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嘘だと言ってくれ

作者: ヤナ

今日は友達にも騙された。


春休みで、今日は特に予定もなく、俺は目覚ましをセットしてなかった。

着信アラームに起こされて、寝ぼけながらもメールを確認した。


To 新田 優

From 清水 達也

ーーー朝練来ないのか?


慌てたね。見てた夢の内容が吹っ飛ぶくらい。

その時俺はレギュラーに選ばれたばっかりで、サボりなんかですぐ降ろされたらどうしよう、って本気<マジ>で焦った。

とりあえずジャージ着て、荷物を突っ込んだカバンをもって家を出たんだ。

愛犬|(名前はココアだ)の散歩は妹に頼んだ。

俺は自転車通学してる。バスでもいけるけど、それは雨の時だけだな。

家にあった菓子パンを齧りつつ、高校にむかった。

高校に近づくと、なんかおかしい。掛け声がしない。

グランドに人もいなくて、その時には気が付くべきだった。



今日が|4月1日<エイプリルフール>だということに。



部室前にあいつらはいた。ニヤニヤとムカつく笑顔だったな。ちくしょう。

朝練はウソ。そのあとはひとしきり俺をからかったあと、昼前までキャッチボール。顔や股間を狙ったけど、俺の球速とコントロールじゃ無理だった。

騙し返してやりたいが、こういうのってすぐに嘘ってバレる。だから昼まで待った。


昼は牛丼チェーン店だった。メンバーは俺と俺を騙した神田、清水、米倉の4人だ。

俺は今朝のメールの話題から、清水のスマホ奪取に成功。

メール確認の振りをして、目的の本文を打ち込む。

送信直前にスマホを米倉に渡し、共犯をそそのかす。

米倉の顔から清水が察したのか、スマホを取り返すが、もう遅い。

俺はこう書いた。


To 清水 達也

From 熱田 梨愛

ーーー別れよう。


清水は今日から中学一年生になる彼女がいる。俺の妹と同い年だ。

付き合いはじめた当時から清水のあだ名はタ○チになっている。清水の下の名前と、野球部なのと、|子どもを大事に≪Yes!Lolita≫な標語が語源だ。


正直やり過ぎたと後になって思う。すまんかった。でもやってやった感で大満足だ。



これだけで終わればまだ良かったんだ。



夕方、愛犬ココアと散歩中だった。

最近ココアは調子が良くない。食欲不振で、いつもの量を食べない。

散歩は素直にしっぽ振ってじゃれついてくる。かわいいやつだ。

すれ違うご近所さんと挨拶しながら、桜の咲いた川沿いを歩く。最近ウォーキングの人が増えた気がするな、などと考えていたときーーー


ーーーココアが吐いた。


「うぇあ!?」って変な声が出た。

どうしていいかわからないし、オロオロしてたんだと思う。周りの散歩してた人が声をかけてくれて、そのうちの1人が動物病院にまで送ってくれた。大きな病気じゃないといいんだが・・・。


「妊娠ですね」


「えっ」


|お前≪ココア≫いつの間に・・・?



一応フォローすると、両親の伝え忘れだったらしい。知り合いのブリーダーに頼まれたんだと。


今日1番騙された気分だよ!

この作品はフィクションです。

実際に友達を騙すと、友情に亀裂が入る可能性があります。ご理解のうえ、節度を持った行動をお願いします。

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