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幻のストライカーX爆誕(仮題)  作者: 沼田政信
2013 時間は再び動き出す
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新春記念 新マスコット誕生 上

明けましておめでとうございます。

昨年中は多大なるご支援・ご声援を賜り、誠にありがとうございました。

今年も地域に根ざした、愛されるクラブとなるよう、チーム一丸となって精進してまいります。

皆様にはより一層のご支援ご声援をよろしくお願い申し上げます。


(株)ジェミルダート尾道 代表取締役社長 辻直広






 地球から100万光年の彼方、地球人類が未だに観測しきれていない暗闇の中にひときわ鮮烈な閃光を発する、緑色の星雲に囲まれた赤い星がある。その赤い星では地球と同じように生命が育まれ、人類によく似た形状の生物が繁栄していた。彼らは地球人類をはるかに超越する科学文明の発達を成し遂げており、彼らが元々生まれた赤い星から勇躍し、宇宙狭しと駆け巡って各地の星に拠点を築いていた。


 そして彼らは地球を知った。隕石や彗星に偽装した偵察機を宇宙各地に飛ばした結果、偶然にもそのひとつが地球に落下したのがそもそものきっかけだった。なお、これが地球側においていわゆるツングースカ大爆発、あるいはツングースカ事件とも呼ばれるものである。


 地球人類はこの不思議な大爆発をの謎を解明するため、シベリアの奥地に調査団を派遣した。しかし詳しいことは分からず「おそらく宇宙から飛来した何らかの物体が爆発したものだろう」と言った程度の結論しか出すことが出来なかった。彗星か小惑星が落ちたという説が最有力だが、なにぶん落下した物体の残片などが発見されていないので完全な特定は難しかったのだ。


 ではなぜ残片は発見されなかったのか。それは赤い星の人類が持つ優れた科学力ゆえである。つまり、赤い星の人類は偵察機を様々な衝撃から守るために岩石状の外壁を装着してから射出するのだが、目的地に接近して安全が確保されたと見なされると外壁は不要になるのでパージされる。そのパージの際に起こる衝撃で爆発が起こったのがツングースカ大爆発の正体だったのだ。なお偵察機は透明で、普通の人類には見ようと思っても見る事は出来ない。そしてその偵察機は今もなお地球上をふわふわと飛び回っているのだ。


 偵察機はここ100年ほど青い惑星をくまなく回って、そこに人類が住んでいるという事実も掴んだ。


「むう、この星に存在する生物はまるで我々の生き写しではないか」

「しかし彼らはわれらと比較して文明レベルは10000年ほど遅れています。対等なパートナーとなれる可能性は絶望と言わざるを得ません」

「そうだな。ではとりあえず無人機のみならずこちらからも観測員を送り込んで、もう少しよく観察してみよう」


 こうして偵察要員に選ばれたのが2人の観測員であった。この2人は姉弟で、任務は初めての新米である。地球人類と比較すると毛深く、頭部には聴覚を司る突起物が二本立っており一見猫のようである。


「君たちにはこれから偵察機No.2005334がマークしている惑星へ行ってもらう。ここは比較的小さな星だが我々とよく似た生物がいくらか生息しているようだ。基本的には手出し無用。しかし場合によっては全員服従させるか、それでも抵抗するようなら全滅も辞さない」

「了解しました」

「しっかり調査して、有益なデータを送りたいと思います!」

「うむ。とりあえず100年ほどの期間観察してくれればいい」

「やっぱり期間もちょっと短いんですね。まあ、最初の仕事ですし」

「しかし簡単な任務ではないぞ。ぬかるなよ。成功を祈る」


 2人の観測員は意気揚々と、無人偵察機と同じく表面には岩石のようなコーティングがなされている球体状の宇宙船に乗り込んだ。多少小さいが、ここで暮らすことも十分可能なほどに宇宙船の設備は充実している。間もなくそれがレールガンのような装置で射出された。光の速さを超える加速を得た宇宙船は100万光年の距離をものともせず、宇宙船は地球時間で言うと3日ほどで地球に接近した。


