本当は、ずっと、アリス…イリス…エミリーと、付き合いたかった。彼女にしたかった。恋人になりたかったんだ」


「その指輪はね……恋人指輪っていうんだ。恋人の証に、右手の薬指につけるんだよ」


 こじつけだけどね。と、おどけて笑う。


 そして、真剣な顔をして、3人に言った。


「こんなボクですが、アリス、イリス、エミリー。ボクの恋人になってくださいっ」


 そう言って、頭を下げて、手を差し出す。


 アリスは…イリスは…エミリーは、驚きに呆然としてしまった。


「あ……あたし達、もう、30歳のおばさんよ?」


 いまさら、なによ……。


 アリスが、驚きに震える声で言う。でも、その声は、こらえきれない喜びの色を含んでいた。


「ボクにとっては、いつまでも可愛い女の子だ!」


 そもそも、アリスもイリスもエミリーも、どう見たって、なぜか、15歳前後で、外見年齢止まってるじゃん。



「「「アベルが着けてよ」」」


 3人が、右手を差し出した。


 アベルが、優しく、愛する心を込めて、指輪をはめていく。


「あのね、アベル……?」


 指輪を、うっとりと、見つめていたエミリーが切り出す。


 ん? と、アベルが、言うと、イリスが暴露した。


「俺達、とっくの昔に、俺達はアベルの恋人だって……アベルが俺達のことを、家族としてではなく、恋人として好きだって、気づいてたぜ?」


 具体的には、結婚してから。


 えっ?! っと、アベルが驚く。


 イリスにはバレバレだった。呆れた声で言う。


「目を見りゃわかる」


 エミリーが、色っぽく、唇に指を触れて言う。


「キスが、恋人のキスだった」


 アリスが、呆れたように、ため息混じりに言う。


「アベルは、口には出さなかったけど、行動や仕草や態度がね……」


 3人が、口を揃える。


「「「どう考えても、恋人扱いだった」」」


 アベルは、膝から崩れ落ちた。


「じゃあ、ボクの覚悟は、まったくの無駄? ボクって、道化? 笑い者なの?」


 3人は、頬を染め、嬉しくてたまらないという風に、言った。


「「「ハッキリ、言葉にしてくれて、嬉しい!」」」


 3人は、こらえきれない嬉しさを爆発させて、アベルに迫った。


「「「アベル、キスして! って、いうか、抱いて! あたし達を、むちゃくちゃにして!」」」


 アベルは、悲鳴を上げた。


「ここじゃダメ! 家に帰ってから!」


 アリスが、杖を振り上げて叫ぶ。


「転移!」


 アッー!


 その日、アベル達の寝室に、アベルの絶叫が響いたのだった。






「アリス…イリス…エミリー…怒らないで聞いてね。アリス達はセインに騙されて苦しんだけど、そのおかげでカレラとオードリーとウェンディが生まれてきたんだと思うと、悪いことばかりじゃないなって、思ってしまうんだ」


「「「うん、あたし達も、セインは、絶対に、許せないけど、カレラとオードリーとウェンディを授けてくれたことだけは、セインに感謝してる」」」

 みんなで力を合わせてなきゃ……協力して一緒にやらなきゃ生きていけない社会構造なので、どちらか一方だけが悪いなんて事は、ありえない。

 でも人は自分は悪者になりたくないから、立場の弱い者を悪者にしてしまう。主に女や子供を。だから、責任者()が「悪いのは俺だ。文句があるなら俺に言え」って言うんだよね。

 男は弱者の罪を引き受ける。

 女子供を庇って責任を背負い悪者になる男と、責任を他人に押し付けて逃げる悪い男が居るけど、前者は女の子にモテるが、後者は毛虫のように嫌われる。

 アベルがモテる男の方であることを描きたかったのですが……後日、書き直すかもしれません。

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