虹 (短編ノンフィクション小説)
天空の虹はシャングリ・ラへの門なり。
01
これは私が4~5歳の頃の出来事であっただろうか。
02
空の遠くに、それはそれはもう、とてもとっても綺麗な虹の橋が浮かんでキラめいていた。
当時幼い私は、
「あの虹の下には何か遊園地が、楽園でもあるに違いない。
あの虹に触ればきっと、何かが起こるかも知れない。
あの虹に触りたい!! 」
と、想像力をおおいにふくらませて大きな期待を抱きつつ、とにかくとにかくその虹の下へと向かって走って行った。
03
・・・・・・しかしいくら虹を追いかけても追いかけても一向に、その虹の下へと近づく事は出来なかった。
4~5歳の私である。
せいぜい数百メートルの距離を走った程度であるが、やがてその虹はいつの間にか消えてしまった・・・・・・。
04
私は泣いた。
とても悲しかった。
「あの、すごい綺麗な虹に触れば何かが変わるに違いない。
あの虹の下に行けば、あの虹をくぐれば、とんでもなくすごい事が起こるに違いない。」
その私の淡い想いは虹とともに消えた。
私の目から、虹の雫がポタリと落ちた・・・・・・。
05
今も私は幼い頃に見たあの光景を時々、ふと思い返す。
「あの虹の下にはきっと、理想郷があったのだ。」と。
私はあの時、美しいものを美しいと思う心を手に入れたのだ。
そう。きっと。
幼き頃の夢現は美化へと昇華せりけり。
【終】
☆おまけ☆
2016年1月26日
私は夢を見た。
その夢の中では、今年のアカデミー賞の出席のボイコットを表明した、黒人のハリウッド映画監督の、『スパイク・リー』が私に言った。
何故だか日本語だった・・・・・・。
「俺、明治台に住んでいるんだぜ。」
「へえ~。明治台ってどこにあるの? 」
「う~ん。
明治台っていう名前は美しいが、大正台っていう名前はそうでもないなあ。」
「だからその明治台って、どこにあるの? 」
「昭和台や、平成台なら、なかなかよい名前だなあ。」
「・・・・・・・・・・・・。」
この奇妙な会話の夢はここで終わった。
一体、なんの意味がある夢だったのだろうか?
言葉には・文字には・名前には・形には・韻には・音には・イントネーションには美しいものと、そうでもないものがあると教えてくれたのであろうか。
スパイク・リー監督。
私は、あなたの事は知らないが、どうもありがどう。
【終】
☆あとがき☆
何も知識・固定観念の無い子供にとって『虹』とは、何か宝石か、神々しいものだったのかも知れませんね☆