「姉ちゃん、例の惑星が見えてきたよ。へえ、こんなところに僕らに似た生き物が住んでるなんてねえ。やっぱ宇宙は広いや」

「そうね。それにしてもここって私たちの星と違って青いのね。不思議な色合いね」

「本当にそうだね。あの青い部分が海で緑や茶色の部分が陸地だってデータがあるから、緑の部分に着地するよ。じゃ、そろそろ突入時間になるけど、準備はいい?」

「もちろんよ。さあ、行くわよ。大気圏突入成功。外装パージ完了。落下スピード99%オフ。落下地点は、あの小さな列島付近になるわね」


 宇宙船内部であれこれと指示を出しながら安全な落下を目指す観測員2人。無人機の時とは違って、この星に生物がいると分かっているので無造作な衝撃を与える事は自重しているのだ。このような適切な指示のお陰で宇宙船は変な爆発などすることなく山中に落下、しっかり減速できていたのでほとんど着地のような形で地表に到達した。


「ふう、着陸完了ね。サーチレーダーオン。周辺に生命体の反応は、今は獣しかないわね」

「とりあえず第一段階クリアって事でいいのかな。じゃあ、地表に降りてみようよ」

「そうね。分析の結果マスクなしで外出しても問題ない空気をまとっているみたいだし。ハッチオープン」

「じゃ、僕が先に行くよ。よーし、とうっ!」

「ナイスジャンプ! それにやっぱり問題ないようね。じゃあ私も行くわよ、えーい!」


 こうして観測員の姉弟は尾道の備後運動公園周辺の山中に降り立ったのだ。より具体的に言うと運動公園内のキャンプ場付近、しかし通常利用するルートからはやや外れた山中である。そんな場所に落ちたことに加えて、この宇宙船もまた無人偵察機と同様に透明な色をしているので地球人類に発見される可能性は万に一つもない。そういう事なのでとりあえず宇宙船は着陸地点に放置して、2人は周辺をうろついてみた。しかしそのうち、空の真上にそびえていた太陽が次第に西へと沈み、オレンジの残光を経て青く沈み込み、そして黒く塗り替えられた。


「まずいわね、早く宇宙船へと戻らないと。私たちは夜闇にいるとエナジーを吸収されて元気がなくなっちゃうから」

「うん。事前調査によるとこの星の人類は夜でも活動するらしいけど、僕たちはブラックスター理論によって黒星の中では活動が難しくなる。調査は全然出来てないけど、それはまた明日からだね」

「そうね。とりあえず明日の目標はこの星の人類に遭遇する! これね!」

「うん! じゃあおやすみなさい」

「おやすみ。明日の朝も早いわよ! しっかり休んでしっかり動けるようにしないと」


 宇宙から来た姉弟の地球初日はこのようにして終わった。翌日、2人が目覚めたのはちょうど夜が明けるのと同じ時間だった。すぐにサーチレーザーを起動させて周辺に生命反応がないのを確認すると、宇宙船の扉を開けて外に出た。その見た目は昨日までとは異なりまるで人間の子供そのものになっていた。これも彼らの蓄積したデータの賜物で、地球人類の姿を模した変身機能を用いているのだ。簡易サーチレーザーや万が一戦闘となった場合に備えるプラズマビームガンなどの機能が秘められている兜を被っているので備えは万全だ。


「さっ、行きましょう。今日こそ人類とランデヴーよ。レーザーのほうはどう?」

「まだ反応はな、あっ、ちょっと待って。反応! 反応した! 生体反応は5つ! どんどん近づいてくる! どうしよう、どうしよう!」

「えっ、いきなり!? ま、まあ落ち着くのよ。調査の結果この地球で実際に使用されているのと同じ服装に身をまとっているはずなんだから。私たちとあの人たちとは同類と、そう思わせるのよ。自然にね」

