中継その2
「豊橋のゴールキックから試合再開です。ボールをキープするのは藤倉。藤倉から朝野兄に、そしておっと朝野弟にダイレクトで渡りました」
「朝野兄弟の弟、透のほうは非常に強気なプレーをしますね」
「と言いますと」
「ええ、まず身体能力がかなり高くて足も速い、身長も180cmありますし、割と何でも出来るタイプですね。シュートの精度もかなりのものです。若いですが才能の塊ですよ。ただ今後どの部分を磨いていくかによっては本当に全然違うサッカー人生になっていくでしょうね」
「さあその何でできる朝野弟から右に開いた佐々木へ、佐々木のドリブル突破は脅威です」
「ここはうまくチェック出来ていますね。個人技を発揮させていない」
「今村がスペースを消しています。佐々木は、サイドを駆け上がる原にパス、原に対応するのは深田だが、前に出て行く」
「これは危険ですよ!」
「あーっとサイドを突破された!」
「やはり深田の守備がちょっと軽いですね」
「そしてクロスを上げますが、宇佐野が飛び出す。キャッチしました」
「うーん、深田はスピードがあってオフェンスではいいですけど、ディフェンスは苦手と言ってもこういうところでしっかり仕事をしないと監督からの信頼は得られないでしょうね」
「スピードではいいものを持っています深田。さて、ボールは宇佐野から右の山吉が今キープしています」
「この山吉は非常にオフェンスもディフェンスもよくやっていますね。技術を持っているし、水沢監督としても使いやすい選手でしょうね」
「右サイドの山吉から山田、そして金田、ヴィトル、また金田に戻します。ここでチャージがありました。尾道ボールのフリーキック」
「前日の練習ではセットプレーの練習を多くしていました尾道。キッカーの金田は『今までよりパターンを増やすようにした。今年は高さのある有川とモンテーロが加わったのでかなり選択肢が増えたのはチームにとって大きい』と語っていました」
「尾道にここまで長身選手が複数いるのは初めてじゃないですか」
「歴代では191cmのジアスというディフェンダーもいましたが、特に前線に190cm近くの選手が入ったのはそれまでになかったことですね」
「ああジアス、いましたねえ。それと韓国人のキムジョンスンという選手もいたでしょう。彼なんかはかなり迫力のあるヘディングしてたと思いますが」
「金選手は身長はそれほど高くありませんでしたが、気迫がある選手でしたね。今は母国に帰ってプレーしています」
「そうですか。ジアスは身長の割に怖さがないというか、特にディフェンス力についてはちょっとかなり頼りないところがあって、それが惜しかったですね。今のモンテーロとの違いはそこでしたね」
「さあ試合は再開されていますが、ゴールキックに変わっています」
「ちょっと金田のキックが曲がりすぎましたかね。合いませんでした」
「本日の風は東向きに2mで吹いています」
「さあ豊橋のゴールキックから、山田が奪った」
「さすが山田ですね。寄せが素早いので今みたいにちょっとトラップが大きくなるともう奪います」
「そして山田から茅野、速攻は、できないか。一端茅野は走りを止めて回りを見ます。さあ、この茅野についてですが、ここまでの動きを見て鈴木さんはどうご覧になりますか」
「まあこれぞ茅野というプレーはまだ見られないものの悪くはないですね」
「やはり茅野といえば一瞬のスピードや躍動感あふれるシュートというイメージがありますが、そういった部分はまだですかね」
「まだですね。ただテクニックは明らかに増していますからね」
「茅野から左サイドにパスが通りました」
「今のようなパスの精度なんかは特にね、実戦で磨かれている最中ですね」
「さあ、深田のドリブル突破からボールはタッチラインを割っています。豊橋のゴールキック」
「豊橋は尾道のサイドからの攻撃をよく警戒していますね。クロスを上げさせないようなディフェンスをうまくしています」
「豊橋の右サイドバックは原、左には平良がついています。ともに技術的に定評のあるサイドバックです」
「どちらかと言うと攻撃より守備という選手ですよね。2人とも」
「豊橋のゴールキックは、右に切れていきました。尾道のスローインです」
「今日は、風はそんなに吹いていないようですかね」
「風速は南から北に1mほど、そこまで強くはないですね。ただ上空ではよく雲が動いていますからね」
「このスタジアムでは風向きや天気がコロコロ変わることがありますからね、選手はそれも計算に入れないといけません」
「山の中にあるスタジアム、あっとヴィトルが抜け出したがオフサイド!」
「スローインから今村、金田とつないでいい形でパスが出ましたがね、惜しい」
「一瞬のスピードに定評のあるヴィトルは尾道の得点源となっていますが、豊橋のフリーキックから試合再開です。ディフェンスラインでじっくりボールを回す」
「むしろ速攻されるとやっかいですけどね。形をしっかり作るパターンが多い豊橋と前線は選手個人の判断による部分が多い尾道は違いますよね」
