第一話 告白
「私と…付き合ってください。」
忘れもしない、桜が咲き誇る4月。
僕は、告白された。
0日目 告白
「いやいやいや…初対面ですよね?」
というか、誰だ、この人。
男子高校生ならば告白というのは誰しもが望むだろう。
実際、僕も少し期待していた。
高校生活の3年間で、一度くらいはされたい…と。
でも、なぁ……
「流石に…入学式は………」
「私は…愛に理由なんていらないと思うの。」
「いやでも貴方…先輩ですよね?」
僕の入学した高校、東桜高校では、制服についている校章の色で学年が分かる。
3年から順に、青、赤、緑となっている。
そして今目の前にいる人物の色は…赤。つまり、僕の一つ上の先輩だという事だ。
そして今日は入学式。2年生と3年生は通常授業の為、顔を見る事もないハズ。
なのに、この先輩は帰ろうとした僕を引き留め告白してきたのだ。
「私は以前から貴方を知っていたの。だから初対面では無いわ。」
「えっ、会ったことありましたっけ?でしたらすいません。」
記憶違いであれば申し訳ない。
そう思いすぐに謝罪したのだが…
「いえ、貴方が謝る必要はないわ。だって、私達が会話したことなんてこれが初めてだもの。」
それを世間一般では初対面というのでは?
というか、だったらなんで先輩は僕を知っているんだ?
「貴方…オープンハイに来てたでしょ?その時にビビッと来たのよ。この子は…運命の相手だと。」
あ〜、確かに来たな。
思い返してみると、そこで先輩を見た事があるような…無いような…
「それから貴方の中学校を調べて、放課後の様子を見ていたのだけれど…百点だわ。私の彼氏にピッタリよ。」
「……え?」
聞き間違いだろうか。
中学校を調べる…うんまぁ、名前と中学校の確認は大事だもんね。
放課後の様子を調べる…はい、アウトです。まさか入った高校にストーカーがいるとは、ビックリだ。
「先輩…自首しましょう。今ならまだ間に合います。」
「なんでよ!?」
なんでって、そりゃあ…ストーカーは普通に考えてダメでしょ。
「倫理観がなぁ……倫理観が欠如しちゃってるんだよなぁ…」
「聞こえてるわよ!?で、でもこうも考えられるでしょう?」
ものすごい勢いで捲し立て、一拍をおいて、
「私はそれほどまでに…恋に真剣なのよ。」
真剣…ストーカーは真剣と言えるのか?
僕はどうやら入る高校を間違えてしまったようだ。
「いえ、貴方の観察眼は二重丸よ。なんと言ったって、私のいる高校に来たんですもの。」
普通に心読んでくるんだもんなぁ…
妖怪かな?さとり妖怪だったりするのかな?
とまぁ、随分と話が逸れた気がするけど…
「普通に、ごめんなさい。」
「な、なんで!?」
雷に打たれたようなリアクションをとっているが、先輩がおかしいだけだろう。
僕は決しておかしくない。至って正常だ。
「先輩が恋に真剣…本気なのは分かりましたよ?ですが、僕は何も知らない人と付き合うほど節操のない人間じゃありません。」
「ふふ…さすが私の見込んだ男…百点ね。」
嬉しくない。全くもって嬉しくない。
何故だろうか。この先輩に褒められても嬉しいよりもゾワっとした何か…これを寒気と言うのならば、おそらくそれだろう。
「取り敢えず…僕はもう帰りますね。ありがとうございました、先輩。」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
そう言って去ろうとした僕を、先輩が引き留める。
「私は、絶対に貴方を振り向かせて見せるわ!」
「…そうですか、そこはまぁ、自由にしてください。」
おっと、そう言えば名前を言っていなかった気がする。
「よろしくお願いします、先輩。僕の名前は……」
「知っているわ!無月愁ね!」
「えコワ。」
マジか…いや中学校を知ってるなら名前も知ってて当然……か?
いやそれでも人の自己紹介は遮らんだろ、普通は。
「えっと…それで、先輩の名前は?」
恐る恐る尋ねる。
正直言えばサッサと帰りたかったが、何故だろうか。
目の前にいる先輩は、どこか、キラキラと輝いていた。
誰もが足を止まらせる。そんな存在感を放っている。
「覚えておきなさい!私の名前は───────」
※
「…って事があってだな。」
「ふふ、それは災難だったね。」
家に帰った僕は、僕の姉…無月時帆と話していた。姉と言っても、血は繋がっていないから義理の姉弟だけど。
内容は勿論今日の事。流石に告白の内容が強烈的過ぎて誰かに相談したい気分だった。
名前はちゃんと伏せている。何故なら、僕の姉は僕の通う高校の卒業生だからだ。
「そういえば…今の生徒会長は、カリスマ性が凄いらしいよ。」
「へ〜、それは気になるな。やっぱりパッと見で分かるもんなのかな。」
「うーん、印象には残るんじゃないかな。私がいた頃に話した事があったけど、すごくキラキラしてたんだよね。」
「名前は?覚えてる?」
「うーんと、確か…」
首を傾げ思い出す素振りを姉さんだが、やがて思い出したのか指をピンと立てて…
「思い出した!歴代最高のカリスマ性を持つカリスマ生徒会長の名前は〜…」
名前は…!
「金元色無!」
「……へ?」
その瞬間、頭の中で今日の出来事がフラッシュバックして…
『覚えておきなさい!私の名前は、金元色無よ!』
そんな言葉が、鮮明に聞こえた。




