第16章「咎の塔」
【歌舞伎町・第六地区/“双頭館”】
新宿歌舞伎町の奥地。“双頭館”と呼ばれる廃ビル。
そこは、白鷹会の中核を担う右翼団体「新帝国同志会」の拠点だった。
組織構成:
- 総帥:鏑木義仁
- 幹部:井口忠正(軍事部門)、寺沢礼司(政治連携部)、南條卓(思想広報部)
- 実動隊:青年行動隊「櫻楯会」
“統制型市民暴動”を引き起こす訓練施設として、旧自衛隊の教官が常駐している。
【stigma、潜入】
ユーマとルカは、偽装カメラを装着し、廃ビル地下のホールに潜入した。
壇上では、鏑木総帥が演説していた。
「この国を守るのは、我々“日本の血”だけだ! 病者と売女、外道どもは浄化せねばならん!」
歓声とともに、高らかに振られる旭日旗。
ルカが耳元で囁く。
「ここに、薬の元締めも出入りしてる。“NEX”って記号が付いた赤いカプセル」
「耐性菌拡散の鍵か……玲子が言ってたやつや」
録画開始。
【ナナ、襲撃される】
同時刻、大阪。
ナナはSNSで突如拡散された“売春斡旋の過去”を晒され、地元テレビ局が自宅前に押し寄せた。
その混乱に紛れ、覆面の男たちが彼女を車へと引きずり込む。
後部座席には、公安のバッジを持つ男──戸田耕一郎。
「次は君が、玲子の代わりになる番や」
ナナの目に、強制投与用の注射器が映った。
だが、ナナはバッグから小型電気ショック装置を取り出し、男の手首を焼いた。
車は暴走。電柱に激突。
ナナは血まみれのまま、車外へ転がり出た。
【ユーマの決断】
廃ビルから戻ったユーマは、ロキと再会。
「ルカは奴らに気づかれた。多分、今頃……」
ユーマの瞳には、怒りと迷いが交錯していた。
「もう、ライブじゃ足りへん。実行せなあかん」
ロキは頷いた。
「“塔”を崩すんやな。俺たちで」




