115 閑話 アゼリア商店街の服屋の女将
○ 114 サキュバスの日常に出てくる服屋の女将さんの話です。
やっちまった!
アゼリア商店街の、服屋の女将であるメイは、大いに慌てた。
領主様から通達があり、3日後に視察に来られる。
なにがいけなかった?!
税金の納め過ぎは、ここ数年、していないハズだ……ちょっとしか……。
あの程度なら、お目こぼし頂けるハズ。
なんにせよ、3日後だ!
食事と睡眠と運動に気をつけて、健康を維持しなければ!
でないと領主様……アゼル様に叱られる!
お父さんは、不健康と、本当ではない笑顔を見逃してくれない。
こっぴどく叱りつけるのだ。
……その後の優しいお言葉とフォローは、素敵だけどねぇ。
メイは、ルンルンで、視察を待った。
○
メイとアゼルは血が繋がっていない。が、ラプアシアの領民は、みな、アゼルのことを「お父さん」とか「オヤジ」と呼ぶのである。
○
3日後……アゼル様が、執政官と、地味な……ふとすると居ることさえ忘れてしまいそうな女の子を連れて、メイの服屋に訪れた。
「……無理はしていないか?」
一通りの挨拶の応酬の後、アゼル様が本題を切り出した。
秘蔵の酒を下賜して下さって、その時、厳しくも限りない優しい目で見て、言って下さったのだ。
メイは、下賜された酒の銘柄を見て、悟った。
ロマンティックナイト……夜廻り……サキュバス達が、こよなく愛する酒じゃないか!?
メイは、アゼル様の視察の理由に思い当たった。
あの子に……新入りの嬢ちゃんに、服を渡しすぎちゃったんだねぇ……アハハハハ……。
メイは、酒のラベルに、新入りの嬢ちゃんの、お礼を言う笑顔を透かして視た。
いい顔で笑うねぇ……嬉しいよ……。
「無理なんかぁ、一切、してないよ!」
メイは、胸を張った。
誇らしい、晴れ晴れとした、いい気分だった。
○
その後、執政官により、店の経営状況に視察が入り、売上や利益が計上され、領主印の入った商品引換券が手渡された。
ラプアシアならどこでも、貨幣の代わりに利用できる、魔力を流すと、領主様の紋章が金色に輝いて浮かびあがる代物だ。
なお、アゼリアでは、価格の数倍の値段で取引される人気のある商品引換券だ。
最も、これを手放すのは、よそ者くらいだけどねぇ。
メイは、紙幣に浮かび上がる金色の紋章を、うっとりと見つめて呟いた。
アゼル様の紋章を手放す? とんでもない!
神棚に飾っとこうねぇ。
メイは、ルンルンで、神棚に向かったのだった。
2020年11月5日 誤字修正しました。




