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レベルの上限

 3日後もウォルヒルとジョミラーはまだ〈死の森〉の中にいた。

 そして当然のようにモンスターに襲われていた。

 鋭い棘がびっしりと生えた、横に伸びた角を有する巨大鹿がジョミラーに襲い掛かる。

 草食のはずの鹿であったがその口には沢山の牙が生えていた。


 ブシャラララ~!!


 体高が3メートルに達する巨大鹿が叫びながら全速力で少女に突進する。

 ジョミラーは悠然と巨大鹿に向き合う。

 距離が9メートルを切ったところで人差し指を前に向ける。


「〈アイアンスティンガー〉!!」


 すると地中の鉄が集まって、人差し指の延長線上に1メートルほどの長さの鉄の針を形成する。

 それが猛スピードで巨大鹿に向かう。

 が、鉄の針は角で弾かれてしまう。これにジョミラーは慌てる。


「えっ、そんな!?」


 巨大鹿は口角を上げ、ニヤリと微笑んでジョミラーを角で突こうとする。しかし、直後全身を超圧縮放水で切り刻まれてしまう。

 首、前脚、胴、後脚に分かれて、地面に転がった。

 ジョミラーは恐怖しその場でへたり込む。


「た、助かりました。怖かった~」


「慣れてきても『一発で仕留める』と考えるのは止めた方がいいよ。弓を打つ時も次の矢をすぐにつがえる訓練をするんだから」


 ジョミラーの後方にいたウォルヒルがアドバイスを送る。


「はい、その通りで……あっ、また〈昇霊(レベルアップ)〉だ!」


 ジョミラーの体が奇跡の光で輝き出す。〈昇霊(レベルアップ)〉が起きる時に付随して発生する現象である。

 光がおさまるとジョミラーはすぐに〈ステータス画面〉を開く。


「何か魔法かサブスキル、増えているかな~」


〈ステータス画面〉には以下の記載が表示されている。



名前:ジョミラー 年齢:17 レベル:19

HP:23/23   MP:68/68 攻撃力:12   生命力:11   防御力:11 魔法力:16  素早さ:14  運:13

《取得魔法》〈アイアンスティンガー〉〈アイアンウォール〉〈アイアンドール〉〈アイアンウィング〉

《スキル》【鉄火】

《サブスキル》【鉄の収集】【鉄の錬成】



 ジョミラーが顔いっぱいに喜びを浮かべる


「〈アイアンウィング〉って魔法が増えている!」


 ウォルヒルは逆に怪訝な顔をする。


「簡単に上がっていくな~。【鉄火】って成長の遅い〈ノロイ〉のはずなんだけどな~。しかも固有の魔法まで覚えるとかとんでもないよ。まあ、とはいえ僕も〈ノロイ〉の【収納】なのにすでにレベル46か……」


 ジョミラーは〈パーティ登録〉の成果で4日でレベル19に達していた。ウォルヒルでさえもレベル46となり、現実を受け入れるのに戸惑うほどだった。

 この4日でウォルヒルが倒したモンスターは450匹を超えている。〈死の森〉を進むほどにモンスターは大きくなり、素早さを増していた。

 ウォルヒルはハッと気づく。


「確かレベルの上限って60らしいけど、僕もこのままいくと上限に届いたりするのかな?」


 噂によるとレベルアップには限界があり、上限が60までだということだった。しかしどの〈神佑(スキル)〉持ちでも60になった者はほぼ確認されていない。


 上限について思いを巡らせていたウォルヒルだったが、巨大鹿の解体作業に入る。


「おっと。こいつの解体もしておこう!」


 ジョミラーが同行してくれたことで余裕が生まれたウォルヒルは、大物モンスターの魔石は持って帰ろうと方針を変えていた。

 ジョミラーが慌てて駆け寄る。


「それぐらいはわたしが! 料理から何から何までやってもらって申し訳ないですし!」


 そういうジョミラーは羨望を込めた目でウォルヒルを見つめていた。

 ジョミラーはこの地獄のような〈死の森〉の中でも非常に快適に過ごしていた。

 それほどにウォルヒルの野営や料理のスキルが高かったのだ。【収納】を使った水浴びも快適で不自由に感じることが何もなかった。


「ウォルヒル様は基礎魔法や解体など何をなさってもお上手ですね。お料理なんか特に!」


 晴れやかにほほ笑むジョミラーにウォルヒルは苦笑を浮かべる。


「〈神佑(スキル)〉がひどかったからね。しかし基礎魔法にしろ、狩りにしろ覚えておいて絶対に損はないよ」


「はい! わたしも基礎魔法を習得……」


 と話していたがジョミラーは視界の隅に入った光景に徐々に戦慄していく。


「あ……あ、あっ!? ウォルヒル様……」


「ん? どうした……」


 微かに震えるジョミラーが指さす先を確認する。

 すると前方の霧の先に巨大な木の影を見つける。それはとてつもなく大きなシルエットだった。


「!? あれは世界樹か?」


 伝承レベルであった存在を自分の目で見て魂が震えるような衝撃を味合う。

 ウォルヒルはその巨大さに息をのむ。山と言って差し支えのない質量であったからだ。

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