ローマ帝国の勉強――大雑把な流れと奴隷の行方
※ 注意書き
・貴方は、この文章を全面肯定しなくても良い
・貴方の感想と作者のそれとが違っていても、貴方が馬鹿にされている訳ではない
・異なる考えの持ち主は数え切れないし、それらと分かり合えなくともよい
・だが他人の顔にウンコを塗ろうとすれば、相手は当然に怒る
・そして相手と友達ではないのなら、礼儀正しく話しかけるべきである
〇共和政への流れと市民の成立
伝説によれば紀元前753年、ロームルスによってローマ王国は建国されました。
この時点でレギオン――ローマ軍団の前身やら元老院などもあるようなので、素人が思う以上に文明的だったようです。
そして紀元前509年にローマは王政から共和政へと移行しました。
王政から共和政への流れですが、実のところ自然の摂理にも近いと思われます。
それは王を打倒した勢力の数によって決まるからです。
単独かそれに近い場合、ただ王家が変わるだけになります。史実にも多く例が見受けられるでしょう。
一番強い奴が確定しているんだから、その他大勢に発言権はありません。
2~3程度の家系を主体とした反乱だった場合、その中心的な家系で王位を持ち回りとするか、袂を分かつかするでしょう。
ようするに一つのまま王国を分け合うか、いくつかの小国へ分裂するかです。
そして反乱に貢献のあった他の有力者は、王の選定に投票権のある家柄――帝国などでは選帝侯なんて呼ばれることも――となります。
最後に反逆勢力が多数だった場合――
誰も王を名乗ることが許されません。
なぜなら王の独裁や富の独占など――なんらかの面倒ごとがあったから、王家を打倒するのです。
苦労して反乱したのに、新しい王を擁立されたら割に合いません。ましてや自分以外の者なら尚更!
ですから、遅かれ早かれ話し合いでの解決へ――共和政への転向を迫られます。
つまり――
ローマは何らかの理由で王を追放したが、賛成&参加した有力者は多数だった
と考えられるでしょう。
でなければ共和政へ移行しませんから。
そして既存の元老院を、そのまま話し合いの場として活用したはずです。
※ 元老院とは本来、王の諮問機関――つまりは単なるアドバイザーに過ぎない
そして彼らは――王の追放に関わった有力者は、自分自身を『市民』と呼び習わしました――
で、終われば簡単なんだけどなぁ……(苦笑)
実のところ同時発生的に『市民』という概念が成立しています。
これはギリシア都市国家で考え出された階級で、おおざっぱには――
参政権を所持した、都市防衛の義務のある男子
のことで、世襲です。
そして市民の子供でも、女性などは参政権のない準市民扱い。
また、奴隷ではないが市民でもない――市民権を持っていない住人も存在します。
奴隷はそのさらに下へ位置するので――
実はバリバリの階級社会だったり!
つまり、ローマ共和政に民主主義とか夢見たら駄目です! 下手したら日本の江戸時代より酷いんですから!
・この時点での大雑把なカースト
王 (都市国家にはいない場合あり)
有力者 (まだ貴族という概念が確立していない。カースト的には市民)
市民 (様々な特権と義務を有する)
準市民 (一部特権の制限。投票権のない場合も)
平民 (市民ではない自由民)
奴隷
〇選挙権よりも被選挙権の方が重要なのは確定的に明らか
市民の投票によってローマの執政官――リーダーが選ばれるのは有名で、それを鵜呑みにした純朴な人は――
嗚呼、千年帝国には民主主義が花開いていた!
などと誤解しちゃうのですが、そうではありません。
作者はロシア共和国にすら懐疑的ですけれど――
選挙制度は、立候補の必要条件で公平性が極度に変わる
と考えているからです。
ロシアのプー帝は訳が分からないほど長く、かつ何度も政権を担ってますが……
この選挙――
西側的な基準でも適正といえるものなんでしょうか?
ごく標準的な選挙が実施されようと、立候補の方が制限されていたら民意は反映されません。
もし、ソ連的思想フィルターが掛かっているとしたら……
おや? 誰だろう? こんな夜更けに来客が。
……閑話休題!
とりあえず共和政ローマに話を戻しましょう、同志読者諸君!
執政官になるためには、法務官の経験がなければなりません。
法務官になるためには、財務官のキャリアを要求されます。
そして財務官は30歳以上と決められてますが、それよりなにより――
軍役を終わらせてなければ、一人前のローマ市民として扱って貰えません!
さらに各役職へ就くにも市民の承認が必要なので、特別待遇的な不正も不可能です。
この軍役期間、一説によると25年! 他に10年という情報も見たので……とにかく短期間では済まないようです。
……もはやローマ市民=ローマ軍説すら!?
(25年説は軍団兵とローマ市民の兵役義務をごっちゃにしている? ローマは誤情報も多くて精査が大変です)
ここで市民の承認――選挙に勝つことより問題なのが、軍務と政務はボランティアなこと!
ようするに無給です!
(一応、軍務の方は事実上の給料にあたる補填金があるとか。ただし、金額は庶民的)
つまり、10年従軍+数年の官僚時代を貯蓄で賄えて、さらには各選挙で勝ち抜く権力基盤を有している必要があります!
もう自分が金持ちになった程度では駄目。
親の代からなんてのは、最低限の要求でしょう。三代続いて有力市民でもなければ、国政に参加する権利すら得られそうもないです。
〇おそらく世界最初の階級闘争……らしい
とりあえずローマは王を追放して共和制となったのですが……この最初の元老院への参加資格は、相当に厳しかったと思われます。
なぜなら――
どうしてクーデターに参加しなかった奴らにまで美味しい思いをさせなくては?
と考えて当然だからです。
ですから、この機に――
全ての住民は『市民』だ!
みたいな改革もありませんでした。
……なぜかローマには「市民と奴隷しかいない」と考えている人もいたので念の為。
ようするに相変わらず市民は特権階級であり続けました。
ですが面白いことに、ここで軍部を中心とした非市民の反発が起きたそうです。
つまりは――
戦士階級――有力者達が王を打倒したように、兵士階級が有力者との闘争を開始!
