デート⑧
その後僕たちは、当初の目的であったファミレスへと無事たどり着いた。アイツ等の処理はというと、何もしていない。放置だ。
ガクガク震えながら、ブツブツ意味不明な事をつぶやき続け、失禁をしている男三人、それを見た歩行者たちに写メを撮られているのかもしれない。そして、その写メをネット上に晒されてしまっているのかもしれない。だけど、そんな事僕には関係ない。可哀想とも思わない。死神を相手にしたのが悪い。ただそれだけだ。
「ふぅ、お腹すきましたね」
昼時というのもあって店は少し混んでいた。十分ほどレジ前に用意されている椅子に座って待ち、店員に呼ばれ、二人用のテーブルへと案内された。僕とヘルコが対面している形なので、少し恥ずかしい。こうやって女の子と二人っきりで食事するのも初めての経験だ。
「儂ハンバーグがいい!!!!!!」
ビックリした。いきなり大声だして何言っているんだこの子は。他の客が一斉に僕たちの方へと注目した。ヘルコの顔を見やると、目をキラキラさせて、メニューに載っているハンバーグの写真を必死に指で差している。どうやらハンバーグが好きらしい。死神がハンバーグ好きなんて初めて聞いた。
「わかった、わかりましたから、少し落ち着いて」
僕がこう言うと、ヘルコはコクリと頷いて静かになった。物分りがいい子で助かる。と言っても、僕より年上らしいのだが。
「じゃあ、僕はこれにしようかな」
少し悩んで、僕もハンバーグにする事にした。ハンバーグはハンバーグでも中にチーズが入っているハンバーグだ。ヘルコのは、和風ハンバーグなので種類が違う。
「悠介くん! これ! このボタン押すよ!? いいよね!?」
「ど、どうぞ」
「ポチッとな――なんちゃって」
なんだ、なんかこの店に入ってから、ヘルコのテンションがおかしいぞ。まるで、小学校低学年みたいなはしゃぎっぷりだ。可愛いなちくしょう。
「ご注文はお決まりでしょうか」
ヘルコがボタンを押してから、ほんの数秒で店員さんがやってきた。ヘルコは先ほどと同じように、メニューを指差し、これお願いします! と、自らオーダーした。この子店員さんには敬語使うんだな……ヘルコの後に僕も自分でオーダーし、注文は終わった。ジュースはいらないようなので、お互い水で喉を潤すことにした。ジュース代もバカにはならないので助かった。
「それにしても、さっきはごめんなさい。僕の昔の知り合いが」
「え? 誰のこと?」
「ん? ほらさっき、ヘルコを連れ去ろうとした三人組の……」
「?」
「え?」
え? ちょっと、え? 忘れてる? マジで忘れてる? マジか。この死神マジか。あ、興味ない事はすぐ忘れるのかな? いや、それにしても早すぎだろ。
「そんな事よりハンバーグまだかなぁー早くこいーハンバーグぅ」
ヘルコは子供のように、足をぶらつかせ、ハンバーグを今か今かと待っている。ったく――
可愛いなちくしょう。