「うん。でも不安だなあ」

「大丈夫よ大丈夫! きっと大丈夫。とにかくずっと昔からこの星にいたように堂々とするのが大事なんだから。ほら、もう肉眼で見えてくるわ」


 瀬戸内海に面する尾道でもに冬が近づくと大概寒いものだ。しかしその寒さを切り裂くように、朝のスタジアム周辺を走り抜ける5つの影があった。


「ほらほらどうした! もうばててきたかテルよ!」

「何言ってんです? まだまだ余裕っすよ」

「余裕なのは口だけだろ。ちょっと遅れてんぞ。ほらほら、コーヘーに追いついて見せろ!」

「俺はまだ余裕やで!」

「僕だって余裕ですって! それにまだ後ろにいるでしょ」

「下見たら選手として終わりよ。大体ウサはGKでお前はフィールドプレーヤーだろ」

「ま、まあそうですけど」

「はいつべこべ言わない。走れ走れ若い時は短いぞ!」


 彼らは荒川秀吉、山田哲三、深田光平、御野輝、宇佐野竜。いずれもこの尾道を本拠地とするサッカークラブ、ジェミルダート尾道に所属する選手である。すでにシーズンは終わっているが自主練習は欠かさないと言うことで早朝のランニングを日課として励んでいるのだ。


 公園内の決まったルートを毎日走っている。そのコース周辺には住居もなく、人と出会うことがないのがかえって都合がいいからなのだが、今日に限っては道に2つの人影が存在するという事実を認めざるを得なかった。先頭を走る秀吉は「こんな時間に先客がいるとは珍しいな」と最初は思った。しかしその姿が明らかになった時、どうしても足を止めざるを得なかった。そして思わず話しかけたのだ。


「む、君たち、こんな時間からこんな所で何やってるんだい?」

「(異星人と接近開始。言語解析完了。パターン37。彼らがニホンゴと呼ぶ言語への転換、完了。そしてこの状況みもっともふさわしい単語は、これだな)おはようございます!」

「今日もいい天気ですね!」

「お、おう。そうだな」

「はあ、はあ。あれ、どうしたんですヒデさん。止まっちゃ、ああ、何ですこの2人は!?」


 遅れてきた御野や宇佐野も自分たちではないその2人の姿を見て思わず足を止めた。まず2人とも頭部と耳の部分、そして口元は金属製と思しきヘルメットのようなもので覆われている。しかもそのヘルメットには猫耳のようなとんがったパーツもついており、その形状は日常的な防護用と言うにはあまりにも過保護で、戦闘用の兜を思わせた。


 さらに驚いたのは兜からはみ出している髪の毛の色である。女のほうは真っ赤、男のほうは真っ緑なのだ。「赤毛」だの「緑の黒髪」だのそんなレベルではない、まさに原色そのものの鮮やかなカラーはスプレーなどでは出せそうもない色合いである。瞳は逆に女のほうは緑、男は赤で、これもまたカラーコンタクトというレベルを超越した鮮やかさである。


 視線を顔より下に移すと、女のほうはピンク色のジャンパースカートに長袖の白いシャツ、白いソックスに赤い靴を履いていた。何となく魔法とか使えそうだ。まあこっちはいいとして、男のほうは安そうな半袖のTシャツと短パンに加えて素足というあまりにも無防備な姿を寒風に晒していた。どうやらデータが古かった上に季節も間違えたらしい。


 そして2人とも身長は低く、秀吉たちからは10歳ぐらいの子供だと認識されていた。これは赤い惑星は地球より重力が大きいのが原因で、地球人類より平均身長が低い赤い星においては普通レベルである。しかも姉弟ともに童顔、姉の髪型に至っては前髪をまっすぐに切り揃えたおかっぱで、これまた童女らしさを助長している。


