第六話 真実
天使になったばかりの頃を思い出す。
「人間は愚かな生き物だ、ミカエル。」
「はい、神様。」
違う…嘘よ。
確かに人間は愚かなのかもしれない…でも、康貴くんは私が人間だった時もそうだったし、今も優しかった、一緒にいて楽しかった。
今、神様は康貴くんたちを消そうとしている…
そんな事はさせない!!
「早く、神様の所へ…」
天国へ繋がっている扉『ヘヴンズドア』へ私は向かった。
「人間の頃の記憶を思い出したのかい、ミカエル?」
扉を開けると奥に神様が立っていた。
「はい…」
「キミは今になって人間の味方になるというのかい?キミは人間に殺されたんだよ?」
確かに私は人間に殺された。
でも、そうだとしても全ての人間を憎いわけじゃない。
「私は…神様は間違えていると思います。」
「間違えている?この僕が?そんなのありえない!!僕は神だぞ!」
神の怒りは周りの空間に影響を与える。
一瞬にして空間は大爆発を起こした。
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「愚かな人間に破滅と再生を。」
全てはこの神様の言葉からだった。
神様は人間を創り直すとおっしゃったのだ。
当時、人間の頃の記憶を無くした私は神様の意見には賛成していた。
「ミカエル、面白いことを思いついたよ。」
「何ですか?」
「ただ、人間を消すだけじゃつまらないだろう。一人の人間が死んでいく様を見ながら、やろうと思ってね。」
一人の人間で、たくさんの人間を消す方法?
「どういうことですか?神様?」
「死んだ人間を他の生きた人間の魂を使って再構築させ、生き返らせるのさ。そうすれば、その人間が死ぬたびに他の人間は魂が無くなって消失するだろう。」
神様はこんな酷い事を楽しみとして、行っていた。
許せない…
その人間に康貴くんを選んだこと。
康貴くんの監視に幼なじみだったこの私を行かせたこと。
そして全ての人間を消そうとしていること。
「だから、もうやめてください。神様。」
とにかく、魂の再構築をやめさせなくちゃ…
「嫌だ!僕はもう決めたんだ。この人間たちも愚かであると…だから、創り直すのさ!!」
でも、そんな事したら、康貴くんに…
私はもう康貴くんに会えなくなってしまう。
「だったら、力ずくでも私は神様を止めます。」
「止める?この僕を?神に逆らう事はどういうことか分かっているのかい?」
翼を大きく広げて、私は超高速で神様に向かって突進する。
「行けぇぇぇ!!」
だけど、私の攻撃は途中で終わった。
体中に無数の刃が私を襲う、あの時と同じように…
「あなたたちは!?」
神様に仕える、他の天使たちであった。
「待ってたよ。ラファエル、ガブリエル。」
「どうやら間に合ったみたいですね。」
大きな槍を構えているのがラファエル。
「神ちゃん、あとはうちらに任せとき!」
そして筋肉質の男がガブリエル。
「痛っ、血?血が出てる…」
さっき受けた傷口から血が出ている。
「おやおや、ミカエルにはまだ言っていなかったね。ラファエルが持っている槍の事。」
まさか、あの槍は!?
「そうだよ、『聖槍』またの名を『ロンギヌスの槍』さ。」
「この槍は聖なる武器です。我々、天使にも傷を与えることのできる物です。」
「まぁ、諦めろってことやな。」
そんな…私は…
ごめんね、康貴くん…
本当にごめんなさい。