偶然の再会③
淡い思い出を語ってしまったが、亜希はドリア、私は和風ハンバーグを食べることにした。亜希は開いたメニューをパタンと閉じ、テーブルの端に置きながら私の方を見て突然聞いてくる。
「そういえばさ、アンナって今彼氏いんの?」
「へぇ? いや、今はいないなあ」
『今は』なんて、さも昔はいたような言い草をしてしまう。今まで彼氏が出来たことがないなんて知られたら、なんというか、恥ずかしいというか、とにかくこの事実は悟られたくはないのだ。
「意外だなあ。アンナみたいな可愛い顔してれば男なんてすぐ寄ってくるでしょ。あっ、もしかして片思い中とか?」
「片思い……」
片思い――なのかな。もう何年も話していない、いや、数年会ってすらいない相手の事を想う気持ちは片思いなのか。わからない。この気持ちが好きって感情なのかもわからない。ただ、綺麗な思い出に浸っているだけなのかもしれない。
「あれ? もしかして当たり? いいじゃん片思い。――あっ、片思いといえば、アンナって昔ずっと誰かに片思いしてたよね? あれ誰だっけ?」
その誰というのは悠介くんの事で、現在進行形の片思い? も悠介くんの事なのだけれど、それは言わないでおこう。初恋の相手を今でも引きずっているなんて知られたら、さすがの亜希でも引いてしまうかもしれない。それは、嫌だ。
「私なんかのことよりさ、亜希はどうなの? やっぱ彼氏いるの?」
――そんな毒にも薬にもならない会話をしていたら、時間はあっという間に過ぎていった。ちょうど昼時になりお客さんの数もいつの間にか増えていた。私たちはご飯を食べ終え、そろそろ外に出ようかと考えていた。そして、ふと出入り口の方へ目をやる。
その時、私は自分の目を疑った。思わず漫画みたいに目をこすり、再度確認すると、それが見間違いではないことを知る。
そこには確かにいた。かつて自分が好きになった人物が。いや、かつてなんて事はない。今も好きな、私の初恋であり、まだ終わっていない恋。
私の好きな霧夜悠介くんが、私の知らない女の子と一緒に、いた。