五 新たな期待
ユヴェが居ないと聞いた、ぼくの反応を見て、「そういえば……ノアさんはまだ知らなかったですよね?」とティリスは言う。
ティリスは手を頬に添えて、「ユヴェは昔から旅の放浪癖があるんです」と困った様子。
「そうなんだ……そういえばユヴェは二人と幼なじみなんだよね?」
ぼくの言葉に、白猫(姫様)とじゃれるセレアが答える。
「そだよ。昔は良く旅に付いて行ったこともあるし」
ティリスも続けるように、「最近は放浪癖が落ち着いていたのですが……復活したみたいですね……」とため息をつく。
「じゃあどうしようかな? 他に、頼れる人いるかな……」
ぼくが思案顔で呟いていると、ティリスが「ノアさん、困り事ですか? 私で良ければ相談に乗りますよ」と優しくしてくれた。
「この優秀なセレアさんもいるし!」
セレアは自信あり気だ。
「うん、実は……ここじゃなんだから向こうの方へ……」
ぼくは路地裏の方を視線で示した。
移動すると、ぼくは話す。
「実はね、姫様が猫になってしまったんだ」
「「はっ?」」と二人は唖然とした表情。
「つまり、この白猫は姫様なんだ」
ぼくの話に二人は信じられなさそうに返してくる。
「ノア……な訳無いじゃ〜ん。この白猫が姫様だなんて……ね?」とセレアは信じてくれない。
「ノアさん……私もですが姫様が白猫になっているだなんて……とても」ティリスも同様の反応だった。
「本当なんだよ。師匠が変身魔法を暴発させてしまって、それでなんだ。だったら、セレア?」
ぼくの言葉にセレアは「な、何よ?」と問い返す。
「確か……セレアは、動物と会話する魔法も使えたよね? 試してみてよ」
ぼくがそう言うと、セレアは白猫(姫様)に手をかざす。
「分かったわ……。彼の者と対話の繋がりを……」と唱えると……。
白猫(姫様)から「ノアの言ってることは本当なのよ! 私はエミリー、二人共分かるかな?」と声が聞こえた。
それから……ぼくと白猫(姫様)は経緯を再び説明していった。
「……それでこうなっちゃったの……」
白猫(姫様)が締め括ると、二人は流石に納得してくれた。
「そうだったんですね。それにしても姫様がこんなに可愛い白猫になるなんて……」
ティリスは白猫(姫様)の頭を撫で撫でする。
セレアは「まさかね、そんなことになってるなんて思わないじゃない。にしてもティリス、カワイイなんて……このセレアさんは思わないわね」と反応を見せた。
「でもセレア、さっきはあんなに姫様とじゃれてたのに……?」
ぼくが指摘する。と、ティリスは「まあまあ……所で、ノアさん?」なだめた後でぼくに視線を寄越した。
「どうしたの、ティリス?」
ぼくはそう促す。
すると「解呪は専門ではないのですが……もしかしたら、もしかしたらですよ? わたしの薬学の知識と薬作りが役に立つかもなのですが」と提案してくれた。
「そうだ、ティリスは薬作りが得意だから……もしかしたら変身魔法の呪いを治す薬が作れるかもしれない……」
ぼくは驚きながらも期待した。
「ティリス、お願い出来るかな!?」
ぼくは手を握って、食い気味にお願いしたのだった。