六 液体薬の完成……?
今、ぼくはティリスの師匠さんの魔女工房に来ていた。
だけど、ティリスの師匠さんは居ないみたい……。
「では、今から作っていきますからね」
ティリスの言葉に、ぼくは頷く。
「うん頼むよ」
「……」白猫(姫様)は何も言わず静かだった。
「姫様? もう対話の魔法切れたのかな?」
ぼくは話し掛ける。
「ううん、そうじゃないよ。只、本当に治るのって思って……」
白猫(姫様)の声が、室内に響く。
「姫様……そうだよね、不安になるよね……」
ぼくがそう答える後は、誰も何も言う事は無かった。
暫くして、ティリスがこほんっと咳払いをする。
「姫様、今は希望を持ちましょう? でも……あまり期待しないで下さいね?」
最後にティリスは苦笑を浮かべた。
「さてまずは……セレア? そこの青色の液体の瓶を取って頂けますか?」
「このセレアさんに任せなさい! なんせ優秀なんだから……」
セレアは指示通りに青色の液体の瓶を取る。ティリスの所へ持ってこようとした。
だが、何故か転んでしまった……
「あ、イタッ!」
そのまま、瓶は宙を舞う。
落下するかと思いきや、ティリスがキャッチしたのだった。
「セレア大丈夫?! それより……ティリス……良く受け取れたね?」
ぼくの質問に、ティリスは得意気に答える。
「ええ、予想してましたから」
「次は黒い液体の瓶を……ノアさんお願いしますね」
「えっと……これだね?」
ぼくは瓶を片手に持つ。
「それ、気を付けて下さいね。いわゆる毒系の液体入ってるので」
ティリスは笑顔で恐い事を言う。
ぼくは即座に、両手で持つ。
ティリスに渡しつつ、「でもティリス? なんで、毒の薬品を?」と質問してみた。
「呪いを治すなら……似たような毒の薬品も場合によって良薬になるんじゃないかと」
「そうなんだ……」
大丈夫だよね?
「大丈夫ですよ。ちゃんとした薬を完成させますので」
ティリスは微笑む。
それから……。
かなりの時間が経って変身魔法を治す? 薬が出来上がる。
「出来ましたよ……あとは、姫様に飲んでもらうだけなのですが」
「ティリス、姫様は猫だから小皿か何かないかな?」
「はい。今、用意しますね」
ティリスはパタパタと歩いていき取りに行く。すぐに戻ってくると。
手際良く小皿に、出来た液体薬をよそう。と、それを白猫(姫様)の前の床に置いた。
姫様……エリーが元に戻りますように……。
ぼくは祈りつつ、白猫(姫様)が液体を舐める瞬間を眺めていた。
そして液体薬を舐めたのだった。