俺と鈴蘭と月夜の契り
二話目~俺と鈴蘭の月夜の契り~
安藤殿と前鬼殿と半兵衛に見送られ庵から出た俺達二人は今井ノ口に向かっている。
取り敢えず少しばかりか安藤殿にお金をもらい俺達は道を歩く所々に団子屋等があり鈴蘭が食べたいと可愛く我儘を言うので俺は鈴蘭と一緒に団子を食べている。
やはり、こんなに買い食い等をしていると路銀が
減っていく。
俺は鈴蘭に隠れて一服しながら考えた。
鈴蘭は、俺が居ないのを気付いて俺を探して見つけた。
俺が路銀の入った袋を見ながら深い溜め息を漏らした。
そんな俺を見て鈴蘭が冗談半分に言ってきた。
「お金が少なくなったなら商人でもしてみるか?主様の知識なら儲けられる筈じゃぞ?」
俺は、その手があったかと手をポンと叩いた。
現代知識のある俺がこの時代に現代では当たり前に売られている物を売ったなら売れる筈だ。
俺は、鈴蘭の頭を撫でた。
「流石は、鈴蘭だ。俺などと違って頭の回転が早いな。」
鈴蘭は、誉められて嬉しいのか頬が赤い。
そうこうしてると日が沈み夜道を歩くのは危険と思い。
俺達は、井ノ口に行く為の道中に宿があったので今日はそこに泊まることにした。
「鈴蘭さんや。尻尾と耳は隠してくれよ」
「どうしてなのじゃ?」
「人は自分と違う者を恐れるからだ……」
「ん~~分かったのじゃ‼」
本当に分かったのか定かでは無いが鈴蘭が宿に入って行ったので俺も続けて宿に入る。
俺達は泊まる準備をして宿の食事を取った。
宿の女将さんが蒲団の数を聞いてきたが鈴蘭が一組で良いと言った。
女将さんは、驚いていたが直ぐに落ち着き蒲団を一組用意した。
多分親子か兄妹にでも見えたのだろう……
そんな事も知らずに鈴蘭は無邪気に喜んでいる。
「今日も一緒に眠れてわらわも主様も幸せじゃな‼」
そんな鈴蘭の笑顔を見ているとこれからの生活での不安が無くなる気がした。
流石にお風呂は混浴は無く別々に入る事になった。
お互いにお風呂に鈴蘭は、満足したのか小さく欠伸をした。
俺は鈴蘭に寝るように仕向ける。
寝る前に聞きたいことがあったのか鈴蘭が俺に聞いてきた。
「主様は、どうしてあの二人に本当の名を言わなかったのじゃ?」
俺は考えた。
その場逃れの為に本当の名を言わなかったか訳じゃないがそれを鈴蘭に言っても良いのかと…
俺が考えていると鈴蘭が心配したのかオロオロし始める。
俺は決心がついたので話始めた。
「俺は、この時代の人じゃないから自分の本当の名を語る訳にはいかないだよ。」
そう言うと鈴蘭は悲しそうな顔をした。
「それにこの時代に俺の名前を知ってる人がいなくても鈴蘭だけでも知っていてくれるなら俺はそれで幸せだよ。」
俺のこの言葉を聞いて鈴蘭はさっきの悲しそうな顔が嘘のように満面の笑みに変わった。
「わらわ達は夫婦なのじゃ。主様と一緒にいれて主様を支える事が今のわらわの幸せなのじゃ。」
俺は、鈴蘭の笑顔とこの言葉に胸を射たれた。
知らないうちに俺の目から涙が溢れてきた。
鈴蘭は、俺に近づき小さい体で包み込むように抱き付いてきた。
「鈴蘭ありがとう。俺は、もう一度誓うよ。出会って二日だとしても俺は鈴蘭を絶対に幸せにするよ。」
俺はそう言うと鈴蘭の唇に唇を合わせた。
鈴蘭は、うっとりと幸せそうに頬を赤く染めた。
そうして、俺達は蒲団に潜った。
鈴蘭から数分後直ぐに寝息が聞こえてきた。
俺は鈴蘭にバレないように蒲団から出た。
月明かりが差している窓に腰を掛けて俺はタバコを吸いながら考えた。
俺は今までの人生ろくなことがなかった。
仲の良い友達はいたが片親だからと学校ではいじめにあい。
家に帰れば碌でなしの母親にあんたなんて産むんじゃなかったと毎日のように虐待を受けた。
そこから色々な事があったがそんな俺は現在17歳でグレた。
こんな俺でも愛してくれる鈴蘭がいてくれる。
俺は、今の現状にすごく幸せを感じた。
俺は、月明かりが差している外を見ながら呟いた。
「俺は、鈴蘭を絶対に幸せにする。」
俺は、月夜に鈴蘭への想いを誓い立てた。
そして俺は、タバコを吸い終わり口をゆすいでまた鈴蘭の横に潜り込んだ。
「おやすみ。鈴蘭。」
そう言うと俺は瞼を落とした。
~鈴蘭side~
先程主様が戻ってきて隣から寝息が聞こえてきた。
わらわは、するりと蒲団を抜け出し先程主様がいた月明かりが差している窓に腰を降ろした。
先程主様が考え事をしている時に時折悲しそうな顔をしたのが少し見えたのでわらわは、気になり主様が何を考えていたのか見ることにした。
九尾の妖孤が忌み嫌われている理由がある。
一応わらわも九尾の妖孤。使えないわけではないがわらわ自体この能力を好き好まんので極力使わないようにしている。
その能力は……相手がその時思い浮かべた物を観れる。
そんな、能力があるせいで九尾の妖孤は忌み嫌われている。
わらわは、先程主様が何を観ていたのか観ることにした。
この時わらわは主様の過去を知ってしまい、わらわの目から涙が溢れて止まらなかった。
やっとの思いで涙を止めてわらわは、主様の寝顔を見た。
主様の顔には時々涙が溢れたのか目の端に水滴が付いている。
わらわは、主様の目の端に付いている涙を拭いてあげた。
主様と出会って二日目だとしても関係無い程の愛情がわらわの心に現れてきている。
これは、同情なのかも知れない、だけどもその感情は、この人と一緒にいたいと強く想っている事には変わらなかった。
わらわは、この想いを月明かりで照らされている主様の耳元を小声で話しかけた。
「誰からも愛されなかったとしてもわらわだけは主様を愛し続けるのじゃ。」
わらわがそう言うと主様の寝顔が嬉しそうに笑顔に変わった。
わらわは主様を起こさぬように蒲団に潜り込んで主様の唇に唇を重ねた。
「おやすみ。主様。」
わらわは、顔を赤くなるのを抑えながら目瞑った。
こうして結婚二日目の夜は終わった。
二人の月夜の誓いはたてられ二人の顔を月明かりが祝福しているように照していた。
今後も時々鈴蘭sideが入るのでその時はよろしくお願いいたします。
駄文ですが読んでくれている皆さまありがとうございます。