31 閑話 石を肉
○ ラプアシアが都市規模になった頃の話
「では、始めます。よく見てて下さい」
ラプアシアの都市部、住宅地の集会所で、魔法講師が、それを実演して見せる。
集会所には、キッチン用品が置かれ、魔法の講習でありながら、さながら料理教室の雰囲気を出していた。
講習を受けるのは、新たに移住者となった開拓民達だ。
魔法講師が手をかざし、魔力を注ぐと、魔方陣が光り、魔方陣の上に乗った石が、滴るように新鮮な色合いの赤身肉に変化した。
「石を肉という魔法か?! ……それにしては、肉の質が段違いだ」
熟練の冒険者風の男が、うんちくをたれた。それに笑いかけて、魔法講師が答えた。
「石を肉の魔法で間違いありません。ですが、素材が違います。素材である石が、錬成師と石工によって、石を肉の魔法に適した成分の石を集め錬成したものなのです」
そう言って、魔法講師は、肉を切り分け、同じく、魔方陣で起動する魔法のコンロで、手早く火を通し、塩を振りかけて、開拓民達に試食を振る舞う。
「うめぇ!」
「美味しいわ!」
「くうぅ、柔らかい! 蕩けるようだ」
あちこちで絶賛する声が上がる。
「これらの設備は、皆さんに支給される家に、常設されていますので、一通り使い方を教えます。と、言っても、魔力を魔方陣に流すだけですが」
「待ってくれ。石を肉の魔法を使うだけの魔力量なんて、誰も持ってないぞ?!」
熟練の冒険者風の男が言うと、魔法講師は笑って言った。
「それは大丈夫です。マナスプリングから汲み上げた魔力が、各家に供給されていますから、魔方陣を起動させる微量の魔力だけで使えます」
「肉に変える石って、高い値段じゃないの?」
主婦のひとりが心配の声あげる。魔法講師は笑って答えた。
「大丈夫です。原材料に費用はほとんどかかっていませんから、パン一個分くらいのお値段ですよ」
最高級赤身肉が、パンと同じ値段で買える。開拓民達は歓声を上げた。
「ほかにも便利な魔法の設備が備わっています。ひとつずつ説明しますね」
魔法講師による講習は続いた。
王都の貴族でも持っていないような、最先端の魔法技術。未来科学魔法の技術も流用した超最先端の技術である。
その日、集会所には驚きと喜びの声が、ずっと響いていたのだった。




