2014年 尾道新体制発表記者会見
1月18日、尾道市内のホテルでJ2ジェミルダート尾道の新体制発表会見が行われた。長らくチームを率いてきた水沢監督は昨シーズン限りで勇退し、正岡新監督を迎えてのシーズンとなる。また、同時に新ユニフォームとスローガンも発表された。
新ユニフォームのモデルとして登場したのは今シーズンから背番号10を担う亀井智広とストライカー荒川秀吉、そして若き守護神宇佐野竜である。まず、ファーストユニフォームは赤と緑のストライプとなった。パンツは紺色でソックスは上部が緑、グラデーションを経て下部が赤となっている。セカンドユニフォームは上下ともに白を基調として、袖の部分は右が赤、左が緑という左右非対称のデザインとなっている。GKユニフォームは黒を基調とした精悍なデザイン。
新ユニフォームについて、ファーストユニフォームを着て登場した荒川は「色使いもそれまでより濃くなってシックな感じですね。これを歓喜のユニフォームとするべく頑張りたい」と決意を新たにした。セカンドユニフォーム着用の亀井は「シンプルなデザインになったなという印象。それに今までより軽くなった感じで動きやすそうですね」と機能面の充実にも触れた。
また、新スローガンは「邁新」に決定した。その心は、無論「邁進」が第一義で、J1へ向かって突き進むという意気込みを表しているのだが、その他にも「MY新」、つまり自己新記録、もっと具体的に言うと選手それぞれが全力を尽くして今まで以上の力を発揮すればチームとしての過去最高順位である7位を超えてJ1へという意味もあるらしい。ロゴマークの横には「J1へ」と、ちょうど「J1」を両足に「へ」を山道に見立てたデザインで描かれている。
続いて正岡新監督とホセコーチ、そして新入団選手8人が入場してきた。GK1人、DF3人、MF2人、FW2人と、どのポジションにもまんべんなく加わっているのが特徴である。まず正岡新監督は今シーズンの目標について「6位以内ではなく自動昇格圏内の1位2位を狙う」と断言。その上で「今日ここに集まった選手たちはそれを可能にする精鋭ばかり。今までの尾道に足りなかった部分はどこかを外から見てきたが、林GMにもよく理解していただきいい補強をしてもらった」と自信を見せた。
また、目指すサッカーの方向性に関して「攻撃と守備、どちらが好きかと問われると間違いなく攻撃です。無論守備は大事ですが結局ディフェンスもゴールを奪うというサッカー最大の目的につなげるものでなければならない」と攻撃重視を明言した。その上で「チームとしては全員がアグレッシブに動く必要がある。当然そのためのトレーニングは抜かりなく行うつもりだし、新任の利点を活かしてフラットな視点で選手を見て一番いい動きをした選手を使いたい。今までレギュラーだったからというのは関係のない話」とサバイバル突入を宣言した。
次いで分析担当のホセコーチは「このような場で言うのもどうかと思ったのですが」と流暢な日本語で前置きしつつ宇佐野、橋本、御野ら主力選手の癖や弱点を次々と暴露。その上で「この程度の情報は今やどこのクラブも握っているし、本人にも伝えている。当然改善しなければお話にならない。このような情報を元に最適解を導き出すのが私の仕事」と語った。そして選手の会見に移った。
「GKはミスの許されないポジションですから。チームに安心感を加える選手である必要がある」
C大阪より加入したGK蔵侍郎はこう力を込めた。尾道は昨年、ユース出身の若き生え抜き宇佐野がほとんどの試合でゴールマウスを守った。一昨年までの正GKであったベテランの玄馬は昨シーズン途中に香川へ移籍し、今シーズンは完全移籍となった。もはや磐石にさえ思える宇佐野体制。しかしそれに異議申し立てできる力を持っているのがこの蔵である。
宇佐野の特徴は積極的な飛び出しと抜群の瞬発力から繰り出される驚異的なセービングである。その反面、前に飛び出しすぎて相手FWにかわされてゴールを決められたり、簡単なシュートを弾いてしまい不要な失点を招くなど若さゆえのミスも散見された。また、ゴールキックの精度もそれほど高くなかったのも課題として残った。蔵の長所はまさに宇佐野の弱点である安定感とキックの精度にある。背番号1をもらった事からもその期待値の高さがうかがえるもので、宇佐野との激しいポジション争いが展開されるだろう。
「まさかこんないい背番号をもらえるとは思わなかったので最初はびっくりしましたが、それだけ期待されてるってのはありがたいですね」
関西体育大学から新加入となる布施健吾は不敵な笑みを浮かべた。背番号4というディフェンスの中心選手に授けられる番号をルーキーにして背負う事となったが、その期待に添えるだけのポテンシャルを秘めたDFである。
今では趣味となっている筋トレにはまったのは高校三年生の時だと言う。その年から新たに就任した山下竜介監督の方針によるものであったが「計画を立ててそれをきっちりこなす事に喜びを覚えるタイプ」という布施は自らを鍛え上げる事の虜となった。元々は細身のサイドアタッカーだったが今ではプロのセンターバックと並べても遜色ない肉体を身につけた。モンテーロの抜けた尾道ディフェンス陣に殴り込みをかける。
「正岡監督は大学でも教わったので考え方は分かっています」