が、これはクーデターにまで発展せず、平民階級の参政権を認めることで――市民権を与えることで解決しました。
しかし、これも全ての平民に付与された訳ではありません。
やはり同じく――
どうして階級闘争に参加しなかった奴らにまで美味しい思いをさせなくては?
となるからです。
また、市民の権利ばかりに注目しがちですが、義務にも注意を払うべきでしょう。
すでに述べた最低10年の従軍義務もありますし――
最低限度、保有しているべき資産額
なんていうのも決められていました。
貧乏人には市民となる資格もないし、市民権を与えられたところで義務も果たせない訳です。
……ローマ初期に限ってですけれど。
そして目玉特権である『税の免除』も無視できません。
この時点でローマ市民を増やしてしまったら、税収が減って国家が立ち行かなくなります。
増えるのは版図が広がり、各地に植民地を得てからです。
まあ、とりあえずは「新しい市民階級が生まれるものの、それは有力な平民――新興富裕層に限定された」としておきましょう。
・大雑把なカースト その2
貴族・市民 (後に貴族の語源となる市民階級)
平民・市民 (新しい勢力。平民と訳されるが、実態は完全に新富裕層)
準市民 (義務を果たせない市民も分類されたはず)
平民 「……偉い人達は喧嘩が激しいなぁ」
奴隷 「くっ……殺せ」
※ ちなみに外国人はアウトローなので、通常はカースト外に位置する
〇どれくらいいたんだよ、ローマ市民って!
この時点でのローマはイタリア半島の中部と南部を手中に収めただけで、ようするにイタリアの一部程度でしかありません(紀元前400年代。分類上は共和政初期などと呼ばれる頃です)
だいたい当時のローマ(都市)の人口が3万5千人ぐらいといいますから、それの1割から2割程度でしょう。ざっくりと5000人程度?
……少なくともその半分が常備軍に相当って、古代にしてはとんでもない数字かも。
しかし、この数字からローマ市民は爆発的に増えることに。
なぜなら市民権を外国人にも与えましたし……イタリア半島統一を皮切りに、ポエニ戦争で当時の最強国家だっだカタルゴぶっ飛ばして世界国家へ発展と、黄金期へ突入するからです。
〇悪魔的ッ! まさに悪魔的所業ッ! ローマが強かった理由ッ!
ローマ市民というと――
解放奴隷も市民となれた
が有名でしょう。
奴隷の持ち主が解放を宣言することで、解放奴隷という新しい身分となります(解放奴隷を身分階級と考えない学者さんもいる模様)
その扱いは市民と同等であり、子供からは世襲の市民となります。
また奴隷解放は美徳と考えられていて、そう珍しいことでもなかったとか。
解放された奴隷の方でも、生涯に渡った忠誠を誓うほど感謝したそうです。
……当時の奴隷は大事にされ、現代でいうところの労働者的な存在とか言われたりもします。
ですが現代人である我々こそ、よく奴隷という制度を考える必要があるでしょう。
まず奴隷は――
・物扱いなので、当人の同意なく売り買いされます
・自分自身に対する権利がありません。これは生命維持や純潔も含みます
・裁判請求権がありません
・慣例的に私財の所有は認められましたが、それを奪われても訴えれません
・結婚、住居の移動、職業選択の自由はありません
・身体の保証――雇い主からの暴力を止めてもらう権利すらありません
・なんとかして自分自身を買い戻すか、解放してもらうまで奴隷です
・子供は自動的に奴隷です
住むところと毎日の食事、定期的な休日は与えられることが多かったといいますが……それって嬉しがるようなことなんでしょうか? 対価としての労働はしているのに?
どう考えても――
奴隷にされるのは嫌なこと
です。それはそれは嫌なことです。
しかし、その嫌なことを止めるのが――解放するのが美徳?
ローマ人の頭のネジは何本も抜けてますし、有難がる奴隷も可哀そうとしか言いようがありません。
起きていることは――
もう殴らないといってくれたので、その加害者に生涯の忠誠を誓うほど感謝
です。
いや、実際のところ解放された奴隷側はそうするしかないので、どうにもならんのですが――
少なくとも美談じゃないし、現代における労働者と同じではありません
確かに黒人奴隷問題に比べりゃ遥かにマシです。それに古代という時代性もあるでしょう。
しかし、それでも尚――
永久に追及され続けるべき罪
でしょう。
(べつに現代のローマ人に謝罪しろとか、そういった主旨ではありません。僅かでも美談にしちゃならないという戒め的な意味です)
話をローマが強かった理由へ戻しますと――
この奴隷解放という制度が、悪魔的に効果大だから!
普通は人間を奴隷扱いなんてしたら、激しく鬱になって自殺でもするか、おそろしく低い生産性に留まってしまいます。
ですが、奴隷解放という甘い夢を見させることで――
自発的に勤勉な奴隷
という矛盾を成立させます。
奴隷が頑張ってくれるのなら、その国家が繁栄しない訳ありません!
なぜなら現代の我々でいうと……税率90%超の労働者に相当する上、ローマ帝国の人口で最も多かったんですから!
そして奴隷解放というのも、言葉の甘さのわりにエグいシステムだったりします。
ここで――
生まれながらの奴隷階級、主人の家で召使を40歳まで、この度めでたく解放された
なんて人物像で考えてみましょう。
40歳までは主人に当てがわれた寝床をつかう奴隷で、召使として指示された仕事をし、与えられる食事をしていました。
解放されてからは――
やはり、同じ主人の家で召使をします!
なぜなら、それ以外の仕事はできないからです。
それまでと同じ部屋を主人の好意で借りて、奴隷の頃と全く変わらない扱いで仕事をし、やはりそれまで通りの与えられる食事を。
唯一違うのは、これからは賃金が!
