表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/327

28 閑話 女王キサラの政(まつりごと)

○ キサラが真面目に女王やってます。


 キサラが、アベルの待つ、ふたりのプライベートルームに入って来た途端、盛大なため息を吐いた。


「どうしたの?」


 アベルが問うと、キサラは心底嫌そうに言った。


「以前、5日5晩かけて解決しなかった議案が、また、奏上されたの……」


 弱りきったように、ソファーに身を沈める。


「見せてもらっていい?」


 キサラが、魔法で、虚空から、キサラが考えた議案の解決策を書いた書類を取り出し、アベルに渡す。


 それを熟読したアベルが、あるひとつの項目を消して、キサラに返し、言った。


「それを持って、会議前に、まず、コリンズの部族の族長に見せて、相談してみて」


 キサラは、不思議そうにしながらも、アベルの言う通りにした。すると……。



「アベルが消した項目を指摘されたわ」


 キサラが、疑問を押し殺した声で、言う。


「見せて」


 アベルが、書類を確認し、次に指摘されたところとは別の項目を消して、キサラに返して言った。


「次は、この書類を持って、サランズの部族の族長に、相談に行って」


 キサラは、不思議そうにしながらも、アベルの言う通りにした。すると……。



「アベルが消した項目を指摘されたわ」


 キサラが、なぜ、このようなことをしなくてはならないのかと問う声で、言う。


「じゃあ、次、どんどん行くよ」


 そう言って、アベルは、同じようなことを、全ての部族にした。


 そして、会議当日……。



「では、反対意見もないので、本件の議題は、女王キサラの提案通りのものとする」


 議長の宣言を受けて、会議場に拍手が沸き起こる。


 会議開始から、わずか10分のことだった。



「アベル! いったい、どんな魔法を使ったの?!」


 プライベートルームに駆け込み、キサラがアベルに問い詰めた。


 アベルは笑って、こたえた。


「こうすれば、全ての族長の意見が盛り込まれていることになって、彼らが、確かに政治に参加して協力しているっていう、役に立ったことの証明になっただろう?」


 キサラが、うなずく。


「こうすれば、たとえキサラが「私は全ての部族を尊重し大切にしている」って100回言うより、彼らを尊重し大切にしている(あかし)にならないかい?」


 キサラが驚きと共に「確かに」と呟いた。


「こうすれば、彼らの存在価値を高め、彼らに安心を与えことが出来るでしょう?」


 キサラの議案には「完璧である」という欠点があった。それをアベルは、わざと完璧でなくして欠けている部分を作り、族長達に補完させた。そうすることによって、彼らに、活躍の場と功績を与えたのだ。


 完璧な議案を提出することで「お前達は必要ない」と言っているのだから、議員である族長達が受け入れるはずがない。


 そう、笑顔で言うアベルを、キサラはキラキラした目で見つめ、惚れ直したように、言った。


「アベル、凄い! アベルって、賢いのね」


 アベルは、称賛がむず痒くて、苦笑して言った。


「ボクは賢くないよ。ただ、人情を大切にしているだけだよ」


 賢いかどうかで言えば、完璧な草案を作れるキサラのほうが、圧倒的に賢い。ただ、世情に(うと)い。


 神々の主神が、決定事項を押し付けるだけの政治に慣れてしまっていたキサラは、目から鱗だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