第一話 死夢
夢を見た。
『自分が死ぬ夢』だった…
いつもの朝、いつもの自分の部屋、俺はそこで目を醒ます。
「母さん、おはよう。」
「おはよう康貴。」
「行ってきます。」
そして、いつもの会話。
でも、そこからは俺の『いつもの』ではなかった。
高校まで5分、そんな短い通学路で俺はトラックにはねられた。
即死だった…はず…
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夢だった。
「なんだ、夢か。嫌な夢を見ちまったぜ…」
いつものように俺は学校へ向かった。
夢と同じようにトラックにはねられた。
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夢だった。
「おかしい…おかしいぞ、コレ…」
気づくのが遅かったのかもしれない。
「実は、俺は何回も死んでいて、その度に何回も生き返っている!?」
そんな馬鹿な…
試しに、もう一度通学してみる。
トラックが来たのはちょうどこの辺り…
すると、ものすごい速度でトラックが俺に向かってきている。
運転席を見ると、運転手は眠っていた。
「あ、危なかった…」
流石に三回目だ、間一髪で避ける事に成功した。
しかし、それだけでは無かった。
「ぐはぁっ!!」
大量の血が俺の体からこぼれる。
俺の背中からカーブミラーの柱の部分が貫通していた。
そ、そんな…
トラックがカーブミラーに当たり、その衝撃で俺に向かって柱が飛んできたのだ。
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「わけが分からねぇ!どうなっているんだ!?」
ベットの上で叫んだ。
「どうしたの?康貴?」
心配そうに母さんは声をかけてきた。
そういえば母さんは俺が死んでいる事が分かっているのだろうか?
いや分かるわけないか。
「俺、今日学校休むよ。」
「あら、そう?じゃあ、母さん仕事行くから。」
これなら、俺は死なない。死なずに済む。
はずだった…