しかし、公平に考えてそれは正当な対価であり、有難がる筋ではありません。なぜ給料を貰って感謝しなければならないのでしょう?(まあ、当人は涙が出るほど喜ぶでしょうが)
そして解放奴隷さんは天涯孤独であることが多かったりします。
なぜなら親兄弟は同じく奴隷として売られてますし、結婚の自由がない=高確率で独身です。
やっと貰えるようになった僅かな賃金も、使い道が判らないので死蔵され、遺産として元主人へ残されることも多かったとか。
また、市民権も十全には活用できません。
なぜなら市民に課せられた義務を全うできないから!
45歳までに10年の軍役と言われたところで、現在40歳。論理的に考えても無理だし、その間の生活費的にも、武器等を支度する予算的にも無理です。
少なくとも所持しているべき財産といわれようと……身体以外は無一文なのに!
(この折り合いをどうしていたのか、本当に疑問です)
市民としての投票権はありますが、解放奴隷に政治なんて良く分からないのが普通な上、元主人の支持者を応援する義理を感じています。
税の免除はメリットですが……国的には、どうでも良い金額でしょう。
住み込み召使の賃金なんてたかが知れてますし、その3分の1ならもっとです。そもそも奴隷の頃から、本人は納税していませんし。
(たしか奴隷に対する固定資産税的なのを、主人が払う義務があったような?)
これでは奴隷解放に価値ありと考える方がおかしいでしょう。
……どちらかというと元主人の方が得ですし
(固定資産税が不要に。配下の市民増加=政治力アップ。功徳を為したという名声。元奴隷からの篤い忠誠。所持する他の奴隷がモチベーションアップ。払ったはずの賃金も遺産として回収)
それでも奴隷の立場だとカースト二階級特進なのが恐ろしかったりも。
※ ちなみに奴隷を解放すると発生する税もあります。
行政が、来年に徴収できるはずだった固定資産税の補填として?
それとも無制限の開放による社会的混乱への歯止め?
〇悪魔的ッ! まさに悪魔的所業ッ! ローマが強かった理由ッ! その2
次に有名なのが――
ローマの軍団兵を30年間勤め上げると、市民権と土地を貰える
でしょうか?
イケイケになってからのローマは占領地が余っていたので、このような政策を取ることができたそうです。
また、時代によっては土地ではなく年金の場合も。
(ローマは時代によって細分が違い、本当に情報精査で苦労させられます。この勤務期間も25年説ありました)
この土地を貰えるというのは、かなり大きいです。
なぜなら、市民権とセットだから!
市民特権に納税の一部免除がありますから、これは小さくとも――
中世ヨーロッパの貴族と変わらない
とすら言えます。
納税不要の身分で土地(領地)を持っていて、その権利は世襲で受け継がれるんですから!
パッと見は自由農民と同じでも、天と地の差があります!
……ちなみに自由農民とは、ローマ支配下にある農村各地に住む、市民権は有してないが奴隷でもない人のことです。
分類上は平民と同等か、そのすぐ下。もしくは奴隷のすぐ上だとか。もちろん、これを身分階級に含めない学者さんもいます。
話を軍団兵に戻すと、まず痺れてしまうのが――
自発的に多くの志願兵が集まる!
でしょう。
時代を問わず世界各地で志願兵を募るのに、どれだけ苦労していことか!
しかも、それだけに留まらず目的は30年間勤務することなので――
辞めないし、逃げないし、逆らわない
のです!
なぜなら万が一にでもクビとなったら、それまでの苦労が水の泡!
さらに現代でいうところの覚悟してきた人なので――
どんなに過酷だろうと耐える前提です!
そらローマ軍団兵は強くなるし、世界制覇への原動力にもなったのだろうと肯かざるを得ません。
〇悪魔的ッ! まさに悪魔的所業ッ! ローマが強かった理由ッ! その3
あまり有名ではなさそうですが、意外に重要と思われるのが――
いまなら国を売ると市民権をプレゼント!
でしょうか?
ローマは外国を侵略しその傘下へ収めたわけですが、それとは別に恭順も認めていました。
その際、恭順する国家の有力者には市民権を与えたそうです。
ようするにローマへ降ったら徴税権や政治的決定権を失うけれど、有力者として立場は維持できたわけです。
戦争して負けた場合、すべての住人は奴隷へ落される訳で、恭順が許されるのなら手ではあります。
歴史の俯瞰となりますが、イケイケの頃のローマに逆らっても勝ち目はないですし。
ここで留意するべきは――
当時の有力者は徴税や国からの俸給が収入のメインではなかった
ことでしょうか?
日本の平安貴族と同じく各自の所有する荘園収入が主体ですから、国家運営に固執する必要はありません。
これからは一ローマ市民として、それまで通りに荘園からの収入で生きていけばよいのですから。
(とはいえ、色々な理由で荘園没収など起きたはず。まあ、それでも戦争に負けて奴隷になるよりはマシでしょう)
そして、またローマ勢力下に市民でも奴隷でもない層――属州民が誕生します。
先に説明した軍団兵への志願ですが、ここら辺が主体だった?
(ローマ補助兵――属州民中心の軍隊という区分もあり、その百人長は市民権を貰えたとかで……別のシステムも垣間見えます)
・大雑把なカースト その3
貴族・市民 (後に貴族の語源となる市民階級)
平民・市民 (新しい勢力。平民と訳されるが、実態は完全に新富裕層)
家臣・市民 説明は後述
準市民 (義務を果たせない市民も分類されたはず)
新・市民 解放奴隷など。ほぼほぼ市民の義務を果たせないのは疑問
平民 「……徐々に下となってないか?」
属州民や農民 これを平民と区別しない学者さんも
奴隷 「いつか市民に!」
※ ちなみに外国人はアウトローなので、通常はカースト外に位置する
〇パトロン制度の実態
解放奴隷だろうと勤め上げた軍団兵だろうと、新たに市民となった場合、すぐ困ることに。
まあ常識で考えて自分は軍役を免除されるでしょうが――息子は違います。市民の義務として最低でも10年、下手したら25年の従軍義務が。
その武具など自前で揃えるのですが――
古代において兵士の装備一式は一財産です!
