107 閑話 神殿騎士聖霊アルタとイネ婆
○ 106 盗賊退治の後始末の後の話です。
「アルタ様、草引き終わったよ」
「もう、動けない」
「綺麗にしたよ」
貧民街の子供達が、聖霊様……アルタ様に群がる。
「おお、いい仕事したな。……焼き菓子、食うか?」
「「「もちろん!」」」
アルタ様が、男前の顔を喜びにして、子供達にクッキーを配る。
子供達は、大喜びだ。
あたし……貧民街の老婆イネも、つられて笑う。
子供達の笑顔は、いいねぇ……最高だねぇ。
○
ここの領主様が、竜教会と揉めた。
領主様は、武力で竜教会を脅したが、竜教会は、その何倍もの武力で跳ね返した。
敗北した……無条件降伏した領主様は、多額の賠償金を払い、スラムの住人をラプアシアに移譲して、空いたスラムの土地を、竜教会に寄進した。
スラムの土地は教会の農場となり、ブラザーズと名乗る精霊使い達と、チルドレンと呼ばれる聖霊様達によって、あっという間に開墾された。畑には、芋などを植えている。ラプアスはラプアシアや天界でしか育たないらしい。
貧民街の生活の困窮した者を、小作農として、雇ってくれた。
女、子供、老人は、みんな農場に来た。
農作業は大変だけど、なんと、1日3食、食事が出る!
粥はもちろん、パンも干し肉も出る!
衣服は支給され、住居も改善された。
それに加え……。
「アイタタタ……」
私は、腰と膝の痛みにうずくまった。
「大丈夫か、イネ婆」
すぐに、アルタ様が駆けつけてくれる。
そして、神聖魔法で、癒してくれたのだ。
そう、医療費が、無料……タダなのだ!
「大丈夫か? 働けるか?」
あたしは、奮い立って、大声を上げた。
「こんな、いい環境で働いているんだ、働けない訳がないよ!」
周囲にいた子供達も女達も、激しく同意する。ここで働き始めてから、どんどん体が健康になっていく。
ユーフォリアでは、働ける者が働くのは、当然だ。そこに年齢や性別など、関係ない。
働ける者は、みんな農場に来た。それどころか、怪我や病気で働けなかった者も、聖霊様達やシスターズ様達によって回復し、働きに来た。
農作業と言っても、過酷な重労働は、全部、聖霊様達とエルフの国の自動人形や石の牛馬がやってくれるので、草引きや種まき、収穫などの楽な仕事だし、その上、お茶と菓子付きで休憩もさせてくれる。
ここは、天国かい?
作物は全て、教会に寄進され、賃金も払われる訳ではないが、生活必需品は、現物支給されるため、不自由がない。お菓子や酒など、嗜好品も……なにかにつけて、頻繁に手渡してくれる。
……これはきっと、税金対策だねぇ。
賃金を渡しても、きっと税金が増税され、全部、領主に持って行かれる。
それを防いでいるのだ。
アルタ様達……神殿騎士……聖霊様達が、街を巡回して下さるので、街の治安も格段に良くなった。
「「「おーい、イネ婆~」」」
そこに明るい声が響いた。
夜の街で、路地に立って、男性客を誘惑していた……娼婦になったハズの、若い娘達が、大挙してやって来た。
「あんたらも、来たのかい?」
「当然よ! もう、辛い娼婦なんてしなくても食べていけるんだもん」
「病気も全部、シスターズ様達が、癒して下さったし……人生薔薇色よ!」
「あたしらは、もう、日陰でしか、生きて行けないけれど……ここでは、明日が見えるわ」
竜教会には、感謝の言葉が尽きない。いつか、竜教会の元締めには、礼を言わないといけないねぇ。
そこに来ていたブラザーズのアランに聞いてみた。
「あんたらの元締めは、誰なんだい?」
アランは、声を潜めて言った。
「秘密だが……アベル父さん‥…ラプアシアの領主アゼル様だ」
アゼル様だね……覚えたよ。
いつか、必ず、このお礼はするからねぇ、覚悟しておいてねぇ。
あたしは……子供達と娘達の笑顔を見て、そう誓った。




