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A級昇進試験

 感心しきりだったジョミラーだったが不意に不敵な笑みを浮かべる。


「それで次は予定通り――この後に昇進試験申し込みをするんですね?」


「ああ、話した予定に変更はない」


 ウォルヒルはそうジョミラーに返答すると再びカウンターに近づく。


「すまないが昇進試験を受けたい。わたしとジョー2人でA級を受けたいんだ。料金は確かB級とC級の昇進試験料金込みで284金貨だったよな?」


 そういってウォルヒルは収納空間からきっちり金貨284枚を並べて置いた。

 これに忙しくしていた職員が一斉に手を止め、驚く。


「えっ~~~!!!」


 ウォルヒルに対応している女子職員が震える声でいう。


「えっと……わかっています? A級昇進試験はSランクの冒険者と一対一で戦って勝利することが条件だということを? 失敗したら申し込み料の金貨も全部失うということも?」


「もちろんだ。審査を引き受けてくれるSランク冒険者が現れるまで試験自体ができないこともな」


 ウォルヒルは腕を示したいわけではない。ある条件を満たすためにA級のランクに達していたかったのである。


「しょ、少々お待ちください!!」


 それからまた職員たちがザワザワと相談しだし、何人かがギルドの外に出ていった。この騒ぎにまた暇な冒険者が何人か反応する。

 ウォルヒルを襲ったS級パーティの《黄金街》は今街を離れていると、アーシアに確かめてもらっているのでいないのはわかっている。まあ会ったとしても、若返ったウォルヒルを見ても反応しないだろうが――。

 ジョミラーが不安げに顔をひねる。


「引き受けるSランク冒険者はいるんでしょうか? しかも2人も――」

  

「アーシア〈紅の剣光〉らの話では一人Sランク冒険者が常駐しているって話だから大丈夫じゃないかな?」


「でも1人ですよね。それにその人が体調が悪かったら――」


 ジョミラーが不安に思っていると2階に通じる階段から大声が聞こえてくる。


「A級昇進試験に挑む阿呆が現れただと? 面白い! 真面目な話、そのバカ面を拝んでやろうではないか!」


 そういって現れたのは蒼い革製の魔法使いの装束を着た少女であった。美少女であるが眼の橋が吊り上がり、どこか意地悪そうに映る外見をしている。また首には髑髏型の水晶を下げている点も印象的だ。

 クラウンブレイド――頭頂部を冠のように編み込んだ栗色の髪形も目を引く。

 自信満々で現れた人物をジョミラーもウォルヒルも知っている。ロサンゼス本部のギルドマスターのジョリエット・ランディスである。

 外見も性格もそのプロフィールもアーシアたちから聞いていた。稀代の魔法の天才で16歳でS級になったということであった。

 何よりジョリエットの名前を轟かせているのは公爵の娘であることである。ゆくゆくは王女になる可能性のある少女なのだ。

 職員も膝を追ってジョリエットに最上級の敬意を見せる。


「これはこれはジョリエット様、わざわざお越しいただいて光栄にございます! そこにいる者達が登録した日にAランクを受けたいと申しまして、手配している最中でございます」


 職員に紹介されたウォルヒルらもすでに膝を負っていた。


「紹介いただいたウォルと申します。是非ともA級に昇格させていただきたいと思っています!」


「ほうほう、おまえがそうか。なんだか顔が父や国王に似ている気がするが、真面目な話、おまえも貴族か?」


「いいえ。ただの平民、僻地エルビスで生まれた親も知らぬ者です!」


 そうウォルヒルは身分を偽ったが、ジョリエットを鋭いと思う。

 ジョリエットの父のジョデビィ・ランディス公爵はウォルヒルの従兄なのだ。つまりジョリエットはウォルヒルにとって従姪という関係になる。

 しかもジョリエットの母のマクティアナはウォルヒルの子供時代の許嫁であったのだ。

 ジョリエットは面白がるようにウォルヒルを見る。


「エルビスとは今三つ目のダンジョンができたと騒ぎになっているところか。かなりモンスターが強いと聞くが、おまえを試してみたくなってくるな。真面目な話、A級昇進試験相手をわたしが務めても構わないか?」


 ジョリエットの言葉にギルド全体がざわつく。ジョリエットの実力が折り紙付きであるのは誰もがわかっているからだ。

 ウォルヒルは再度頭を下げる。


「わたしに異存はありません。無理なお願いをしていただいている自覚がありますので――」


「そうかそうか。ならば真面目な話、おまえの相手はわたしが務めよう!」


「ありがとうございます。ですがここにいるジョーもA級昇進試験を望んています。そちらもジョリエット様が務めますか?」


 ウォルヒルの言葉にジョリエットが眉を引締める。


「ふうむ。真面目な話をすると厳選な審査をするとなると立て続けは少々後の言い訳が面倒になるのは確かであるな。――ならばしかたがない、兄を呼ぶか!」


 そういうとジュリエットは髑髏水晶を握り、力を込める。髑髏水晶はとたんに紫に輝き出す。

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