全世界的に戦場稼ぎが存在したのは、非常に儲かるから!
昨日まで奴隷だった者には逆立ちしても無理! 軍団兵を勤め上げていても、絶対確実とは言い切れません!
おそらく解放奴隷は、現在の雇用主――元主人へ相談するでしょう。
「旦那様、息子を従軍させようにも、槍や鎧を用意することが――」
「かまへん、かまへん! ワシが用意したる! ……ただ、ワシとこの三男坊と同じ軍団でもええか? 今年から従軍するねん」
「それは光栄な! 坊ちゃまのお供に加えて下さるとは! 息子にも、よくお仕えするように言い含めて――」
「がっははっ! よろしく頼むでぇ? ああ、ホンマに槍と鎧は心配せんでええから! 息子さんには、入隊祝いもいるなぁ?」
感激した解放奴隷は帰宅して――
「よいか、息子よ! いざというときは坊ちゃまの盾になってでもご恩をお返しするのだぞ!」
「はい、父上! 実は殿様から槍と鎧、それと祝いの酒がすでに!」
……みたいな?
よく「古代ローマではパトロヌスとクリエンテスという関係が――」と説明されますが――
それって、ようするに殿様と家臣のことじゃん!
財産や権力を持たなかったり、有していても細やかな市民は、ボスとして有力市民をたよりました。
その関係は主君と臣下の関係に限りなく近いものです。
他の制度と大きく違っていたのは――
臣下も市民権を持ってないと、ボス側の旨味が薄かった
ことでしょうか?
そして関係は世襲で受け継がれていくでしょうし、ますます譜代の家臣じみて!
同時期の中国などでは、食客と称して人を集めていました。これも現代の感覚でいうと、殿様と家臣のことです。
ようするに各地で雇用制度が確立するより前から、人々は有力者の傘下へ集まっていて、もう少し時代が下ると分りやすい形式へ発展するのでしょう。
というわけでローマへ話を戻すと、カーストへ新たに、家臣・市民を加えざるを得ません。
彼らは由緒正しい弱小市民だったり、元解放奴隷だったり、軍団兵を勤め上げた者だったりします。
〇新・市民ってなんだよ? そんなのいるのかよ? 平民だっておかしいだろ?
これは実際のローマで使われた法律用語に証拠があるのですが、区別はされていたようです。
でも常識で考えて――
市民の義務を果たした有力な市民と、昨日まで奴隷だった無一文の市民を、同等に扱う古代社会なんてあり得ません!
そしてボスの庇護下にいるときは良いですが、何かの拍子に保護されなくなったら――ボスが失脚したり、不興を買ったり、場合によってはボス料金を支払えなかったり――ただの無力な一市民でしかなく、場合によっては義務すら果たせません。
バリバリの武闘派国家で、さらに古代なのに……義務を果たせない?
どんな扱いを受けたかは、推して知るべしでしょう。特権の制限もやむなしです。
しかし――
この貧乏なローマ市民は、世界各地からローマ(都市)を目指して集まってきます!
なんらかの理由で没落してしまい、最後に残された市民権を頼りにローマ(都市)へ移住するしかなくなったからです。
以後は投票権を高く買い取ってくれるボスを探すか、それとも家臣となるか。
まあ、色々なパターンが考えられますけれど、とにかく増えていきます。
※
・参考 1
紀元前70年のローマ(都市)
生粋のローマ市民男子 4万人
その女子供など 9万人
かすかにのこった平民 ? 市民権を持たない自由民の霊圧が……消えた?
奴隷と解放奴隷 37万人 だいたい市民:奴隷が1:2だったとか
計 約50万
世界全体のローマ公民 約120万程度(これは解放奴隷を含むと思われる)
・参考 2
紀元14年のローマ全人口 4500万人
……おおよそ帝国の40分の1前後がローマの市民権を持っていた?
そして全ローマ市民の半数近くがローマへ集結していた?
また、ローマ(都市)は世界最初の百万都市でもあるので、ここから人口は倍以上に膨れ上がっていきます。
〇ローマでの選挙の実態
おそらく事実らしいのですが――
選挙といっても投票どころか、挙手すらしなかった模様!
どうにも選挙当日に会場へ市民権を持つ者を集め――
司会 「A氏が執政官へ就任に賛成の者?」
参加者 「さんせーい!」
〃 「意義なーし!」
〃 「ブラボー!」
司会 「賛成多数として、A氏の執政官就任を認める!」
だったらしいです!
もちろん、不在者投票なんて概念はなく、当日は会場にいなければなりません。
大雑把過ぎない? あと投票秘密は約束されないの?
そして選挙に勝ちたければ――
ローマ(都市)に選挙権を持つ子分を多く持っていればよい
となります!
が、紀元前1世紀の段階で現地の有権者は10万近く。おそらく最終的には倍。
さすがに有力市民でも10万人の子分を抱えられ……なくもないんだな、これが(苦笑)
推定過半数である10万人に、現在の価値で100万円相当の実弾をバラ撒いたら総額1000億!
さすがの有力市民でも……なんとかなっちゃうんだな、これが(苦笑)
というか、そもそも――
金銭や権力による買収が認められていた
わけです!
これで民主主義がどうのこうのという方は、ちょっと考え直した方が良いでしょう。
個人的には中世の意味不明な出自重視よりはマシと思いますが、やっていることは――
純粋な金の積み上げ合戦!
まあ、誰だろうとお金(権力)を持てば偉くなれるのだから、自然の摂理に従っていて平等ともいえます。
〇1000億が楽勝とかマジ?
ローマ帝国全土の総生産を、約1000兆円と仮定しましょう。
現代の覇権国家であるアメリカの総生産が約20億ドル――日本円にして約2000兆円で、生産性の低さを考慮して半額ですから、まあ叩き台程度にはなります。
……どのみち全ての数字は『現代の価格にして』ですし?
