第9章「南條辰巳」
【大阪・新世界裏通り 深夜】
闇に溶け込む赤提灯の明かり。
酔客の笑い声と吐息が混じり合う中、
一台の黒塗り高級車が路地の奥に止まった。
車から降りたのは、南條辰巳──大日本維新同志会の実質的な長、そして中之島連合とも深く繋がる関西裏社会の“影の支配者”だ。
70歳を目前に控えながらも、その目は冷徹に街を見据えていた。
【過去の傷】
かつては右翼学生運動の先鋒。
やがて暴力団や政治家との癒着を深め、
表の顔は“地方議員”、裏の顔は“非合法暴力組織の総帥”としての二面性を持つ。
彼の背中には、かつてのリンチ事件の古傷がくっきりと残っていた。
その傷は、彼の過激な行動の象徴であり、過去の敵との果てしない抗争の証でもあった。
【組織構造】
南條の指揮下にある大日本維新同志会は、関西の右翼を束ねる組織。
その内部は複雑に分裂しながらも、一致団結して中之島連合と密接に連携していた。
■大日本維新同志会(関西)
├─ 南條 辰巳(総帥)
├─ 山岡 修司(副長・経済担当)
├─ 藤田 恵一(組織暴力担当)
├─ 西村 透(情報・諜報担当)
└─ 複数の地方支部長・幹部
【現状の危機】
三田村渉の失踪、クロスピアの壊滅により、南條の勢力にも激震が走っていた。
若頭・早乙女勲も動揺を隠せず、
南條はその指示で、次の段階の準備を開始した。
【港区女子・薬物ルートの掌握】
南條は大阪の港区を“実験場”として活用し、薬物と性産業を通じて情報と資金の流れを完全掌握。
薬剤耐性性感染症の拡散も彼の指示で行われていた。
「若い命を弄ぶのは、手間も金もかかる。
だが、それで得られる利権は莫大だ」
そんな言葉を吐きながら、南條は港区の裏通りで夜の支配を確固たるものにしていた。
【stigmaとの対峙】
一方、ロキたちが新たに入手した情報は、南條の名前が直接関与する大規模な違法ネットワークの存在を示していた。
玲子は南條に対し、復讐と裁きを誓う。
「奴の影を追うには、組織の中枢を狙うしかない。
そして……stigmaの力を使う」
【最後の決意】
新世界の酒場で、ロキはユーマ、アサトと共に固く拳を握った。
「これは、俺たちの戦争だ。
音も、言葉も、暴力も使う。
だけど、無意味な死は出さない」
夜風が吹き抜ける中、三人の影が長く伸びていった。




