表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/42

ストリィト一家の決意

 ウォルヒルと大聖霊のやり取りを聞き、父トニスコ、母カールライ、弟ライクーは感動し、涙を流した。

 それほどまでにウォルヒルが誇らしかったのだ。


「大聖霊様によると時間の猶予がないので、何としても第三のダンジョンを攻略しなくてはならない!」


 ウォルヒルの言葉に頷きながらジョミラーが言葉を繋ぐ。


「ですのでまずはここにいる5人で力を合わせないといけないのです! 最低でも第三のダンジョンの調査が行える程度の実力を身に着けるのです」


 とても高いハードルに思い、戸惑う顔をする3人にウォルヒルはいう。


「僕とジョミラーは魔王軍の邪竜ヴォルフガングに偶然勝つことができた! だけどそれは本当に偶然なんだ。ヴォルフガング一匹で国を一夜で滅ぼす力があった。あんなモンスターが同時に3匹襲ってきたら人間は全て確実に滅ぶ。だから絶対に魔王軍を野放しにできない! どこへ逃げても魔王軍がいれば人間には未来がないのだから。なので今すぐに僕らが立ち上がる必要があるんだよ」

 

 息子の言葉に父親が困った顔で意見する。


「なるほど――事態はそこまで切迫しているのか。人間世界の存亡が掛かっているとなると逃げるわけにはいかないな。しかし俺の〈神佑(スキル)〉の【先読み】じゃどこまでできるか……」


 母親も同調を示す。


「それはわたしも役に立ちたいけど……わたしの〈神佑(スキル)〉は【植物栽培】なのよ? 戦うなんてまず不可能だわ」


 弟はお手上げといった仕草をして愚痴る。


「命を救われたから僕は大聖霊様に人生を捧げる覚悟はもうできているよ。でも僕の〈神佑(スキル)〉なんか【竜使役化】だよ? 竜なんか見たことないよ。竜がなきゃどうしようもないと思うよ!」


 そういうと弟ライクーは暗い表情になっていく。兄はまた自分を「役立たず」だと責めているのだろうと察する。

 家族の懸念はウォルヒルも当然わかっている。理解した上で何とかなるだろうとも考えていた。


 うちは家族全員、〈神佑(スキル)〉の成長が遅い《ノロイ》だ。父の【先読み】は1秒先の未来が読めるので戦闘向きだが、母の【植物栽培】は違う。それでも【植物栽培】は後方支援に必ず役に立ってくれるだろう。ライクーの【竜使役化】はあれを活用できれば、劇的に事態が変わってくるだろう。


 ウォルヒルは既にこのことで何度も話したジョミラーと視線を交わすと、明るい声を出す。


「大丈夫! 最大まで〈昇霊(レベルアップ)〉すればきっと役に立つよ! 僕だってジョミラーだって本人でさえゴミだと思っていた〈神佑(スキル)〉で邪竜を退けたんだから。〈昇霊(レベルアップ)〉ですべてが変わるよ! 僕を信じてほしい!」


 長男の真っすぐな視線を受けて家族は柔らかく微笑む。


「ああ、もちろん信じよう。おまえに従うよ。おまえはいつも間違ったことをしてこなかったからな。この年でレベルアップ修行は不安だが若返ったんだから文句も言えない」


「【植物栽培】で植物のゴーレムを沢山繁殖させてみせるわ! 母さん実は戦うのは嫌いじゃないの」


「兄さん、僕も賛成するよ。竜に出会うその日のために己を研鑽し、〈昇霊(レベルアップ)〉を重ねていくよ」


 3人の言葉を聞いて思わずウォルヒルとジョミラーは手を握り合う。

 

「ありがとう。家族で窮地を乗り越えよう!」


 長い戦いになり、仲間をどんどん増やしていかなくてはいけなくなるだろう。だがまずは本当に信頼できる者たちと確かな強い力を手にすることが正しい手段だと思えた。

 ストリィト一家は一致団結し、魔王が誕生しそうなこの地ホリウド王国パラマウン地方エルビスで戦う道を選んだのだ。

 勝ち抜く勝算などなかったがウォルヒルには家族を〈昇霊(レベルアップ)〉させる計画がすでにあった。

 能力の検証を進めた結果、【万能収納】があれば大抵な不可能も乗り越えられると予想できたのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