第四話 記憶
天使は元々は人間だ。
と誰かから聞いた事がある。
じゃあミカエルはどんな人間だったのだろうか。
そんな事を考えながら、俺はもう何千回も死んでいる。
「なんで、俺はこんなにも死ぬんだ?」
最初は自分に与えられた、もう一度生きるチャンスだと思っていた。
でも変だ、何かおかしい。
トラックを避けても俺は死んだ、何度足掻いても必ず死ぬ。
まるで神は俺に無駄なチャンスを与えているようにしか見えない。
「ミカエル?おい聞こえているのか?」
「え…はい?何ですか?」
ミカエルは何か考え事をしているように見えた。
やはり、何か隠しているのか?
「教えてくれ、神がやろうとしている事を。」
「ふぇ?神様ですか?神様はあなたを不死身しただけですよ。」
「そんなの嘘だろ?何か目的があるんだろ!教えてくれよ!」
俺はミカエルの両肩を掴み、激しく揺する。
「ちょっ、ちょっとやめて下さい!」
「あ…悪い…」
ミカエルが嫌がる素振りを見せ、俺はすぐに手を離した。
永遠に『今日』を生きている俺は、そこから抜け出すために必死になり過ぎていたんだ。
女の子には秘密の一つや二つぐらいあってもいいじゃないか。
ダメな男だな、俺って。
「え?何なの…痛い。頭が…痛い…」
「おい、どうした?ミカエル!?」
急にミカエルは頭を抑えながら、しゃがみ込んでしまった。
「ごめんなさい…康貴さん…」
「えっ?」
そう言って、どこか遠くへ飛んでいってしまった。
ふと、俺はある事を思い出す。
「しまった、この時間は!?」
地震だ、近くには今にも倒れそうな電柱もある。
またこのパターンかよ…
-
宇宙空間にも似たような場所に一人の男がいた。
彼は全ての創造者でもあり、破壊者でもある。
「ミカエルが暴走したみたいだね。」
そう、彼こそが『神』である。
「ふ…まぁいいや。少しは面白みが増すかな…」
神は一人、笑っていた。
-
痛い…私は一体どうなるの?
天使は本来、痛みなんて感じないはずなのに…
何なの?私の頭の奥から何かが…
え?康貴さんがいる…
「美香ちゃん、一緒に遊ぼうよ。」
「うん、行こう。康貴くん。」
美香…?私の名前…?何?これは…昔の私の記憶?
私の人間だった時の記憶なの?
この場面は!?
私の最後の記憶…死ぬ時の記憶。
「嫌ぁぁ!!やめてぇ、痛いよぅ…助けて…」
突然、家に入ってきた男にナイフでたくさん刺されたんだ…
まるで地獄のようだった…
「ねぇ、起きてよ…美香ちゃん…美香ちゃん!!」
「やめなさい、康貴…美香ちゃんはもう…」
「康貴くん、私はここよ、ここにいるの…」
あの時、私は死んだ事も分からなくて、ずっと叫んでいたっけ…
でも、私が康貴さんと幼なじみだったなんて…
酷いです、酷いですよ神様…
私に康貴くんを騙させるなんて。