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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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感情だけが残ったこの世界で、俺は君ともう一度やり直そうと思う

作者: パミーン
掲載日:2026/02/15

久方ぶりの再構築系のお話を書きました。


この作品は2025年の6月にできた作品です。

「赦しはまだ、ページの向こう」を書く前にできた作品です。


設定はざるなのでご容赦ください。

「歩には悪いけど、私は明良と付き合うことに——」


ブチッ!


 あ、また過去が変わった。くそっ!ここ最近嫌なことばかり思い出させてくる。


 先月、ついにタイムワープの仕組みが解明された。でもまだ完全に解明された訳ではなく、現時点では過去に戻ることができるようになっただけ。


 そうしたら俺の過去に起こった出来事がどんどんと変わっていく。困ったもんだ。なんで困ったかというと、過去が変わっても変わる前の感情だけは残るからだ。


 しかも変わった瞬間に思い出したくもない感情が掘り起こされてしまう。ようやく過去のことを乗り越えられるようになったばかりだから余計に腹が立ってしまう。


 俺の過去を変えているのはおそらくあいつ——宮崎小春だろう。





 俺と小春は年は同じで家がお隣なもんだから、いわゆる幼馴染という関係だった。いや、今は過去が変わったから幼馴染の関係は続いていることになってしまっている。


 出会った時から常に一緒にいた。友達ももちろんいるが、お互いの友達も交えて一緒に行動するくらいには仲が良かった。これも過去が変わったから仲が良いのも変わらないことになってしまっている。


 そんな俺と小春は高校生になると周りからカップルだと認識されるようになった。実際、どちらから告白した訳ではなく、お互い付き合ってるという感じではあった。これも過去が変わったから今も付き合っているかというとそうではない。


 なんせ俺は今青森県、小春は地元の千葉県で物理的に離れているのと、俺にはもう小春に対して恋愛の情は持ち合わせていないからだ。


 先ほども言った通り、過去は変わっても感情だけは残る。小春が俺にしたことがなかったことになったとしても、裏切られた感情だけは変わらず俺の中に留まっている。


 あれは高校三年の時だった。大学に進学する予定だった俺と小春は受験勉強に勤しんでいた。ちょうど夏休みに入る前、転校生がやってきた。なんでこんな時期に?とは思ったが、色々事情があったんだろう。名は三宅明良。かなりのイケメンで全国模試では上位に入るほどの実力があった。


 夏休みに入ると俺と小春は高校の夏期補講に参加した。その中には三宅もいた。三宅は補講が目的というよりも女子を引っかけるのが目的だったようで、頻繁に女子に声をかけては補講後に遊んでいた。


「三宅君ってかなりの女たらしみたいだよ。あんな奴最低だよね」


 そんなことを言っていた小春だったから俺は安心していた。しかし結局三宅は小春をターゲットに絞り、俺と付き合ってるにも関わらず小春を奪っていった。そしてもちろん小春も俺がいるにも関わらず、あっさりと三宅に乗り換えたんだ。


 それだけならまだしも、乗り換えた後の三宅と小春の付き合っているという見せつけは俺の心を盛大に抉った。


 もう関わりたくない。その一心で俺は青森というかなり離れた地の大学へと進学した。


 これは俺にあの裏切られた時の感情が残っているからその出来事を覚えているのであって、もう過去は変わってしまっているから小春は三宅に乗り換えてはいない。見せつけに関してもこの数週間でなかったものになっている。


 少しずつ過去に戻りながら過去を変えていっている小春。理由が分からない。





 朝、目覚めるとそこにはエプロンを着けて朝飯を作っている小春がいた。どうやら過去を変えて俺と同じ大学に進学したんだろう。


「あ、おはよう歩。もう少しでご飯できるからね」


 過去を変えても感情は残る。であるなら今の小春にもあの時の感情が残っているはずだ。だというのに、いかにも普通の感じで接してこれるのはどう考えてもおかしい。俺は頭がクラクラした。