帝国期になる前、多く見積もっても市民権を持っていたのは総人口の5%程度です。
つまり――
残りの95%は平民か奴隷!
計算しやすく45%が平民、50%が奴隷としましょう。
そして平民からはおおよそ生産の半分――人頭税やら十分の一税やら、色々な税があった――とし、奴隷からは90%を搾取とします。
つまり、ローマ全体の総生産から――
67.5%が市民の収入となった
といえます。
現在の価値にして675兆!
これを有力市民の家系1万で分け合ったとしましょう。
つまり――
有力市民の平均年収は675憶!
なんじゃこりゃ!?
ちなみに最高機関である元老院は、このころ定員300名。
この上位300家系なら倍どころではないでしょうし、トップオブトップは兆単位すらあり得ます!
(ビルゲイツの全盛期が年収兆越えなので、ローマトップが近くてもおかしくない)
そりゃ年収675憶もあれば、家臣として市民を1000人抱えてもへっちゃらな訳です。
というか基礎的な組織票として家臣1000人では、政治力が弱すぎ?
しかし、これぐらいの勢いじゃないと足りません。
ローマには属州総督という支配地域の監督職があり、まあご多分に漏れず無給なのですが――
賄賂やらなんやらで、役得は搾り取れます!
なんと、ほんの数年の任期で属州の人口を10分の1にまで減らした豪の者すらいるとか!?
そんなの下手したら1000億単位に届く不正蓄財です!
しかし、そんな思いをして稼いできても――
成り上がりは形振り構わないなぁ
などと嘲笑されるのがローマの政治!
この程度を積み上げてたところで、まだまだ政局へ影響力を持てません!
やっと新興勢力の仲間入りできる程度!
なぜなら古参の家系は、資産が兆単位! 本気で実弾を撃ち合ったら瞬殺されます!
〇もはやこれ、実弾を撃っても間に合わねぇな?
というわけで、かの有名なパンとサーカスが始まります。
もう一人一人に実弾を撃ち込むより――
『俺プレゼンツ! 市民は無料ショー! おやつに無料のパンも配るぜ!』
と買収を開始することに。
『よろしい、ならば俺は道路作っちゃる! 名前は俺のな!』
『なら俺は、無料風呂だ!』
『くそ……橋作ってやる! これで俺が一番だろう!』
『なら水道橋だ!』
のちの世にノブレス・オブリージュと呼ばれる精神は、このように育まれたそうです。
それを楽しむ中には――
「奴隷生活40年……やっと解放され、いまでは週に一度の無料ショーとパン、それに奮発して買った酒だけが楽しみ」
「兵士生活30年……市民権を得て内縁の妻も呼び寄せられたし、晴れて息子も認知できて世襲市民だ……ああ、このショーの歓声は、俺を称える声のように聞こえる」
なんていう、バリバリに努力の人達が多かったと思われるも――
ローマが爛れてきたと嘆くのも、まあ無理はない?
なぜなら、投票権を売買することでローマ市民は生計すら成り立ちますし?
元老院の役職はほとんどが任期一年で、ざっくりと50職ほどあります。
それら全てが争点になるはずもありませんが……半分である25の選挙で自分の票を10万で売ったとしても、年収250万に届いてしまいます。
ましてや家来として雇用されれば、どれほどの年収となるか。
うん、そりゃ市民権もった奴らが大挙して押し寄せてきますわ。
しかし、ここで留意するべきはパンとサーカスと嘆かれた時代、すでにローマ市民は官職の投票権を失っていたことでしょうか?
どうにも西暦14年から元老院での投票へ変更され、いよいよ密室政治や完全な身分制度へと舵を切った様です。
ほぼ同時期に有名な小麦法やら、セフティネットとしてのパンの配布も始まるのですが……実のところ1世紀辺りで廃止されたという情報もありますし、数百年継続されたという説もあります。
また、この時期のローマ市民は働かないでよかったと信じている人が多いですが、このセフティネットの無料パンでは足りなかったそうで、なんらかの労働をする必要があったそうです。
つまり、時系列的に並べると――
市民 「お前ら急げ! 選挙のたびに金が儲かるぞ! ローマへ行くぜ!」
元老院 「人気取りの速度が間に合わないンゴー。サーカス作戦開始!」
市民 「さすが我らのローマ! ローマ最高!」
元老院 「市民が夢中になっている間に、選挙権を元老院へ!
これで賄賂が要らなくなる!」
市民 「おかしいぜ……生活が苦しくなってきた。
仕方がない、無料パンを食べつつ労働するか」
元老院 「市民に騒がれると面倒だ……サーカスとかは続けておくか」
が、後の世にいう愚民政策の実態だったようです。
ようするにローマ市民は主権の保持者から、ちょっとした特権を持つ被支配者へ?
……いつのまにやらローマ市民向けの税金も発明されてますし(帝政時代に税率と民衆支持率で問題が起きています)
〇マ、マルチじゃねぇし!
「違う、違う! マルチとかじゃない。それ2chとかで聞きかじっただけでしょ? マルチってのは出資法違反で……ネズミ講みたいにあれで……ローマは違うから! あのね、まずローマ市民になるでしょ? うん、その通り。たしかに軍役30年は大変。でも、それに見合う見返りあるから! 市民権だよ? ローマの市民権が貰えるの! ローマの市民になって、新しい市民候補を勧誘すると、貴方は親市民となって……まって! お願い! 最後まで説明聞いて! 俺達、友達――
とスーパー早口で説明してもらえますが……
もちろんマルチです。
どう考えてもローマはマルチと同じ構造を持っています。
しかし、紀元後から投票権がなくなり、税金免除もなし崩し、特権で残されているのはローマ(都市)在住に限り無料パンが貰えること? そして皇帝主催のサーカスを無料観賞できたりプレゼントを貰えることでしょうか?
