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明鳥夢猫短編集

灰色の世界

作者: 明鳥夢猫

 朝、ダイニングテーブルにつき、両親と共に食事をとった。隣に座る父はパジャマ姿のまま、ブルーベリージャムを塗った食パンを頬張る。


 ダイニングと繋がるリビングの南側の広い窓には、ベランダの手すりとその向こうに街の景色が広がる。


 今日の空はどんよりとしている。部屋も心なしか暗く見える。


 窓の外の灰色の空から、白くちらつく無数の塵が見えた。雪のようだ。


 それらはみるみる量を増していき、水底に沈むように左右に揺れながら、時に風に舞い、降ってくる。


 気づくと、部屋の暗い天井からも雪が降り出した。それらは、ダイニングテーブルや皿の上に積もり、よく見ると灰色の埃のようだった。


 触ると、全く溶けもせず、冷たくもなかった。私がずっと雪だと思っていたそれは、雪ではなかった。


 父に聞くと、父は言った。


「多分これはPM2.5とか、埃とか、空気中のいろんなゴミだよ。中国からの贈り物だよ」


 平然として言う父を、私は不思議に思った。


「PM2.5って、天井も突き抜けるの?それに目に見えるものなの?」


 頭の中に、以前テレビで知ったニュートリノのことが浮かんだが、ニュートリノは小さ過ぎて、物質を突き抜けても目に見えるわけがない。


 父は答えず、埃が積もって灰色になったパンに噛り付き食べ続けた。


「こんな贈り物いらないよ」


 私は少し不満げに言ったが、父も母も答えなかった。


 ひたすら灰色の世界に、私達はいた。



 そこで目が覚めた。


 窓の外も部屋も明るく、天井からは何も降って来ない。



 灰色の世界は、もう無かった。



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