2013年 尾道新体制発表記者会見
2013年1月14日。人生の新たなる門出を祝う成人の日に指定されているこの日、ここ尾道市内の某ホテルにおいても旅立ちの時をまさに今迎えようとしている若武者たちが一堂に会していた。この日、J2ジェミルダート尾道の新入団選手発表会見が開かれたのだ。
昨年は過去最高となる7位となりプレーオフまで後一歩と迫った尾道。水沢監督体制5年目となる今シーズンは「ようやくはっきりと『昇格』の二文字をはばかりなく口に出せるようになった」とチーム最古参の山田が証言したように、いい意味でチームとしてのランクが上がった雰囲気が出てきた。無論、それは驕りではなく立場に伴う精神的な成長によるものである。
東京では大雪が舞い、本来開催される予定だった高校サッカー選手権の決勝戦が中止となるなど荒れも荒れて大荒れの空模様となった。尾道ではそこまで激しい事にはなっていないものの、時折大地を潤す雨が空からこぼれ落ちてくるなど波乱を予感させる天候だった。
さて、会見ではまず辻社長、林GMと水沢監督が入場。選手獲得の責任者である林GMが「昨シーズンは後一歩まで行ったという確かな手ごたえはつかめた反面、そこに届かない後一歩の重要さを痛感した」と語り、「今年は何としてもファン・サポーターの皆様に良い報告をしたい。そのためには既存の戦力だけでなく今からここに登場する選手たちの力も必要となってくる」と続けた。
さらに今シーズンのチームスローガンも発表された。それがこれ「新次元」。辻社長は「今年はちょうど巳年。我々もそれまでの『尾道はまだまだJ1には遠い』という固定観念から蛇のように脱皮してJ1という新たな次元に進むべく一致団結して戦うように」と説明した。尾道のスローガンは一昨年の「新風」や昨年の「漸新」など、毎年「新」の字が入っているのが特徴である。
続いて高校や大学、そして3年連続で優秀な選手をトップチームに送り込んでいる尾道ユースから集まったルーキーたちが壇上に現れた。18歳から24歳まで総勢6人の若武者たちは緊張した面持ちで用意されていた椅子に座った。
凛々しい姿に「いずれ劣らぬ素晴らしい素質を持った選手が集まった」と目を細めた水沢監督。しかしその一方で「常に高い目標を持って邁進しないと何も出来ないまま終わってしまうのがこの世界なので互いに切磋琢磨して頑張ってほしい。素質は磨かないと本当には輝かないものだから」と鋭い口調で釘を刺すと、聞いていた選手たちは自然と背筋を伸ばしていた。
ここからは選手ひとりひとりの紹介に移る。尾道と同じ備後地方である福山出身のGK宇野選手は「自分の武器は威勢のよさだと思っています。練習中から声を出してアピールしたい」とはきはきした口調で受け答えをしていた。背番号は30番。GKは宇佐野、玄馬らとの争いとなるが、いかに自分の個性を出せるかが鍵となる。
先日の選手権にも出場した仲真選手ははるばる故郷の沖縄から飛行機に乗ってこの尾道まで来たが、「意外と近くに空港があったので全然楽でした」と平然。恵まれた体格と同様にハートも大器の片鱗を覗かせている。目標は「不動のセンターバックになりたい」と答えた後で「でもピッチ上では臨機応変に動けるセンターバックが目標ですけど」と笑った。背番号は21番。
ユース出身の西東選手は「トップチームを目標に今までやってきたので、まずはスタートラインに立てたかなという感じ」と落ち着いた口調で答えた。プレースタイルについて「これまで中央も両サイドも、中盤の前目の位置でもプレーした事がある」と万能性をアピール。「まずは名前の読み方を覚えられたい」と抱負を述べた。ちなみに「西東良福」と書いて「さいとうよしふく」と読む。背番号は24番。
同じくユース出身のMF栗山選手もトップチーム昇格となる。緊張した表情を見せながらも「自分の持ち味はパス。プロでももっと技術を磨きたい」とセールスポイントを明確に売り込んだ。同期の西東選手に関しては「仲間だしライバルにもなる。ともに高めあって尾道の中心になれれば」と誓った。背番号は25番。
ルーキーの中では最年長となる24歳の岡選手は、かつて2年間のプロ経験もある。「だから自分は新人でいいんですかと林GMに確認しましたが、大学卒業だからこっちでいいよと言われたので」と照れ笑いを浮かべつつ語った。そして「この年齢なので即戦力として期待されているのは当然。それに応えたい」と意欲を見せた。背番号は13番。
最後にFWの竹田選手は「持ち味はスピードを活かしたドリブル。相手にとって脅威となる選手になりたい」と語った。また、ホームタウンとなる尾道の印象について「海が近くにあるのでとてもいい街だと思います。ずっと内陸で育ったので海にはコンプレックスがあるんですよね。大学もそれで決めたぐらいですから」と笑わせた。背番号は16番。
