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完全決着!!

 SS級冒険者ペキンパーの猛攻をウォルヒルは全力でさばく。

 しかし剣撃の激しさでウォルヒルは体に次々と傷を増やしていく。

 だがウォルヒルは負傷しながらも、【収納】を使わずに凌いでいた。

 当然防戦一方だったがペキンパーがやはり昔と変わらず馬鹿だと思う。【剣璽】を十分に生かすのは闘技場の安物の剣では無理なのだ。三流な剣でもどうにかできるのかと思ったのだろうが、剣の破損を恐れるあまりウォルヒルでも何とかしのげるレベルになっていた。

 ペキンパーが「剣が壊れたら俺の負けになりそう。じゃあ手加減するか。まあ本気を出すまでもなく倒せるだろう」程度しか考えていないと想定できた。

 ウォルヒルは十分調査を終えたと判断して、反撃に移る。

 戦いながら吸い込んだ武器を【収納】から飛ばす。

 背後からメイス!


「卑怯な!!」


 地面から飛ばすように槍!


「スゲー甘いわ!」


 太もも間近から短剣!


「くっ、柄で弾く!」


 ペキンパーは猛高速で飛来する武器に瞬時に反応してみせる。第三のダンジョンのモンスターさえかわせない攻撃をしのいだのはさすがであった。

 四発目の脳天目掛けて鉄球・モーニングスターに反応しながらペキンパーはウォルヒルの50センチ手前に来ていた。


「このまま死ね!!」


 神速の一撃がウォルヒルに届く――寸前にペキンパーは3メートル下に沈んだ。

 ウォルヒルが【収納】で地面の土を回収し直径1メートル・深さ3メートルの縦穴を開けたのだ。

 すかさず回収した土も穴に吐き出す。

 ペキンパーは脳天に鉄球を受けながら完全に生き埋めとなったのだ。

 今度は観客も瞬時に反応する。予想外の決着に爆発したように盛り上がった。


「すげー! SS級冒険者を倒しやがった! 超せこい技で!」


「物凄いカッコ悪いが【収納】らしい戦闘スタイルだぜ!」


「センスと頭がいいな! 落とし穴とか馬鹿っぽいけど!」


 ウォルヒルは微妙な賛辞を聴きながら戸惑う。また埋めたのは失敗であったか、とも思う。

 誰も勝敗の宣誓が行えないのだ。思えば判定員と試験官両方をペキンパーがやるのに無理があった。

 直後、穴から土砂が爆発したように噴出する。

 土を爆ぜながらペキンパーが跳躍して姿を見せる。


「俺に恥をかかせやがって! 〈雷霆万鈞〉で死ね!!」


 伝説の魔法剣〈ゴッドファーザー〉を手に、全力の【剣璽】の技をウォルヒルに見舞う。〈ゴッドファーザー〉は魔法アイテムのマジックバックから取り出したのだ。

 ウォルヒルは穴の中に展開した【収納】でずっとペキンパーを観察していたので、奇襲に驚きはない。

 ウォルヒルは一瞬だが【万能収納+α・β】の真価を見せることを決める。【万能収納】は何度かの第三のダンジョン探索を経て【万能収納+α・β】に進化していたのだ。

 魔法剣〈ゴッドファーザー〉を【万能収納+α・β】が瞬時に苦も無く収納する。〈ゴッドファーザー〉は【剣璽】とリンクしていたが、その力を凌駕するなど簡単であった。


「な、なんだ? 何が起きた。スゲー意味わからん!?」


 愛用の剣がいきなり手から消失し、さすがのペキンパーも刹那に動揺する。

 ウォルヒルは優和に微笑みながらペキンパーに凄みのある声を出す。


「あなたの剣を僕が預かっています。【収納】に入っています」


「な、なんだとう? がっちり握っていたのにそんなはずはねえ~!?」


「事実です。何ならすぐに分解して粉々にしてもいいんですよ?」


「そんなことしやがったら絶対スゲーぶっ殺してやる!!」


「では剣を分解します」


「待て、待ってくれ!! スゲー頼む!!」


「返してほしかったら敗北宣言をしてください! 勝敗の決着を! さあ、早く」


 それにペキンパーは殺気をはらんだ目で睨みつけてくる。

 が相手は本気だと察すると、ヘナヘナとへたり込む。

 ウォルヒルの瞳は怒りと殺気で燃えていたのだ。昔の仲間を蔑む心と糾弾する気持ちでこれ以上になく高まっていた。

 そして心のこもってない声でペキンパーは宣誓する。


「しょ、勝者……A級冒険者……」


 ウオォォォゥゥ~~!!!


 観客たちも爆発したように盛り上がる。目の前でS級冒険者誕生を目撃したことに大興奮を隠せない。

 剣と剣との激しく高度なぶつかり合いも見ごたえたっぷりで、血の気が多い冒険者を大満足させるに至ったのだ。

 S級冒険者のウォルヒルはため息をつく。

 最後まで自分の名前を知ろうとしない旧友は、「まったく昔と変わらない」とウォルヒルは思う。

 振り返るとジョミラーが何度も飛び跳ねて喜んでいるのが目に入った。

投稿ペースを誤ったので31日まで複数回投稿します。

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