京極大より新加入の河口安世は淡々とこう述べた。背番号は11に決まった時どう思ったかを聞かれても「これも大学の時と同じだったし、そう言う意味ではやりやすいですね。もちろん立場は変わるので、期待されたからには応えないといけませんがね」とあくまでクール。それは彼のプレースタイルにも通じている。
大学時代、関西最高のテクニシャンと呼ばれていたようにその技術は極めて懐が深く、特にボールキープやポストプレーに関しては既にプロレベルに達している。野口の抜けたFWになるのか、あるいはそのテクニックを中盤で発揮するかはこれからの見極めとなるだろう。会見中は常にシャープな雰囲気だったが会見終了後にちらりと見せた笑顔は人懐っこく、彼の人間性を垣間見た気がした。
「右足は僕の生命線なのはあの頃から変わっていません。退団してからもずっと磨き続けてきました」
2009年以来の尾道復帰となる川崎圭二は「自分のセールスポイントは?」という質問に対して間髪いれずに「右足のキック」と答え、上記のように続けた。水戸ではボランチ、福岡では右のサイドハーフとしての起用が多かった川崎だが、そのプレーの本質は彼の自負の通り右足から繰り出されるボールコントロールの正確さにある。
尾道のJ2一年目である2008年、高い技術を買われて当時の小松田監督に抜擢された川崎だが水沢監督就任後は怪我もあってチャンスなく退団となった。それだけに「正直やり残したという思いはずっとあったので、再びチャンスを与えてくれた事を嬉しく思います」という言葉にも力がこもる。背番号は15に決まった。
「自分を成長させるために尾道に来たんですから、とにかく結果を残したいですね」
和歌山から移籍加入の結木千裕の口から発される言葉には力がみなぎっていた。昨シーズン、和歌山では17試合に出場した。チームはJ1昇格となったが「今の自分の力だと上では通用しない」とあえて移籍を志願。複数のクラブから誘いがあったものの最終的には尾道への移籍を選択した。
和歌山時代はMF登録だったが尾道ではDF登録。抜群のテクニックから繰り出されるクロスの精度は高く、昨シーズンの尾道がどうしても固定しきれなかった右サイドバックとしてはうってつけの人材と言える。「去年はチームメイトに引っ張られただけだった。尾道では自分がチームの中心となって引っ張って行けるようになりたい」と気合十分。背番号は10番に変更した亀井の後を継ぐ17に決まった。
「FWなんでずっとゴール数にはこだわってきたし、尾道でもそこはこだわっていきたい」
トレードマークであった髭をさっぱり剃り落として意気込みを見せた森本剛。高い身体能力から大学ナンバーワンストライカーの称号を欲しいままにしてきた実力派だがプロではチーム内での争いに飲み込まれてその得点能力をフルに発揮できずにいた。
身体能力は折り紙つきである。ジュニアユース時代はその俊敏な反射神経を生かしてPK専用のGKとして起用されることもあったと言う。その後怪我もあり一時的に低迷したが大学では見事に復活。そしてプロではここまで苦しんでいるが決して諦めないメンタルも持っている。「尾道が最後のチャンスという気持ちでやる」と言い切る。背番号は18に決まった。
「チームに何のトラブルもなければ僕がピッチに立ってる事はないでしょうね」
昨年までタイのクラブに在籍していた鈴木美春は飄々とした笑みを浮かべつつこのように語った。早くも戦力外宣言か。しかし続けてこう言い切った。「でもチームに何かあった時は迷わず使ってほしいですね。必ず力になります」。「自分はチームの穴を埋めて形を整えるパテ」と自称する男の矜持が垣間見られた瞬間であった。
総理大臣を複数輩出している本郷大学から初となるプロサッカー選手として磐田に入団。その後幾度かの移籍を経て現在のプレースタイルを確立した。高さはそれほどでもないが正確な読みからのパスカットには定評があり中央もサイドもそつなくこなす。背番号は24に決まった。
「この空間で一番若いのが僕ですし、とにかくがむしゃらに取り組みたいですね」
群馬県の赤城学園から新入団となる堀尾大将は緊張のためだろう、その特徴である大きな口を真一文字に結んでいる時間が多かった。しかしひとたび口を開くと溌剌とした大声が会場を埋め尽くした。尾道の印象について「ええと、まあ遠いなって感じで。海も近いし別世界みたいで、日本が狭いなんて嘘ですね」と語り笑わせた。
選手としては高校生離れしたタフネスが魅力。高校選手権は県大会決勝戦でPK戦の末に惜しくも敗れたが、延長戦までもつれ込んだ試合で一番動けていたのがこの堀尾であった。「自分の武器はスタミナ」としながらも「プロとしては全然未熟なのでもっと鍛えないと」とあくまでもストイックな性格はプロ向きと言える。
最後に、正岡監督を囲むように選手たちが集まって撮影を行った。新生尾道は今後、宮崎県でキャンプを行い3月の開幕に備える。また、他にも外国人選手をリストアップして開幕までの獲得を目指すと言う話である。
100文字コラム
尾道スペック番付。短距離走は竹田御野茅野で去年と同じ順位。持久走も竹田が連覇で次に茅野山田。跳躍力は芳松イデに布施が続く。キック力首位は桂城で朴川崎の順番。布施川崎と新顔が躍進し茅野も順調に成長中だ。