それでいてまだ軍役義務は残っているので、もはや大した旨味はありません。
市民になると美味しい思いをできたのは、西暦14年まででしょう。
(それでも属州民よりマシかなぁ? 属州の方が税金高いですし)
・大雑把なカースト その4
ノビレス 勢力を保持した貴族・市民と平民・市民が合流し、自分達を呼称
ノーブル=貴族の語源
家臣・市民 後年、準貴族的な立ち位置へ。騎士階級という概念も?
準市民 女性が近世まで一段下だったのは世界共通
軍 「大将、ノビレスの奴らやっちまいましょうよ!」
市民 「サーカス面白い! パンうめえ!」
属州民や農民 「ローマは鬼畜生だ……人間じゃない……」
奴隷 「鬱だ……死のう……」
※ ちなみに外国人はアウトローなので、通常はカースト外に位置する
〇やっとこカエサル登場
まあ先にマリウスとスッラです。
ローママルチに陰りが見えて、ローマの軍団兵が弱体化してしまいました。
だって志願してローマ市民になっても、それほど美味しくないんだもの!
また愚民政策の結果、市民の財力も低下して兵役が無理だったり、装備も揃えられなかったり。
というわけでマリウスさんは市民の義務である兵役を止め、志願制へと切り替え、武具なども国で用意、兵士にも給料を保証することに。
これにより職を持つ市民は仕事を継続でき、職のない市民は就職先を得ます。
さらに組織改革もして――
と、まあローマ軍を近代化した人です。
一番に注目するべきは、司令官へ権力の集中でしょうか?
マリウスは当然に司令官だし、その副官で後年争うことになったスッラも司令官、その甥であるカエサルも司令官、初代ローマ皇帝アウグストゥスもカエサルの軍閥を引き継ぎました。
まあ、ようするに――
軍部の暴走を止めるシステム皆無
で――
彼らは外国を平定したついでに、元老院の重鎮たちと殴り合える財力をも築いた
といえるでしょう。
つまりは「来た、見た、勝った、儲かった」?(苦笑)
なによりも兵士たちが司令官へ忠誠を感じてしまっているのが拙いです。元老院の人達は武力を持っていませんし。
ちなみに西暦14年に市民の投票権を制限したのはスッラだったりします。また、彼は小麦法も廃止したとか。
とりあえずカエサルの辺りは有名なので割愛します。
〇あまり黄金時代は続いていない
ローマ最大の版図はトラヤヌス帝(在位:98年~117年)の治世で現出されました。
帝政へ移行して、まだ140年といったところです。
これは逆にいうと――
この後のローマは版図が縮む一方、つまりは滅亡が始まる
訳です。
ちなみに軍人皇帝時代(235~284)という区分があり、この時期は各地で皇帝が乱立する内乱期。
その後は内乱が納まるも引き換えにローマは東西へ分裂、さらにはゲルマン民族の大移動が開始と――
まあ、いいことなんて一つもありません。
〇マルチの終焉
またスッラの政策は地味にローママルチを終わらせています。
軍は改革されたので問題ありませんが、奴隷のモチベーションは上がらなくなったからです。
そして追い打ち気味に――
ローマは戦争に勝って奴隷を集め、その労働力で栄える国
だったのに、戦争で勝てなくなりました。
すでに述べたようにトラヤヌス帝で最大版図ということは――
それ以降は勝てなかったので、新規の奴隷を確保できなかった
ということです。
荘園各地は深刻な労働力不足へ陥ったのに、奴隷は減る一方。そこでノビレス達はコロヌスと称する身分を作ります。
これは小作人と訳されますが――
・一応は自由人
・しかし、住居移動と職業選択の自由はない
・婚姻の自由はある。ただし、同じコロヌスとだけ
・土地の所有者へ小作料を支払う義務がある
・当然、国へも人頭税などを
・土地とセットで売り買いされる
・この身分は世襲
・身分を変更するシステムは無い
ので奴隷よりはマシ、それまでの自由農民よりは酷い扱いでしょうか?
……日本でいうところのお百姓さんに相当?
ただ、これへ解放奴隷やら自由農民、属州民などを半強制的に割り当てたので――
奴隷へ戻すのと何が違う? 奴隷解放とは……うごごご……
と首を捻らざるを得ません。
しかし、なぞだった古代から続いた奴隷の結末も、一応の答えは得ることができました。
彼らは当時の小作農民と合流し、コロヌスとして土地に縛られたのです。
〇もう一つのマルチ終焉
西暦212年にカラカラ帝は、帝国内の全自由民にローマ市民権を与えました。
これには税収目的やら色々とあったのですが――
本格的にローマ市民である意味がなくなりました!
特権というのは少数派へ与えられるから意味があります。
つまり、それまでの特権享受者を失望させ、ローマ市民を目指していた層はやる気をなくしと……
何一つ良いことがありませんでした(苦笑)
直後の軍人皇帝時代――大内乱時代&東西分裂の引き金とすら。
しかし、すでにローママルチは破綻していたのであり――
暴君が幕引き役を引き受けてくれたのは僥倖
とすら思えなくも?
とにかく兵役からローマ市民になる意味はなくなり、奴隷は解放されてもコロヌスにさせられます。
つまり――
ノビレス以外は楽しくとも何ともない国となりました。
・大雑把なカースト その5
皇帝・王 古代帝国期の終焉。中世の始まり
……皇帝の出現が古代帝国期の終わりを意味するのは皮肉
《要血筋。時代が進むにしたがって、上へは進入禁止に》
貴族 元ノビレスやローマ被支配国の元王族やら有力者、各部族の長
《要血筋。時代が進むにしたがって、上へは進入禁止に》
家臣 騎士階級は貴族分類の国も。
後年に成立する一代貴族など、平民でも貰える称号を含む
日本おける『名字帯刀を許される』に相当?