「お前、なんでそんな平然としていられるんだ!裏切った時の感情は残っているだろう!」


 瞬間、小春の顔は青ざめた。そしてぼろぼろと涙を溢し始めた。


「ごめんなさい」


 頭を深々と下げて謝る小春。


「過去を変えれば全部元に戻れると思っていた。でも感情だけは残るなんて思ってもいなかった。三宅に対する感情も消えないし、歩を裏切ってしまった感情も残っている。都合のいいようにはできていないんだね……。本当にごめんなさい!」


「うるせえ!やっと気持ちも整理できてきたのにそれをほじくり返しやがって!俺はもうお前とはいたくない!そうだ!俺がこれから過去に戻って元の状態に戻してやる!そうすればお前もここにいなくなる!」


 名案が思い浮かんだ。俺も過去に戻って三宅と小春の関係を元に戻せば何もかも元通りだ。もう二度とこいつとは関わりたくない。俺は家を飛び出してタイムワープできる場所へと向かった。





 タイムワープをして高校三年の時に戻ってきた。これから三宅と小春をくっつければ元に戻る。俺は放課後になるのを待ち、小春が現れるのを待った。


 ちょうど小春が学校を出てきた時だった。未来の小春が現れた。そうか、あいつも過去に戻っているからこういう現象が起きるのか。


「あなたにちゃんとした未来に向かってほしくてここに来ました。私は未来のあなた。信じてもらえるかな?ここじゃ目立つから喫茶店に行きましょう」


 驚きを隠せない過去の小春を半ば強引に連れて喫茶店へ向かう二人。俺も二人の動向を伺うためにこっそりついていった。


 行ったこともない本当にやっているのかさえ分からない喫茶店に入った二人。俺もバレないように変装して店内に入り、二人の会話が聞き取れる席に座った。


「いきなり現れて未来のあなただなんて言われても混乱するよね。でも本当の話だから信じてほしいの」


「私そっくりですからおそらく言っていることは本当なんだと思います。それでちゃんとした未来に向かってほしいってどういうことですか?」


「私もそうだったけど、今あなたは歩と付き合ってるという認識は持ってる?持ってないよね?だってお互いそういうこと言って付き合ったわけじゃないから」


「はい、周りからはカップル認定されてますけど、ちゃんと付き合ってるかどうかって言われたら付き合ってないと思います。正直なところ、歩から付き合ってほしいって言われたいと思っています」


 なんだって!?小春からすれば俺達は付き合ってるわけではないと思ってたのか。


「そうだよね。私も歩からの言葉を待ってた。でもね、そこに付け込んであなたを惑わせてくる存在がいるの。三宅明良。あいつはあなたと歩の仲を引き裂こうとしてくるの。実際私は三宅によって歩との仲を引き裂かれた。いや、私が歩を信じられなくなって三宅に靡いてしまうの」


「そんなわけないですよ!私と歩の間には誰にも切れない絆があるんですよ!」


「でも今あなたは不安で仕方ないでしょ?歩が本当に自分のことを好きでいてくれてるかどうかって悩んでいる」


「は、はい。そうです。ずっと悩んでいます」


「三宅はそこを付け込んであなたにこう言ってくるの。『熊田君が君のことをどう思ってるか知りたくない?』ってね」


 そうだったのか。俺がはっきりさせなかったせいで小春はずっと悩んでいたのか。


「そこから三宅は裏工作を始めるの。例えばたまたま歩が女子に話しかけられてるところに居合わせるようなこととか、告白されている場所を目撃させるとかね。とにかく私を不安にさせてくる。そうやって歩のことを信じられなくさせたところに三宅が付け込んでくるの」


「そうなんですね。でもそれって防ぎようがないんじゃ……」


「大丈夫。あなたが歩に付き合ってほしいって今すぐ伝えれば全部うまくいく」


「でも私のことを好きかどうかなんて分からないのに告白なんてできないですし、私は歩から告白されたいです」


「これ、何か分かる?」


 そう言って紙切れを見せる未来の小春。


「これはね、歩の遺書なの。読んでみれば分かるわ」


 遺書!?俺って自殺かなんかするのか?どうやらこの小春は俺のいる時間よりも未来から来た小春のようだ。


「こ、こんなことって……。未来の自分に言うのもなんですがあなたって最低ですね」


「そう、最低よ。好きな人を裏切って、好きな人をさらに傷つけて。今私は歩が自殺しないように少しずつ未来を変えながら過去に戻っているの。そうすればさらに傷つけた部分だけはなくなるから」