「尾道は前線にタレントが揃っていますからね、と、ここで今村が佐々木からボールを奪った」
「チャンスですよ」
「一気に前線が躍動する、今村のロングパス! これは有川につながらず、しかし金田がボールキープ」
「さすがに高さがありますね朴」
「金田からパスを、あっとここで取られた」
「危険だこれは」
「豊橋の一枝、朝野兄、奥山と素早くパスが続く。奥山は前線に大きく出す、黄山追いついた! そのままドリブル突破だ!」
「あーまずいですね、2対2になっている」
「ディフェンスは港が決壊、宇佐野と1対1! 黄山は、あーっとここで右に流した! 豊橋フリーで走りこんでいるー!! マーカーいない! 先制点を奪われました尾道! ゆっくりとゴールネットが揺れています」
「うーん、うまくやられましたね」
「尾道がカウンターを仕掛けたかに見えましたがボールを奪われ、逆に豊橋のカウンターが決まりました。尾道1点のビハインド。水沢監督もこの表情」
「平静を装っていますがやはり苦い顔も見えますね」
「決めたのは朝野透で、今季4ゴール目」
「1年目から見事ですね。しかしまだ試合はまだ始まったばかりですから、これからですよ」
「さあ、センターサークルにボールが戻りました。仕切り直しのキックオフです」
「先制ゴールを決めた朝野透選手について、豊橋の野山和久監督は試合前に『トオルは一見激しい性格だけど実はクレバーな選手、試合の流れをよく見ることが出来て、ここぞの場面で結果を残せる』と語っていました」
「そういう意味では非常に彼らしいゴールだったと言えますね」
「高校時代は選手権で5得点を上げて注目を集めた選手です。兄とともに豊橋に入団して、レギュラーを獲得しています」
「非常に将来面白い兄弟ですね」
「さあ、ボールは左サイドの深田が突破しにかかるが、ここは対応する原が足を出してファールを奪いました」
「深田のスピードは相手にとって脅威ですからね。このように積極的に仕掛けていく姿勢を忘れない事ですよ」
「その深田ですが試合前日に『自分が試合に出るからにはこれというものを残さなあかん。自分の武器であるスピードをアピールしたい』と、おなじみの関西弁で決意を語ってくれました」
「今年は右に山吉、左に小原といますからね」
「去年は主に右サイドバックでレギュラーとして40試合に出場しましたが今年はまだ6試合目、しかも先発出場は今日の試合が初めてです深田」
「ただ今のところは悪くないプレーをやれていますからね。持ち味の攻撃力をこれからどう出していくかが大事になってきますよ」
おーのみーちージェミルダートジェミルダートジェミルダート(繰り返し)
「さあ、フリーキックを蹴るのは金田」
「ゴールまでは遠いですからね、誰に合わせるでしょうか」
「豊橋のペナルティーエリア内には有川とモンテーロも上がってきています。さあ、笛が鳴ってゴール付近に蹴りこむ。クリアされてセカンドボールも豊橋」
「速攻警戒ですよ」
「前線にロングパスも、港がカットしました」
「さすがに港は落ち着いていますね。やすやすと2点目は入れさせません」
「港から右サイドへ、山吉はドリブル突破から、スローインとなりました。尾道のスローイン」
「ここからどう点を返していきますかね」
「この山吉ですが『豊橋は組織的なチームなので崩すにはドリブルを多く仕掛けて行きたい』と今節への意気込みを語りました。鈴木さんはここまで山吉の動きをどうご覧になりますか」
「悪くないと思いますよ。ガツガツ行くだけでなくクレバーな面も見せつつ、ここぞという場面では攻められていると。ここからあの鋭い突破でもっとチャンスを作っていければまさしく尾道のリズムになりますね」
「その山吉から大きくサイドチェンジ、深田に通りました」
「これはいいパスですよ」
「そして深田はドリブル突破からクロスを上げて、有川! ヴィトール! これは外れ!」
「いい形でした」
「最後は有川が頭で落としてヴィトルが蹴りこみましたがゴールの左でした。しかし鈴木さん、この形は尾道の、有川を使った攻めが見られました」
「そうですね。やはり高さとパワーがありますから、サイドを突いていくとこういうチャンスは必ず生まれますよ。後は最後の精度をきっちりできるかですよ」
「さあ、豊橋のゴールキックから試合再開です。ところで、今シュートを打ったヴィトルはここまで13試合で4得点ですが『キヨシが好調なので自分もそれに負けたくない。そのためには積極的にシュートを打っていきたい』と語っていました」
「非常にシュートは上手いですからね。スピードもありますし、去年は怪我でほとんど出られませんでしたが2年目でようやくチームにもフィットしてきましたし。力もありますし、もっといける選手だと思いますよ」
「さあ、ボールを今山田が奪いました。スライディングでファールもなし」
「うまくボールを突いていますね」