都市の住人 貴族でもなくコロヌスでもない人
一応、ここへランクアップする方法は用意されている
その家族等 女性が近世まで一段下だったのは世界共通
自由農民 国によっては存在しない
なによりも土地の所有者なので、セット売られることがない
《高くて険しい崖。下へは落ちれるも這い上がるは至難》
属州民や農民 「やめろ! 俺は奴隷じゃない! うばぁー」
↓
コロヌス 徐々に自由を制限していった
↑
奴隷 「えっ? 解放してくれるんですか? やったぁ!」
――
ローマ市民 「サーカス面白い! パンうめえ!」
……もはや階級とは言い難い。ローマ(都市)に住んでる特殊な人
※ 外国人はアウトローなので、通常はカースト外
〇そして農奴へ
土地へ縛り付けられたコロヌス達は、さらなる権利制限や義務を課され、歴史に悪名高い『農奴』と呼ばれる身分に!
が、しかし、軽く調べただけで――
これ、当時の人達は農奴という言葉を使ってないんじゃない?
なんて疑問に思わなくも。
確かにコロヌスへの支配は強められたんですが、農奴とコロヌスに劇的な差を見出すことができません。
つまり、ここからここまではコロヌスで、ここから先は農奴というような区分は難しいです。
また、農奴になって追加された制限や義務は――
・賦役
・徴兵
で、労働という形での納税、さらには強制的で拒否権のない徴兵ですが――
ますます日本のお百姓さんじみて!?
というか労働という形での納税とか、アジアでは普通のことだけど!?
日本でも大和朝廷が成立した頃には、すでにあったような?
また、少し意味不明な不平に聞こえなくも? 賦役に文句を言ってますが――
それ、いままでは奴隷がやってた仕事ですから!
奴隷制を止めれば、誰かがやらなきゃいけないだけの話でしょう?
ありとあらゆる労働を分業制にできるほど、中世初期は洗練されていませんし!
(もちろん、支配者階級は負担しないので不公平とは考えられるし、その方向であれば正しい意見だと思う)
そして徴兵もですが――
従軍雑用係を奴隷がやっていたのだから、これからは誰かがやらなきゃいけない
のと――
全世界的に、人手不足になるほど戦争が拡大し、発展もしてしまった
のも勘定に入れる必要があります。
さらに――
ローマ帝国は強すぎて、逆説的に戦争が少なかった――つまりは兵の総数を抑えられた
可能性すらあります。
しかし、ローマ崩壊とともにヨーロッパは大戦乱の時代へ突入するわけで……どの勢力も生き残りで必死に。
同義的に筋違いである徴用だろうと、手段を選んではいられないと思われます。
※
支配者階級は庶民の守護者という建前で君臨しているので、その権力闘争に駆り出したり、本業である防衛任務を手伝わせるのは筋が通らない。
〇農奴問題よりも中世ヨーロッパ特有な税金地獄の方が大問題
この農奴制ですが、面白いことにフランスなどでは――
特に何もしないで解決された
と考える学者さんが!?
え? 身分制度なんでしょ? どうして自然解決しちゃうの?
もはや謎でしかありませんが――
・ペスト禍による人口減少で、一時期は人民を縛り付ける余裕すらなくなった
・貨幣経済の発達により、ほぼ全ての税金が現金で支払われるように
・生産力が上がり、自由農民化が進んだ
・近世の徴兵制度が始まり、区別なく徴兵されるように
・各種革命の時に、農奴解放されるケースもあり
と、解決した証拠や理由?は少なくない模様。
もはや公式に使われた言葉なのかすら疑わしいですが、国家として農奴解放を宣言している場合――ロシアやオーストリア、プロイセンなど――もあるので、確実に存在はしていたようです。
……こうなると農奴制という不明瞭な観点より、コロヌス達へ課された各種税金に注目した方が、まだ正しく把握できるような?
・人頭税 基本的な税金。俗にいう生きてる税
・地代 土地を使わせてくれて、ありがとう的な税金。今日の所得税に相当
・十分の一税 せっかくローマ属州じゃなくなったのに、こんどは教会へ
・結婚税 婚姻の自由はあるが、税金は支払うように。初夜権へ発展も
・死亡税 財産所有を認めるが、死亡時には超高額相続税を払え
・臨時徴税 アイデアが尽きた? まあ、色々と理由をこじつける必要あり
・賦役 領主へ身体で支払う(意味浅) 後年、現金で免除
・徴兵 いわれたら戦争へ参加する義務
……うん、ヨーロッパ貴族やりすぎ(苦笑)
わりと有名ぽいのに存在はしないのが戦争税でしょうか?
事実関係的に俗称として呼ばれるだけで、臨時徴税を指す模様。
そして支配者の人格にも大きく左右されそうです。
例えば結婚税などは領主&地域の司祭が人格者だと、存在しないものにされたとか。
当然、臨時徴税も我慢できる領主の方が多かったはずです(常に代償が必要で、領主側も失うものが多い方法だった。例……賦役を免除するから現金入れろ等)
どんな国でも回避しようのない人頭税と地代、十分の一税、賦役ぐらいなら、標準的とすらいえた可能性も?
死亡税も税率次第に思われますし?
しかし、盲目的にルールへ従ったり……やる気満々、満額ゲットを目指すタイプだと地獄ではあったでしょう。
良くも悪くも個人の人格に左右される時代と言えそうです。
話を戻すとフランスなどは――
・ペスト禍が酷かったので、階級の垣根を超えた同胞意識が生まれた
・辛うじて生産性向上が進み、農奴が経済力を獲得できた
・革命などの影響も最初に享受できた
のが大きいと思われます。
逆に、どの恩恵も被れないドイツ・ロシア方向で農奴制が問題視された?
また農奴問題末期に、みんな大好き『ノーフォーク農業』が導入されますが、あれは大規模農場化が必須なので――
ほぼ全ての国で大問題が発生しています!
なんといっても資本家・大農場主と貧困小作の図式ができちゃいましたから。
ロシアの農奴解放には、その辺の事情が加味されている気も?