 なるほど、それで少しずつ過去が変わっていってた訳か。だが過去が変わる度に思い出すから逆効果なんだけどな。まあそれは今はいいか。


「それを読んで分かったでしょ?待っていたらダメなの。自分から掴み取りにいかないといい未来には辿り着かないの。だからお願い。歩といい未来に向かってほしい」


『自分から掴み取りにいかないといい未来には辿り着かないの』


 この言葉に俺は揺さぶられた。これは俺がやらないといけないんじゃないのか?小春が告白してOKしたとしても、俺からは自分の気持ちを伝えていない。それじゃまた小春を不安にさせてしまい、同じことを繰り返してしまうんじゃないか?


 俺に残った感情はそのままだ。変わらない。だけど、この時間軸の俺にはまだその感情はない。だったらちゃんと自分の口からはっきりさせた方がいい。いや、はっきりさせないといけない。俺にも原因があったんだ。ならちゃんと精算させないとな。


 俺は過去の自分の元へと走っていった。





 時間は夜9時。この時間帯までいつも図書館で勉強をしていた。だからこの時間を狙って俺は過去の俺に接触した。


「よう、歩。俺は未来のお前だ。未来を変えるためにやってきた」


 過去の俺は「は?」って顔をしている。まあ当然だよな。


「ちょっと話そうぜ。すぐ終わるから。な?」


 そういって近所の公園で話すことにした。


「結論から言うぞ。今のままだと小春は三宅と付き合うことになる」


「は?何言ってるんですか?俺と小春は付き合ってるんですよ?そんなことなるはずないじゃないですか!」


「そう思ってるのはお前や俺だけなんだよ。小春は付き合ってると思っていないんだ。正直これまで好きだとか付き合おうって伝えたりしてないだろ?だから小春は不安なままでずっといる」


「そんなの言わなくたって付き合ってるって分かるじゃないですか!」


「俺もそう思ってた。だけど、小春はそうじゃないんだ。俺はな、小春を三宅に奪われた未来のお前なんだ。だからそうなってほしくない。ちゃんと自分から好きだ、付き合ってくれって言葉にするんだ!」


「でも……」


 自分で言うのもなんだが俺ってこんなヘタレだったっけ?自分で自分を見てみるとなんてヘタレなんだと思う。ということは俺はヘタレなんだな。ショックだ。


「この後の未来を話しておくぞ。小春はだんだん三宅と仲良くなり始める。そして俺は二人がキスをしているところを目撃する。そこで小春に別れを告げられる。それからは小春と三宅がイチャつくところを見せつけられるんだ。もう地獄なんてもんじゃない。今の俺は大丈夫なんだが、どうやらさらに未来の俺は自殺するみたいなんだ。どうだ?そんな未来を防ぐのは好きだと伝えるだけで済むんだぞ?」


「それって本当なんですか?本当に未来から来たって証拠を見せてくださいよ!」


「じゃあこれでどうだ?これは俺が今通っている大学の学生証だ。なんで青森?って思うだろ?小春から離れたくて青森まで逃げたんだよ。こうやって逃げた人生で終わっていいのか?」


「……分かりました。あなたの言うことを信じます」


「よし!じゃあ今から小春のところに行って伝えてこい!」


「ええ!今からですか!?それは気持ちの整理が……」


「うるせえ!いいから今すぐ行ってこい!遠くで見守ってやるから」


 こうして過去の俺は小春に告白し、無事正式に付き合うこととなった。


ブチッ!


