29 閑話 王家との戦争
イーステリアの東、大草原に王家の軍勢約50000が陣取っていた。
対するイーステリア・ラプアシア連合軍は10000。圧倒的な戦力差である。
イーステリア・ラプアシア連合軍の正面に、この場に似つかわしくない、可憐な女性が、ふたり、立っていた。
ひとりは、美の女神の愛娘であるハイエルフの女性キサラ。ひとりは、芸術の神が造り上げたビスクドールのような美貌の女性クレア。
彼女達ふたりとも、その美貌に、激しい怒りの表情を浮かべていた。
その後ろに控える彼女達の家族は、50000の軍勢より、彼女達ふたりに怯えていた。
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クレアが祈ると、天空から光が溢れ、武装した幾万もの天使の軍勢が降りて来た。
また、キサラが号令を上げると、ナギア高地の頂上から、幾万もの天使型の自動人形の軍勢が飛来した。
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それを見た王家の軍勢は浮き足だった。
領地をふたつ征服するだけの話だったはずだ。天界の軍勢と戦うなど聞いていない。
そもそもだ、天界の軍勢と戦うとは、なにを意味するのか。そして、その事実を、民衆がどのように受けとるのか。
兵士達の士気は、最低にまで下がり、転進する者も少くない。
軍を指揮する国王は、攻撃を命令するが、それに従う者は、疎らである。
しかし、それを見た良識ある者が戦慄した。
王家の軍が、天使に弓引いたのである。
それを引き金に、天使の軍勢から、裁きの雷が瀑布のように降り注いだ。
その光景は、戦争などと呼べる代物ではない。
天使による、天罰の行使である。
王家の軍勢は、散り散りになって敗走した。
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それを見て、キサラとクレアが、凄絶な微笑みを浮かべて、昏く嗤う。
「天使に弓引いた王家の、今後の評判が愉しみですわね」
「元々、悪かった評判がどこまで堕ちるか愉しみだわあ」
「「私達の大切な、アリス、イリス、エミリー、カレラ、オードリー、ウェンディを泣かせた罰よ(です)」」
後ろで、見ていた家族達は、抱き合って震え上がった。
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以後、ラプアシアが支援していた、食糧の供給が停止し、王国はラプアシア辺境伯領とイーステリア辺境伯領以外の領地は困窮することとなる。
戦争を仕掛けた王家への責任追及が、加熱することとなった。