続いて移籍加入選手6人が登場した。彼らに向けて水沢監督は「自分が尾道を率いてから今年で5年になる。土台はもう十分に完成したので結果を残すシーズンにしないといけない」と語り、「それを成し遂げられる技量を持った選手たちばかりがここに集まっている。力があるのは分かっているのでそれを発揮できるかが大事」と発破をかけた。
故郷の釜山から日本に戻ったのは正月が終わってからすぐ。早々と合同練習に合流している朴選手だが「一日でも早くチームに馴染みたいので当然の事。そんな(ポジションが確保されているような)偉い選手でもないですし」と意欲的な姿をアピール。「自分の長所は左足の精度と当たり負けしないフィジカル。ポジションを奪いたい」と流暢な日本語で語った。背番号は22番。
沖縄での武者修行から復帰した小林選手は「右サイドバックは(ポジションが)空いていると思うので自分にとっても大きなチャンスとなる。元々の持ち味であったドリブルだけでなく、クロスやポジショニングなどもそれまでとは違うというところをサポーターの皆さんに見せたい」と意気込んだ。背番号は移籍前と同じ32番。
小林と同じく期限付き移籍から復帰組の春野選手は「北九州と町田ではサッカーの技術だけでなく人間的にも多くを学べました。元々の持ち味だったスピードあるプレーだけでなく周りの選手との連動という面でも成長した部分を見てほしい」と自己アピール。自然な笑顔を見せる顔つきからも充実した日々を過ごした事がうかがえる。背番号は29番。
期限付き移籍だった2009年以来の尾道復帰となる桂城選手は「尾道は初めてフルシーズンで試合で出られた、自分にとってプロ生活のルーツとなった街なので愛着を持っていた。戻る事が出来て嬉しい」と口元をほころばせた。その上で「ドリブル、パス、シュートすべてがあの頃よりもパワーアップしているので、別人と認識していただいても構いません」と不敵な面持ちで言い放った。背番号は2009年と同じ7番。
アンダー世代での活躍も記憶に新しい谷本選手はここ数年怪我で思うようなプレーができないでいるが「今年の秋から冬にかけては膝の状態がかなり良くなっている」と復活に手ごたえを感じている様子。「J1という目標に向けて、今までのサッカー人生の集大成を出す事が出来れば」と決意を述べた。背番号は10番。
豊橋から加入の芳松選手は「プロ入り前から荒川秀吉さんを目標としていたので、同じユニフォームでプレーできる喜びがある」と興奮気味にまくし立てた。背番号は27番。これも「実はもっと小さな背番号も打診されましたが、ヒデさんが着けていた番号なので」という本人の希望があったようだ。「試合に出たらストライカーとして貪欲にゴールを求めたい」と力強く語った。
最後に、監督を中心に真新しいユニフォームを着込んだ11人の侍に加えて今シーズンより導入された尾道のマスコットであるジェミーちゃんとルディーくんの姉弟が集まって記念撮影をした。ちなみにユニフォームのデザインも新調されており、ホームの上半身は赤と緑のボーダーでパンツは黒を基調に赤と緑のラインが入っている。アウェーは上下ともに白基調の中、横腹には赤と緑の斜線が何本か入っている。
また、エンブレムも新調された。それまでは赤と緑の市松模様に塗り分けられた盾の左右に戦士がいて、その上下にリボンが巻かれているというデザインだったが今回一気にブンデスリーガ的シンプルなデザインになった。
まずはシールド状からサークル状に形状を変更。そしてそのデザインは戦国時代に瀬戸内海で活躍した村上水軍の家紋である丸上紋をイメージしたものとなっている。具体的にはサークルの下1/3以上半分以下ぐらいの部分を緑に、残った上部の右2/3ほどを赤に塗り分ける。残った上部1/3ほどの部分は黄色、と言うか「光の色」などと表現されているが要は空白である。赤と緑の部分は順風満帆の船にも見える。
そして赤い部分の真ん中あたりに二段で「B.G.O.」「1993」と書かれてある。1993とは言うまでもなくクラブ設立年度である。そしてB.G.O.とはそれぞれ「備後」「ジェミルダート」「尾道」の頭文字である。尾道だけでなく広島県東部の備後地方を代表するクラブとして羽ばたきたいという希望を込めたとの事である。
また、フラッグのデザインも変更。それまでは上が赤、下が緑に塗り分けられた地の上にエンブレムというものだった。しかし新フラッグは白地にスカンジナビア十字的な左寄りの十字が描かれている。その色は縦が緑赤緑、横が逆に赤緑赤と色分けられている。クロスの中心にエンブレムが入り、右下にはチーム名のロゴが入っている。
Windowsのペイントでざざっと作ったものですがおおまかにはこんなデザイン。
昇格を目指すための春季キャンプは20日から愛媛県と宮崎県で行われる。新生尾道の船出はもう近い。
100文字コラム
尾道スペック番付。短距離走トップは新人竹田で御野茅野が続く。持久走も竹田が一位で次に山田芳松。跳躍力上位三人は芳松イデ竹田。キック力首位は朴でイデ桂城の順だ。竹田の身体能力は衝撃だが芳松も素晴らしい。




