第18章「焦土の契り」
【新宿・歌舞伎町 第七区画 "影巣ビル" 地下】
地下駐車場を改造した秘密会議室に、stigmaのメンバーと支援者たちが集結していた。
ルカは腕に包帯を巻きながら、地図を机の上に広げた。
「この“影巣ビル”の地下ケーブルを辿れば、公安庁の地下監視網のルートに繋がる」
ユーマが頷いた。
「つまり、奴らの“脳”に直接アクセスできるってことやな」
「そう。でも……リスクも高い。あたしら、全員“テロリスト”にされてる」
ロキがゆっくり立ち上がる。
「それでもやる。玲子のデータを、全世界に生配信する。“この国の脳”をハッキングするんや」
【新帝国同志会・構造図】
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【新帝国同志会 総構成】
┌──────────────────────┐
│ 総帥:鏑木 義仁(68歳) │
│ ↓ │
│ 幹部会(軍事/思想/政治) │
│ ├─ 軍事部門:井口 忠正(元陸自三佐) │
│ ├─ 思想広報部:南條 卓(元大日本青年連盟) │
│ └─ 政治連携部:寺沢 礼司(元都議・現参謀) │
│ ↓ │
│ 青年行動隊「櫻楯会」(構成員 約120名) │
│ └─ “統制型暴動”訓練/右翼思想教育/火器運搬 │
└──────────────────────┘
【襲撃計画】
ロキは手元のタブレットに、玲子が遺した“公安内端末ルート”を表示する。
「23時に“影巣”から接続。2分後、同時に“stigmaファイル”を世界300拠点に拡散。東京湾岸データセンターをハブにする」
「失敗したら?」
ルカが問う。
「……誰かが死ぬ」
沈黙。
だが、ナナが口を開いた。
「玲子が命懸けで残したことや。あたしらが黙ったら、それがほんまの“死”やと思う」
【23:00 決行】
暗号化回線を経由し、東京湾岸に接続開始。
ユーマが赤いスイッチを押す。
“STIGMA SYSTEM // ONLINE”
だが、次の瞬間、接続が遮断された。
「……ファイアウォールに割り込まれた!」
ルカが叫ぶ。
「誰かが、内側から妨害してる!」
【公安庁地下・制御室】
防弾ガラス越しに制御盤を監視する公安庁統括官・戸田耕一郎。
横に立つのは──白鷹会の総帥、三神清一郎。
「若い芽は、早めに刈っておくに限るな」
「ええ。ただ……この芽は、“火薬”やったみたいです」
ふたりの背後、非常回線が突然開いた。
「──お前らこそ、腐った根やろ」
スピーカーから流れるのは、ロキの声だった。
【接続再開】
stigmaの接続回線が復旧。
玲子の音声データと映像、厚労省との裏取引、警察庁特別監視班の内通記録が次々と拡散。
Twitter、Reddit、Telegram、DarkWeb──世界中に飛び火。
“Japanese Bio-Terrorism Scandal”のタグが、国際トレンド1位に。
【爆破と再生】
その瞬間、ルカが仕掛けた**EMP弾(電磁パルス)**が“影巣ビル”の天井を打ち抜いた。
白鷹会の監視ドローンは墜落。
同時に、全国の「新帝国同志会」施設への強制捜査が始まる。
【ユーマの独白】
画面越しに、ユーマが語りかける。
「これはただの音楽でも、ただの復讐でもない」
「人間っていう“存在そのもの”を、誰かのプログラムにしないための……反抗や」
沈黙。
数秒ののち──世界が、震えた。