 目の前で見たから分かり切ったことだが、どうやら過去が変わったようだ。未来に戻ったらどうなってるんだろうか。





 先月、ついにタイムワープの仕組みが解明された。でもまだ完全に解明された訳ではなく、現時点では過去に戻ることができるようになっただけ。


 だから過去を変えたらどうなるのかなんてまだ分からないことだらけ。ただひとつ分かっているのは過去が変わっても変わる前の感情は残ったまま。


 過去の俺は小春と付き合うことになった。過去の俺は小春に裏切られ、傷つけられた記憶を持っていない。きっと幸せな生活を過ごしていることだろう。


 だが俺はどうだろうか?小春に対して恋愛の情はない。小春も俺を裏切ったこと、傷つけたことへの後悔の情は残っているだろう。そんな俺達がこのまま付き合うことはできるのだろうか?


 朝、目覚めると俺は実家の自分の部屋にいた。学生証を確認すると、都内の大学に通っていることになっている。過去が変わったから俺が青森へ行く必要がなくなったというわけだ。


 今日は学校をさぼって小春とちゃんと話をしよう。そうでないと俺はここから先へは進めない。


『話をしよう。俺の部屋に来てくれ』


 そうメッセージを送り、俺は小春が来るのを待った。思ったよりも小春はすぐにやってきた。いつもはだらしのない格好なのに、今日はかなり御粧している。


 あれ?いつも?だらしない?そんな記憶ないのになんでそんなことを思った?


「来たよ歩。言いたいことは分かっている」


「じゃあ、話は早いな。今後どうするか話し合おうじゃないか」


「そうそう、今後どうするか……って別れ話じゃないの!?」


「色々と確認することがある。別れるとかは一旦置いて話を聞いてほしい」


「……分かった」


「まず過去を変えようとしていたのは今の小春じゃなかった。もう少し先の未来の小春だった。これはどういうことだ?」


「そうなの。私の前に1年後の私が現れたの。歩が自殺したってね。遺書も見せてもらった。二人で話し合った。未来の私は後悔の情しかなかった。理由は単純。私は三宅に遊ばれてただけで、歩と私の仲を引き裂くことに悦びを感じていたってことが分かったから。つまり今の私はそれに気づかずのほほんと生きているだけ。確かめたら未来の私の言う通りだった。だから過去を変えようってなった」


「それで未来の小春が過去を変えていってたってわけか」


「そう。でも私は分からなかった。過去に起こった感情が消えないってことを。未来の私は知ってたみたいだけど。それでも過去を変えてでもあなたには生きて欲しかったと言っていたわ」


「それで今の小春の中にある感情はどういう感情だ?」


「後悔。それしかないよ。歩はどうなの?私に恨みしかない?」


「今の俺には正直小春への恋愛の情はない。でも過去の俺は最大限の勇気を振り絞って小春に告白したんだ。あいつにはこのまま幸せになってもらいたい。それを考えると小春とは付き合い続ける必要があると思っている」


 今ここで別れるのは簡単だ。でも過去のあいつからしたらなんでここで急に別れることになるんだ?って話になる。


「多分過去の小春もそうだ。後悔の念も何もないはずだ。それを考えれば俺達に恋愛の情がなかったとしても付き合い続けるべきだと思う」


「そうだね。過去を変えたんだからその責任はちゃんと取らなくちゃいけないね」


「そういうことだ。これから小春にどういう感情が湧くかは分からない。だけど、いい方向に行けるように努力はするつもりだ」


「え?それって……」


「過去の俺はな、勇気のある奴なんだ。でも俺はヘタレなんだ。だから今は何も言えない。言うべき時が来たら言う。それでいいか?」


「うん……。今度は絶対に信じ続けるよ」


 こうして、一度終わった恋がもう一度動き始めたのであった。

過去のできごとをあっさり書いているのは過去が変わったことで曖昧になっているため詳細に書けないという感じにしています。でも感情だけは残っているというのを心がけました。


2人は今も傷を抱えて生きています。この2人が今後どうなっていくのかをいつか書けたらいいなと思います。

お読みいただきありがとうございました。


感想をいただけると幸いです。

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