「こんな朝早くからご苦労さん。ところで君たち、お兄さんの名前は知ってるかい?」

「(よし交流成功ね。ここからは素直に)いいえ、知りません」

「ああ、うん。そうだね。ははは、ちなみに荒川秀吉って言うんだ」

「俺は山田哲三。よろしくな君たち」

「俺は深田光平や。よろしゅう」

「僕は御野輝って言います」

「最後に、僕は宇佐野竜。ゴールキーパーやってんの」


 2人はゴールキーパーという言葉に反応した。故郷の星では聞かない単語だったからである。ゴールとは目標。キーパーは守るものだろう。つまりゴールキーパーとは大事な何かを守るもの。大事なものとは何か、今の2人にはよく分からなかった。とりあえず「ゴールキーパーって何ですか?」と聞くと、宇佐野は戸惑ったような声を出して「ええと、じゃあまずサッカーって知ってるかい?」と聞き直した。


 次から次へと専門用語が飛び出してくる現場に初体験の2人は生の会話に振り回されっぱなしだった。しかし表情だけは崩さず「いいえ、知りません」と素直に答えた。宇佐野は困ったようだったが、代わりにしゃべりを引き継いだのはベテランの秀吉であった。「知らないなら知らないで構わないよ」と言いたげな優しい口調で2人に語りかけた。


「まあいいさ。ここで出会ったのも何かの縁だろう。いいかい、君たち。まずサッカーってのはね、この地球上でもっとも盛んに行われている戦いだよ」

「戦い!?」

「まあ、ちょっと大袈裟に言っちゃったけどさ、僕たちはそのサッカーをすることによって生きている。それがプロのサッカー選手ってわけ。ここにいる全員がそれさ」

「(なるほど、つまりこの人たちはこの星における戦士と言うことか。でも僕たちの正体はまだ気付かれてないみたいだし、交流を続行しよう)じゃあ、あなたたちは常に戦い続けているという事なんですか?」

「まあ、格好いい言い方するとそうなるかもね。でも俺たちは本当の戦い、戦闘をしてるわけじゃない。そういう競技なんだよ。そうだ、サッカー見たことないんだろう? じゃあ、見に来るかい?」


 秀吉の提案に2人は「この星の戦闘レベルを知るのにいい機会だ」と考えた。たまに文明はあまり発達していないがバトルだけは立派な星もある。ここはそのような雰囲気とは違う気もするが、この星の人類もそうである可能性も考慮したのだ。なお、それがそもそも戦闘ではないという可能性は考慮の外だったようだが、あらゆる可能性を警戒する中ではあまり楽観的な視点で見ることは出来なくなるものだ。


「ええ、ぜひお願いします」

「それは良かった。ところで今日は休日だけど、これから暇かい?」

「はい、それは問題ありません」

「今日は今のところまだ何をするとか決めていませんから」

「そうか。じゃあ、今日の9時から練習あるから、ほらそこに見えるだろうスタジアムが。あそこでやってるからね。ぜひ見学しに来るといいよ」

「(よし、接触の足がかりをつかめたわね)ありがとうございます。きっと行きます」

「じゃあ、待ってるよ。あ、そうだ。君たちの名前は何って言うんだい? 来た時にちゃんとこの子達ですよってスタッフに言わないといけないから、聞きたいな」

「はい。私はジェミーって言います」

「僕はルディーです」

「へえ、じゃあ2人とも、これはお兄さんとの約束だからね。きっと来てね」


 このような会話を交わした後で秀吉たち5人はランニングを再開して、いずこへもなく走り去って行った。それを2人は肉眼で確認できなくなるまで手を振りながら見送った。これが地球人類と地球外生命体のファーストコンタクトであった。


「ふわあ、精神的にどっと疲れたわ。でも接触成功ね。多分私たちの正体もばれてないでしょうし」

「最初はどうなる事かと思ったけど、案外いい人たちなのかもね。うん。ところで、9時っていつだろ? そもそも今って何時?」

「えーっと。まあその辺はとりあえず宇宙船に戻って、そこで確認しましょう」

「うん!」


 2人は今来た道を引き返し、体調を整えるために宇宙船の中で少しばかりの眠りについた。

100文字コラム


水沢監督はささきいさおの歌マネが得意。十八番は銀河鉄道999のエンディングで作品を知らない若手も感動させる。「宇宙の塵やガスが集まって星が生まれた瞬間のようなイントロが好き」と独自の着眼点で愛を語る。

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