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光る地底湖

 ウォルヒルは家族の急速なレベルアップを改めて喜んだ。よく見ると弟が微かに痙攣していることに気づく。


「どうしたライクー」


「……兄さん、僕のステータスも観てくれないか」


「ああ、わかったよ」



名前:ライクー・ストリィト

年齢:17  レベル:9 

HP:19/19 MP:42/42 攻撃力:11(+1) 生命力:9(+1) 防御力:11(+1) 魔法力:14(+1)  素早さ:14(+1)  運:15(+1)《取得魔法》なし《特性スキル》【竜使役】《サブスキル》【竜服従】【竜同化】


 ライクーのステータスを見てウォルヒルも目をむく。


「【竜同化】が発生したのか?」


「そうみたいだね」


「どんなサブスキルかわかるか?」


「はっきりとはわからないけど、恐らくは竜のスキルを自分でも使えるんじゃないかな? 【竜服従】で使役した竜の力を借りることみたい。それってできたら、滅茶苦茶凄いんじゃない?」


「確かに。そうなれば相当に強力だな」


 そういったウォルヒルはジョミラーと目を合わせた。

 ヴォルフガングを倒した後にあった卵を2人で思い出したのだ。

 折を見て卵をライクーに渡そうと考えていた。

 とはいえヴォルフガングの恐怖を忘れてはいない。ヴォルフガングを安易に復活させることは絶対に避けなくてはならないのだ。

 慎重に考えなくてはいけないと思いつつ、ウォルヒルは家族の成長を感じて欲が出てくる。もっと〈神佑(スキル)〉を上げればとんでもないことが起きる予感がしたのだ。

 ジョミラーがふと気づいたようにウォルヒルに尋ねる。


「ウォルヒル様、先ほど収納した人たちはまだ蘇生しませんか?」


 先ほどオーク達に殺された冒険者たちのことを言っているのだと察する。縫いぐるみ風衣装の少女、巨漢の弓士、両手持ち剣の女性戦士、そして先ほどひき肉のような状態になっていた男性を【万能収納+α】に入れて、聖霊水につけていた。


「聖霊水につけたら肉体の破損は全員治ったよ。心臓も動き出して呼吸もしている。ただまだ意識は戻らないようだよ」


「そうですか。大精霊様の言葉は本当だったんですね!」


 というとジョミラーは満足したように頷く。

 ウォルヒルはこのままもう一つ階層を下がりたいというと、家族からは反対を受けなかった。みんなももっと〈神佑(スキル)〉を上げてみたいという気持ちになったようである。

 ふとウォルヒルはオーク軍を倒したときにドロップした、髪飾り・カチューシャを取り出す。

 【万能収納+α】に入れて解析すると、防御力が上がる代物であることがわかった。


「これ、ジョミラーが付けないか?」


「ええ? いいんですか! ありがとうございます!! 嬉しいです。すごく大切にします!!」


 とジョミラーは青紫の瞳を見開いて大きく驚いてみせる。カチューシャを受け取ると早速、自分の髪につけた。


 喜んでくれて何よりだ――そう思ったウォルヒルであったが、カチューシャの細工の一部が豚の尻尾そっくりの螺旋を描いていることに気づいた。

 豚を嫌う女性がいるから、ウォルヒルはジョミラーが気付いて怒るのではないかと心配になった。


 いやでもジョミラーは別に太っていないし、豚と重なることは何もないから大丈夫だよな……。


 と思い、正直に言ってしまおうかとも考えたがやはり思いとどまる。ジョミラーが自分で気付くまでは云わないことにする。

 早く別の魔法アイテムのカチューシャを見つけ出し、さりげなく交換しようとも考えたのだった。







 一階層を18分かけて進むと階段があり、そこを下る。すると今度は黒い岩に代わってコバルトブルーの岩が四方を形成する空洞が広がっていた。

 先方から届く光が空洞を幻想的に映す。


「は~っ、二階層目はなんだかとても綺麗ですね」


「本当ね~。何だかロマンチックね~」


 ジョミラーの言葉に同意した母カールライも未知の光景にうっとりとなる。

 が、ウォルヒルは違った。


「何か気になることがあったか?」


「ああ、父さん。この光源が気になってね。何か危険な雰囲気がするんだ」


 ウォルヒルは緊張した顔で父に答えた。

 7分も進むとやがて大きな水たまり――湖規模の水坑があった。

 蒼いきらめきに満ちた湖は単純に美しい。湖の液体が輝いていたのだ。

 ジョミラーが湖に近づこうとする。その手をウォルヒルが握り、止める。


「えっ? なんですか」


 途端に湖から飛んでくるものがあった。

 水礫である。輝く水の筋が数十、数百の一行に伸びたのだ。

 だが全てウォルヒルの2メートル手前で消失する。

 【万能収納+α】を展開して水の侵攻を防いだのだ。

 その水の勢いは止まらず、ついには小川のような流れで迫ってきた。


「い、いったいこれは? 何で湖が襲ってくるんだ?」


 トニスコ達はこの宙を飛ぶ水流に唖然とするしかなかった。

 そんな状況が数分経過したところで、ウォルヒルが冷静に語る。


「僕らを今襲っているのはスライムのようだね」


「ええっ? スライムなんですか? この大量の液体が?」


 驚いたジョミラーがよく観察すると、確かに水が生きているようにうねっているのがわかった。

 ライクーは顔を青ざめさせて後ろに一歩下がる。


「じゃ、じゃあこの湖みたいのが全部スライムってこと? そんな馬鹿な!?」


 光る水流は勢いを増し、ついにはウォルヒル達の背後にまで回り込むように展開する。

 後退しようにもそれができなくなったとカールライは思った。

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