スカイブルーの、虚実の日記帳
この世界は僕にしてみれば、いわば幻想のように感じられるんだ。僕の脳の中には、あらゆることを指図する、絶対的な存在がいて、そいつは、時々、私を揺さぶり、声をかけてくる。何が幻想で、何がリアリティなのか分からないんだ。
ある日、瑠夏は、マジックアワーの時間帯に、ピカピカと白く光る、煙突についた航空灯を眺めながら、電柱の並んでいる干潟で、夕日の沈んでいった方向を背景にしながら、一人、歩いていた。
ただ、瑠夏にとっては、それはただ寂寥の思いで一人だけで歩みを進めていると、現実的に完全に認識できているわけではなかった。瑠夏には、どこからか聴こえてくる、街中で鳴らされているサイレンの音、「こっちにおいでよ。」と姿は見えないのに、360度ランダムに、発声源を遠ざからせたり、近くさせたりしながら、語りかけてくる、少女の不純ない声が、聴こえていた。
干潟の向こうの道路を挟んだ先にある、幾つかの、木造の家々は、そんな瑠夏を「知ったことか。」と見つめながらにして、放置する悪魔のように瑠夏には思えた。
瑠夏は、せめて、その瞬間だけでも、平和な感覚が戻ればと思った。まるで、白い鳩の喜んで飛ぶような、平和な世界だけを認識できたらと思った。
でも、そんなことは、その時の瑠夏にはできないことだった。だから、少しでも楽になりたいという思いから、目を閉じて、耳を塞いだ。すると、母なる海に包まれたような感覚になって、やがて、深い深い海、まだまだだが、地球の深奥へと落ちていくような、不思議な不思議な気持ちに陥った。
沈みゆく、自分は、このまま自然の一部になるのかもしれない。まるで溶けていくように、この母性愛溢れる地球と一体化していくのかもしれない。彼の脳内は、そんな思いで満たされた。
深海では、たくさんの白い流星群のような、白い光が、ばらばらの方向から出てきて、ばらばらの方向に突き進んでいった。ぶつかったら、幾つもの、白い光が、飛散した発光体から発されていった。
そのぶつかる過程は、生命の死ぬ瞬間なのだと、その白い光が生命なのかどうかすら分からないのに、瑠夏には感じられた。
やがて、瑠夏も白い光となった。そして、他の白い光とぶつかった。
瑠夏は、遥か遠くに、幾つもの、煌々と、空間を照らす恒星があるのが見えた。瑠夏は、まるで天の川銀河のブラックホールに見つめられているような気持ちになった。
瑠夏は、宇宙を浮遊した。それはまるで海月になったかのような気分だった。時の流れは確実に、地球での喧騒の日々と比べてゆっくりと感じられた。
もう何もできない。もう何もしたくない。もう何も認識しない。
瑠夏の身体は、段々と宇宙空間に溶け出していった。




