一 魔女と研究室
ぼくは今、師匠の所へ向かっている。
師匠は宮廷お抱えの魔女で凄い人……中でも変身魔法が得意で、ぼくもいつかそうなれたらって思う。
師匠のいる所は、広大な宮廷の中にある研究室。宮廷の中を歩いてると顔馴染みの女子と会う。
この国の姫様だ。
「あっ、ノア。ノアも宮廷魔女様のとこに用事?」
可愛らしい声で、ぼくに問い掛ける。ちなみにノアは、ぼくの愛称だ。
「う、うん。と言う事は姫様も?」
「うん、そうだよー。それとノア、二人の時は、姫様禁止!」
「そうだったね。エリー」
目の前のエリーこと姫様は、名を呼ぶと機嫌を直してくれた。
「エリーはもしかして師匠探しの件で用事かな?」
ぼくは姫様に話し掛ける。
「うん、そう。中々、魔女の師匠になってくれる人が見つからなくて……。お父様が反対しているからなんだけれどね」
「やっぱり、父親として心配なのかな? 確か母親の方は魔女なんだよね? 相談はしたんだよね?」
ぼくが問い掛けると、姫様は答える。
「そうなんだけど……『自分の道は自身でどうにかしなさい』だって……」
「……本当に見つかるといいね、魔女の師匠……」
ぼくとしては助けたいけれど、ぼくも魔女見習いだから……
「ノア、取り敢えず行こ! ノアの師匠ならもしかして紹介してくれたり」
ぼく達は歩き出し……話をしながらだったのであっという間に着いてしまった感じだった。
ぼくは扉をノックする。
反応がないので、いつもの様に没頭してるのかな?
「師匠、ノアです。入りますね!」
そうして、ぼくを先頭に研究室に入る。
「師匠、今日は姫様が用事で……」
ぼくはそこで言葉に詰まる。
見れば師匠は呪文を唱えている所だった。床には魔法陣……。
師匠はそこでハッと、ぼくと姫様に気付く。
「えっ、ノアちゃんと王女様!? しまった! 呪文!」
すると、床の魔法陣は輝きを増して、魔法が発動したのだった。
その魔法はぼくに向かって来る。
でも姫様が後ろに……避けれない!
魔法が命中する直前で声が聞こえた。
「危ない、ノア!!」
姫様がぼくの盾になって前に出る。そうして魔法を受けてしまったのだった……。