秋風吹く頃に
尖角さんからのリクエスト作品です(=´▽`=)
二人最後の一秒まで、一緒にいるって、約束したのはいつだったんだろうか。
どうして、些細なことできつく結んだはずの赤い糸は、緩み、解れ、風に消えて行ってしまうんだろうか。
「一緒に帰ろうか。」
少し微笑みながら、君は私に声をかけてくれた。
私も、それにこたえて、笑顔で頷く。
君は、私の自慢の相手だった。
長身で人当たりが良くて、服装を乱すこともしないような、理想的男子高校生。
はっきり言って、そんな人間が存在するなんて、私は信じていなかった。
でも、だからこそ、高校に入って、初めて声を掛けてくれた君に心惹かれたのだ。
まだ、薄明るい夏の夜。
近所の盆踊りで、君を見かけて、無意識のうちに声を掛けてしまって、勢いで告白をしてしまったあの日を、まだ鮮明に思い出せる。
付き合いだしてから、二年三か月半。
笑いながら、いつものように帰ろう、と言ってくれた君とあんなことになるなんて思ってなかったんだよ。
昇降口に出ると、すっかり傾いた夕日で、真っ赤に染められていた。
その中を君が黙って歩いていくのが、なぜか、とても哀しく思えて、急いで後を追いかけた。
外は、もうすっかり冬に近づいて、冷たい秋風が私の耳を掠めていく。
君に何か言おうかと思ったけれど、その横顔が、今までみたことのない表情で、私は何も言わなかった。
でも、あの時、なにか言えば、少しは変わってきたんじゃないかと今でも思ってしまう。
何年も一緒に話しながら歩いてきた坂道を、その日は何故か一言も話さずにのぼって、目も合わせないで、手も握らなかった。
いつもなら、あっという間の短い坂道が、まるで複雑な迷路に迷い込んだかのように感じて、私はマフラーに顔をうずめた。
私の数歩先を歩く君のスニーカーを見つめながら。
君は、坂を登りきると突然、歩くのを止めた。
私は、止まりきれなくて、そのまま君にぶつかってしまったけれど、君は振り向かなかった。
しばらくの沈黙の後、君が口を開いた。
「……結、別れよう。」
街路樹が、秋風に吹かれて、カサカサと音を立てていく。
でも、私にはそんな音耳には入ってこなかった。
「今・・・な、んて?」
そんなはずはない。どうして。なんで。別れる・・・???
様々な思いが頭の中で回り始める。
君は、「ごめん」と小さく言いながら、俯いた。
「分からない。分かんないよ!」
私は、意識とは別に、叫んでいた。
目頭が熱くなってきて、私は、思いっきり目を瞑って下を向く。
「分かんない……いきなり言われたって、分かんない……」
最後の方は、もう涙声になってしまっていた。
でも、君は変わらず、俯いたまま「ごめん」を繰り返すだけで。
「嫌いになったんなら、その時すぐに、冷たくしてくれたらよかった!!!」
私は、目から涙が零れてしまうのも気にせずに、君に叫んでいた。
君は、一瞬驚いた顔をして、それから、泣きそうな顔で笑った。
そんな君に堪えられなくて、これ以上、君を見ていると、小さい子の様に大泣きしてしまいそうで、私は君に背を向けた。
でも、一度あふれた涙はなかなか引っこんではくれなくて、嗚咽を隠すので精いっぱいだった。
そんなとき、左手に君の体温が触れた。
「本当に、ごめん。でも、もう君を心から好きでいられない。」
絞り出したような、掠れた君の声。
私と君の手に、雫が二つ、ポタリと落ちた。
二つの手には、お揃いの指輪が光っている。
指輪は、何事もなかった昨日と同じように光っていて、余計辛さを倍増させた。
その無言の時間も、酷く辛くて、私は君の手を振り払った。
どうして、振ったのは君なのに、そんなに泣いているのかと思うような顔をしていた君は、さらに、泣き顔をした。
私は、左手に付けていたお揃いの指輪をはずすと、君に渡す。
自分の一部の様につけてきた、指輪が消えた私の薬指は、まるで存在が無くなったかのようだった。
君は、無理やり作った笑顔を私に向けると、自分の指輪も外して、坂の少し先にある橋の上から、川に向けて指輪を投げた。
二つの指輪は、キラリと光って、すぐに川の流れに消えて行ってしまった。
まるで、私たちの短い恋の様に。
私たちは、お互い酷い泣き顔のまま、一つの恋を小さな宝箱に入れて、鍵を閉めた。
明日からは、もう他人。
今日の名残で、目が二人で腫れていたとしても、もう、戻れない。
だから、せめて、と。
橋から、川を眺める君に向かって、私は今までで一番の笑顔で手を振った。
二年三ヶ月半の小さな恋に、今、一人で乾杯を。
なんか。。。すいませんでした!!!
こんな駄文を、晒していいものか・・・。
P.S)尖角さん、私の実力はこんなもののようです・・・;