(農奴解放で、逆に酷いことを。続く革命の一因となった模様)
〇とりあえず首輪自慢を
なんといっても一番は自由農民でしょう。
これは国よって細かな違いがありますけど、基本的に租税と人頭税だけ払っていればよい身分です。
……まあ、地理的に孤立しがちなので「自分の身は自分で守る」必要はありますが。
次がコロヌスです。
日本のお百姓さんと違って、賦役と徴兵なしが大きい!
はっきりいって開始当時の権利が維持され、発展的に文明化していくのなら文句なし!
なんといっても古代から中世という時代で、多くを望むのは厳しいです。ベストよりベターな及第点でしょうか?
……まあ、実際には立場を維持できませんでしたが。
そして我らがお百姓さん(土地持ち)。
意外と楽をしていたと、別の考察で述べましたし……今回の調査で、世界平均的に人権を認められていた方とも判明!
またコロヌスより土地に対する権利が強いので、この上下関係は悩みました。
……ただ賦役は日常のこと。さらに徴兵はクリティカルなことと考えて、こちらを下に。
引き続き日本のお百姓さん(小作)を。
正直いって農奴とドングリの背比べですが、可能かどうかは置いておいて「土地持ちへ階層を上がれる」を重視しました。
……ほぼ無理なんですけどね。まあ阻害するルールはないということで。
やっとこ農奴です。
意外と下かな?
お百姓さん(小作)と同等にも思えますが、なによりも脱出手段がないのが最悪でしょう。
そう考えると酷いシステムではあります。
時代的にしょうがないレベルより、やはり下の生活。ほぼ絶望的に不可能なカースト移動。支配者の人格に左右されすぎる実情……問題点は山積みかと。
それでも平均すれば、庶民と呼べなくもないはずです。
極め付きに劣悪な環境の農奴は、やはり少なかったと思われます(本当に最悪な場合、逃げるという手段が残されていたため)
次が奴隷となります。
大事にされたといったところで、この程度。結局のところ家畜も同然でしょう。
……「ローマの奴隷は良い奴隷。中世の農奴は人でなしの政策」が一般的なのはおかしかったりも?
そして黒人奴隷でしょうか?
鉱山奴隷なども、ここへ分類です。
主人側に使い切るつもりがあると、生き延びることすら困難に。
……とにかく擁護のしようが全くありません。
さらに下がインドなどの……永続的なカーストとして成立させた場合になります。
ただ、今回の調査で「またブリカス君か! ほんと……近世の君達は邪悪過ぎて……」となりました(どうにもイギリスが悪化する様に介入した模様)
なのでインドは参考で!
……創作などに散見できる『奴隷族』的に社会へ組み込むのが究極でしょうか?
黒人奴隷問題は酷いの一言ですが、奴隷族として社会へ組み込む寸前で止めましたし?
……となるとアパルトヘイトは、とことんやっちまった例?
横へ並べると――
自由農民 > コロヌス ≧ 土地持ちのお百姓さん > 恵まれた農奴
> 小作のお百姓さん ≧ 農奴 > 奴隷 > 黒人奴隷 > 奴隷族
でしょうか?
……うん、けっこう農奴は厳しいかも。領主が善良で、やっとお百姓さんレベルは大変すぎるでしょう。
〇何度でも指摘を
しかし、酷いは酷いですが……奴隷よりマシだったのは確実ですし、それなりに人生を謳歌していたのも事実です。
(中世の労働時間などを見ると、やはり産業革命期の半分以下です。税はともかく、人を酷使するには限界が!)
また――
「当時の貴族階級ガー! 資本家ガー! とにかく我々や平民は可哀そうデー!」
的な意見を持つ方の経歴を調べると――
「あっ……(察し)」
となりがちなのも事実です。
もう謎で仕方がないんですが……どうして根拠のない感情論で主張する一派は止めないのでしょう?
数字を調べれば、不正は判明してしまうのに?
……また各国の農奴解放に――
マルクス世代の人が関わっていることも無視できません!
基礎となる考えを築いた人や、同時期で仲間として活動した人、その後に共産社会を目指して活躍した人が、です! ……もちろん、レーニンとかも!
………………なるほどねぇ(納得するしかない)
色々な立場の人が、色々な理由で……敵対陣営を下げることがあります。
もちろん褒められることではありません。
自らが正しいと思うのであれば中傷誹謗によってではなく、その言論の正しさを以て示すべきでしょう。
後先を考えない活動によって学問の進歩が停滞したり、事実が誤認されたりも珍しくありません。
結果、誰も得をしないのです。
◎まとめ
◇結局、ローマ市民とはなんだ?
1、そもそもはギリシア都市国家群にいた市民と同義。つまりは支配者階級
2、レギオン――ローマ軍団の構成員
3、紀元前一世紀頃、その権勢は頂点に。ローマ在住なら働く必要すらない
4、紀元後、事実上の主権を失う(黄金時代は100年あるかないか)
5、ローマ在住なら皇帝からプレゼントを貰える人
6、カラカラ帝の時代から、ローマ帝国民全員を指す言葉
∴ 時代と来歴による(苦笑)
◇奴隷はどうなった?
・コロヌスを経て農奴になった
・農奴は自然解消されたり、革命で農奴解放(日本の農地改革に相当)されたり
◇ローマの奴隷は良い奴隷?
・そんな訳がない
・ローマ(都市)の奴隷ならともかく、地方の奴隷は解放される理由なし
・さらに鉱山奴隷などは使い潰し前提
・大事にはされたが、あくまでも家財や家畜を大事にする程度の意味
※ お願い
今回はマジで鵜呑み厳禁!
流れを最優先で追ったので、細部は不明なまま進んでいます。作者的には最初の一歩でしょうか?
すでに現時点で不明だったり、疑わしかったりする部分が多いです(特に各制度の細部や数字は厳しい)
ですから、あくまでも読み物程度……もうフィクション程度に考えないと駄目です。