「そこから茅野にボールが渡った。前線にはヴィトルと有川がいるが、おっと自分で突破を仕掛けていく。1人抜いて、あっとここで止められましたが笛が鳴った。いい位置でのフリーキックを得ましたジェミルダート尾道」
「ヴィトルあたりにパスという選択肢もありましたが、よく積極的に仕掛けましたね。これはいい判断でしたよ。ビハインドの状況ですし、縮こまるのではなくアグレッシブに行くぞという姿勢を見せるのは大事ですから」
「さあ先制点のチャンスです。キッカーは金田か。茅野もいますが」
「金田ですね」
「さあ、主審の笛が鳴りました。キッカーは、やはり金田、ですかこれはキャッチされました」
「これは完全にコースを読まれていましたね」
「豊橋のGKは韓国出身の白大順です」
「割とムラがありますけどね、はまったらいいセーブを連発しますからね。尾道としてはその前にまずゴールを決めて、乗らせないようにしたいですね」
「おっと、有川が立ち上がっていませんね。どうしましたか」
「ディフェンスと競り合った時に頭でもぶつけましたかね」
「担架が呼ばれました。一時的に有川がいない状態で戦う事になります尾道」
「小原が欠場してさらに有川となるときつくなりますからね。何事もなければ良いのですが」
「さあ10対11となったピッチ、豊橋のゴールキックで試合再開です。最前線の黄山から佐々木へ」
「右サイド空いてますね」
「その右サイドに流す。原が走りこんでいる、つながった。深田が対応に向かいます」
「ペナルティーエリア内は大分尾道の選手が集まっていますよ」
「内部は2対2です、さあ豊橋はクロスを上げられるか、あっと深田抜かれた、グラウンダーのクロス! 足でクリアする! セカンドボールは豊橋! ここからシュート! コーナーキック!」
「うーん今のは危なかったですね。あそこで抜かれるのはちょっと」
「左サイドの原の突破からクロスは港が足で弾きましたが詰めていた藤倉がミドルシュート! 宇佐野が触ってコーナーキックとなりました」
「宇佐野が触ってないと、ゴールでしたね」
「ええ、入っています。さあコーナーキック、蹴るのは奥山です」
「ここは正念場ですよ。ここで決められるとかなりまずい」
「前半39分、豊橋のコーナーキックは、まいてくるボールだ! パンチング! こぼれ球は豊橋、左サイドに送って、クロスは頭で弾き返す。そしてまた豊橋が拾う」
「うーんまずい流れですね。かなり押し込まれている」
「豊橋、朝野兄から一気に前線にフィード、これもモンテーロが弾く。さすがの高さです。またコーナーキック豊橋」
「ギリギリで持ちこたえていますが後一歩でゴールまで来ていますよ」
「ここで有川がピッチに戻ります。異常はないようです」
「それは良かった。ここは集中して守りたいですね」
「さあ連続のコーナーキックは、今度は低い球! 山田が頭でクリアした」
「まだ分かりませんよ」
「ボールは藤倉に、さあどう攻めるか豊橋。ここで右サイドにボールを送った。原と佐々木でパスを回します」
「かなり慎重に攻めてきますね」
「佐々木から奥山おっとここでボールを奪った」
「今村ですね。チャンスですよ!」
「もう走り出しています尾道の前線、今村から、左に流れている茅野だ。さあドリブル突破見られるか」
「中には2人いますね」
「サイドに流れてクロスボール、これは豊橋が弾きました。コーナーキック」
「いい時間にコーナーキックを得ましたね。尾道としてはここで追いついて前半を終えたいですね」
「すでに時計は44分を回っています。キッカーは金田、有川とモンテーロはニアポスト。さあ笛が鳴りました」
「ショートコーナーですね」
「金田が深田にパスし、さらに今村に回して上げた、クロスに飛び込むのは有川だあ! 競り勝ってゴール! 尾道同点ゴールを決めました!」
「うまく相手ディフェンスのタイミングをずらしましたね。技ありのゴールですね」
「有川今シーズン8得点目! 頭で合わせてきました!」
「斜めのクロスで非常にタイミングを合わせ辛いのですが、絶妙でしたね」
「前半44分、最高のタイミングで1対1の同点に追いつきましたジェミルダート尾道。さあ、豊橋ボールでキックオフとなります。そしてアディショナルタイムは1分と発表されました」
「ビハインドでハーフタイムになるのと同点に追いつくのでは全然違ってきますからね。まさに値千金ですね」
「豊橋は朝野兄弟がボールを回して、あっとパスミス。タッチラインを割りました」
「ヴィトルがいいチェイスを仕掛けました。本来そういうプレーが好きな選手ではないんですけど、やはり流れが変わってきましたね」
「さあ、スローインから、おっとここで長い笛が鳴りました。前半終了、1対1の同点です」
100文字コラム
手先が器用な橋本の趣味はプラモデル作り。またガンダムの知識も抜群で本編の展開に即した改造を施している。「何もしないままならプラスチックの塊。手を加えるほどに物語を帯びてくるのが醍醐味」と楽しさを熱弁。




