第20章「臨界点」
【渋谷スクランブル交差点 午前9時】
朝日がビルの谷間から差し込む。
数千の若者たちが、スマホのライトを灯しながら静かに立ち尽くしていた。
ハッシュタグ #SilentNoMore を掲げる抗議運動は、全国に拡散していた。
その中心には、stigmaの音楽が流れている。
【東京・霞が関 国家安全保障局】
椎名補佐官はモニターを睨みつけていた。
「情報拡散は止まらない。国家の信用は地に落ちている」
側近が報告する。
「国会議員の数人が辞任表明、野党も追及の声を強めています」
椎名は唇を噛んだ。
「このままでは、我々の存在すら危うい……」
【stigma秘密拠点・代々木地下通路】
ロキがナナとユーマに言った。
「これが臨界点や。俺らの声は届いた」
ナナが頷く。
「でも、これからが本当の戦い」
ユーマは決意を込めて拳を握る。
「ここからは、静かに、そして確実に国の腐敗を炙り出す」
【歌舞伎町・港区女子ネットワーク】
ルカはスマホで映像をチェックしながら連絡を取っていた。
「私たちも動くわよ。裏社会の力も借りて、情報統制を崩すの」
彼女のネットワークは、風俗嬢から暴力団関係者まで広がっていた。
【新帝国同志会・内部動揺】
鏑木義仁は焦りの色を隠せなかった。
「我々が抱える秘密が暴かれれば、組織は崩壊する」
幹部の井口忠正が答える。
「対抗策として、内部にスパイを送り込んでいるが……」
寺沢礼司が冷たく言った。
「時代の流れには逆らえぬか」
【メディアの動き】
主要テレビ局は、政府の圧力を受けつつも報道を続けていた。
ネットニュースや独立系ジャーナリストの取材が追い風となり、真実がじわじわと社会に浸透していく。
【ユーマのライブ配信】
夜、ユーマは密かにライブ配信を始める。
「この国の闇は深い。でも、闇の中に光があることを俺たちは知ってる」
「見ていてくれ。俺たちはまだ終わらへん」
【新たな監視の目】
しかし、公安は次の一手を打つ準備を進めていた。
戸田耕一郎が独りつぶやく。
「奴らを完全に消すまで、終わらん……」




