第14章「暴かれる神殿」
【東京ドーム 深夜】
照明の落ちたアリーナに、巨大なLEDパネルが設置されていた。
玲子が残したSDカードを再生するため、ロキたちは秘密裏に運営の技術班を買収。
stigma結成10周年ライブ。開催まで、あと48時間。
【公安監視センター】
室内に流れる映像。玲子の映像が一部リークされたことで、慌てふためく公安四課の班長が叫ぶ。
「止めろ!ドームの映像回線をハイジャックされている!」
部下が返す。
「無理です、暗号化方式が……旧ソ連製の軍用通信です」
「玲子……あの女、何を仕込んでやがった……」
【ドームライブ 開始30分前】
ナナが、ステージ袖で自らの体温を確認していた。
HIV抗体検査の偽陽性反応。
「もし……あたしが本当に感染してたら、あたしも実験対象だったってことよね」
彼女の横に立つユーマが、ポケットからペンダントを取り出す。
「玲子さんが言ってた。“沈黙は服従じゃない”。叫ばない選択もある」
だが今夜、彼らは“叫ぶ”と決めていた。
【ライブ本番】
「STIGMA!」
観客7万人の絶叫。
照明が落ち、映像が映る──玲子の声。
「見て。この国の“神殿”の裏側。ここには“人”がいない。欲と数字だけがある」
映し出されたのは、性病感染を用いた社会層の隔離プログラム、
出生前スクリーニングによる胎児レベルの差別選別、
そして裏金で動く厚労省職員たちの肉声記録。
ステージ上のロキがマイクを握った。
「黙ってる理由なんて、もうないやろ」
ユーマが続ける。
「これが、俺たちの答えや──」
曲が始まる。タイトルは《Godless》。




