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偶然の再会④

 女の子と一緒にいた。それも、かなりモテそうな、可愛らしい顔を持った女の子だ。ここら辺じゃ見ないような顔。

 ん? というか、かなり若くないか? どう見ても私たちと同年代には見えない。中学生? だとしたら、なんで悠介くんは女子中学生と二人っきりで……あっ、親戚の子なのかな? うん、きっとそうだ。そうじゃなく、もし恋人なんて関係だったら、犯罪だもんね。悠介くんは犯罪を犯す人なんかじゃない。正義の心を持った、優しい人だから。

 私が何故、こうも悠介くんに肩入れするかというと、それを説明するには、少々時間を遡った話をしなければならない。あれは今から何年前だろうか。私と悠介くんがまだ小学校にも入学していない、保育園児だった頃の話だ。

 その頃、私と悠介くんは二人っきりでよく遊んでいた。今の私からは想像出来ないが、当時はアウトドア派で、家でゲームやお人形遊びするよりも、悠介くんと外で探検ごっこのような事ばかりしていた。

 悠介くんとよく遊んではいたが、その時はまだ好きでもなんでもなく、ただ家が近所で仲のいい友達という認識だった。


「アンナちゃん、次はあっち行ってみようよ」


「でも、ここら辺来たことないけど大丈夫なの?」


「僕がついてるから大丈夫だよ?」


「そっかぁ、じゃあ行こう!」


 ある日のことだ。私たちはいつものように、外で探検ごっこをしていた。

 悠介くんはそこら辺に落ちていた変な棒を持って、見えない敵に気づかれないよう、周りを警戒しながら前へ前へと進んでいた。いや、もしかしたらあの頃の男の子には、見えない敵が見えていたのかもしれない。

 私はというと、そんな敵はもちろん見えてなく、只々悠介くんの後を付いていくだけだった。子犬のように付いていくだけだった。

 しばらく経って。


「あの、悠介くん……そろそろ戻らない? おうちから遠くなっちゃったし、帰れなくなっちゃうかも……」


 辺りを見れば、大自然に囲まれていた。建築物なんて見当たらないし、もう山に入りそうな勢いだ。


「そうだね、そろそろ帰ろう――えっ」


 悠介くんは私の方へ振り向くと急に言葉を失った。

 嫌な予感。

 悠介くんは持っていた棒を落としてしまう。

 振り向きたくない。私の後ろには何かがいる。だけど、ゆっくりと、恐怖を感じながら、振り向いてしまう。

 犬がいた。

 一匹の犬だ。首輪を付けていた。だけど体中が傷だらけで、毛がとても汚れてしまっている。きっと、捨てられた犬なんだろう。その姿を見た私は、恐怖で号泣してしまった。

 たかが犬、と思うかもしれないが、その犬は大型犬で、それも当時は保育園児。自分の体より遥かに大きい生物に恐怖を感じずにはいられなかった。それは悠介くんも同じのはずなんだ。だけど――


「ア、アンナちゃん、僕の後ろへゆっくり、走っちゃダメで、落ち着いて、大丈夫だから!」


 必死に恐怖を押し殺したのだろう。その幼い声は震えていた。

 私は悠介くんの言う通りに、犬からゆっくりと遠ざかり、悠介くんの背後にまわった。

 悠介くんは落ちた棒を拾い、犬と対峙していた――所までで私の記憶が飛んでしまっている。

 わかっているのは、その後私たちは手を繋ぎながら、逃げ出すことに成功し、安全な場所で抱き合って、泣きあったという事だ。私には怪我はなかったが、悠介くんには所々傷跡があったのを覚えている。もしかしたら、戦っていたのかもしれない。私を守るために。

 この時からだ、私が悠介くんの事を気になりだしたのは。嫌な知識を付けていない、純粋に純粋な心で、世界の中心は自分だと誰もが思っている幼少時代、そんな中自分を顧みず私を守ってくれた悠介くんに、私は心底惚れてしまっていた。

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